マイクロソフトが「自社製携帯型Xbox」を事実上“開発中止”したとの報道。ハードウェアに囚われない、ソフトウェア戦略に注力方針か
マイクロソフトが開発中と報じられていた自社製の携帯型ゲーム機が開発保留、事実上の開発中止となった。The Vergeなどが報じている。
マイクロソフトのゲーム部門CEOでXbox事業を率いているPhil Spencer氏は、2024年11月に海外メディアBloombergのインタビューにて、社内で携帯型ゲーム機の開発を検討していると説明していた(関連記事)。一方で、マイクロソフトではWindows PC上でXbox向けのゲームを遊べるようにする、エミュレーションによるXboxプラットフォームの拡張も進めていたほか、Asusなどのメーカーとの協働によるデバイス開発もおこなっていた。今回の自社製携帯型ゲーム機の開発中止は、マイクロソフトの戦略の転換を示唆していると言えそうだ。
マイクロソフトが初代Xboxを発売したのは2001年のこと。以後マイクロソフトはXboxシリーズや同コンソール関連サービスを継続して提供してきた。たとえば2003年に開始したXbox Network(旧Xbox Live)でいち早くオンラインマルチプレイを提供したほか、『スーパードンキーコング』『ゴールデンアイ007』などで知られるレア社や、『Marathon』『Halo』シリーズなどで知られるBungie社といったスタジオを続々買収。IP強化なども通じて独自の地位を確立した。そして2017年には月額サブスクリプションサービス「Xbox Game Pass」を投入したことで急速にユーザーを獲得。現行最新機種となるXbox Series X|Sを2020年11月に発売し、今後の戦略が注目されていた。
Phil氏は2024年3月におこなわれた海外メディアPolygonの取材に際して、ゲームコンソール市場が停滞しているとの見方を示していた(関連記事)。そんな中、携帯ゲーム機としても扱えるNintendo Switchの躍進や、Steam DeckなどのPCゲームを遊べる携帯機の登場もあり、マイクロソフト社内にて携帯型ゲーム機の開発が検討されていたものと思われる。
そこへThe Verge誌が関係者証言として、マイクロソフトの自社製携帯型ゲーム機の開発中止を伝えた。この報道は、同社内のリソースをハードウェアではなく、ソフトウェアに注ぐという方針転換を示していると言えそうだ。ただWindowsの携帯機開発そのものは他社との協働で進行中であり、たとえばAsusとの提携機器である「ROG Xbox Ally」シリーズは2025年中に発売される見込みとなっている(関連記事)。ハードウェア面を他社との協働で担う一方、マイクロソフト自身はソフトウェアに注力し、PC・Xbox・携帯機いずれでも同じゲームをプレイできる仕組み「Xbox Play Anywhere」や、クラウドゲームサービス「Xbox Cloud Gaming」、将来的なPC上でのエミュレーションを通じて、プラットフォームとしてのシームレスなXbox体験の構築を目指しているのだろう。
ただし、事実上の開発中止と報じられてはいるものの、正式には保留(sidelined)だとされている。今後マイクロソフトが将来的に自社製の携帯型ゲーム機をふたたび開発する可能性が完全に消えたわけではなさそうだが、しばらくはXboxの携帯型ゲーム機は他社との協働開発で提供されることになる。
「ROG Xbox Ally」シリーズや、Xbox Seriesの後継機など、今後もXboxの名を冠したハードウェアは登場することが見込まれている。しかし今回のマイクロソフトの動きからは、Xboxは特定のハードウェアに縛られるものではなく、さまざまなデバイス上で動作するプラットフォームであるという位置づけを明確にしたと言えるだろう。マイクロソフトが思い描く、ハードウェアの垣根を超えたXbox体験が、今後どのような展開を見せていくか注目したい。