フジHD日枝氏の辞任、米ファンドが要求-取締役会を絶対的支配

ダルトン・インベストメンツ系のライジング・サン・マネジメント(RSM)が、フジ・メディア・ホールディングス取締役相談役を務める日枝久氏の辞任を3日付の書簡で要求した。

  日枝氏がフジHDとフジテレビジョンの取締役会を「絶対的に支配している」と主張。また、フジHDの取締役会は独立社外取締役を過半数とするよう要求した。

  フジHDやその子会社のフジテレビを巡っては、人権侵害が疑われる性的トラブルへ対応を含め企業統治(コーポレート・ガバナンス)が不十分だったのではないかという批判が続出。

  フジテレビの取締役相談役も兼ねる日枝氏の説明責任を問う声も上がっていた。日経新聞によると、フジテレビ労働組合も1月27日の会見に日枝氏の出席を求めていたという。

  ただフジテレビが開いた2度の会見に日枝氏は姿を見せなかった。同社前会長の嘉納修治氏は1月27日の会見で、今回の事案は「業務の範囲」であり、日枝氏は業務執行を担っていないためだと説明。また前社長の港浩一氏は同事案について日枝氏に相談していないと述べた。

  日枝氏はフジサンケイグループの代表も務める。フジメディアHDの広報担当者によると、フジサンケイGは78社、4つの法人、3つの美術館で構成する任意団体で、フジHDへの出資有無については開示していないとした。

  フジHD株は4日の取引で反落し、一時前日比5.2%安の2375.5円を付けた。

  自身の進退について日枝氏は「人事に関しては会社が決めることで、ここで言う話ではない」と取材に答えたと、4日昼に共同通信が報じた。

  またフジHDの社外取締役で構成する経営刷新小委員会が、経営体制の見直しや人事の透明性確保に向けた提言をきょうにもとりまとめるとNHKが4日昼に報じた。同委は会社側に来週にも臨時取締役会を開き、提言を踏まえて議論するよう求めているという。

現場にはノータッチ

  日枝氏にこれほど注目が集まるのは、40年以上にわたり役員級のポジションに就いているためだ。フジHDの株主総参考資料によると、同氏は1961年にフジテレビ(現フジHD)に入社し、編成局長などを経て、88年に社長に就任した。2001年から17年まで会長を務めた。

  日枝氏について、フジHDの金光修社長は「現場には直接タッチしていない立場」とした上で、影響力は大きく、「企業風土の礎を作っていることは間違いない」と述べた。

  会社役員育成機構代表理事のニコラス・ベネシュ氏は27日の会見後に、企業文化に重要な影響を与える今回の事案について、なぜ取締役である日枝氏に相談しなかったのかと指摘。取締役会が機能不全に陥っていることを示す実例だと述べた。

  週刊文春が12月、元タレントの中居正広氏と女性との性的トラブルとフジテレビの関与を報道し、中居氏はトラブルは事実と認めていた。フジテレビは、一切関与していないとコメントしていた。

  その後1月28日に、「週刊文春」編集部は、昨年12月26日発売号に掲載した元タレントの中居正広氏と女性の性的トラブルに関する記事について訂正したとウェブサイトでコメントを発表していた。

  フジテレビの対応を巡って、CM放映を見合わせる動きが企業の間で広がっているほか、物言う株主(アクティビスト)から調査や改善策の提示を求める動きも現れていた。

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