創造性を働かせるには混乱が重要なためシンプルに整理しようとこだわってはいけない

2025年05月26日 07時00分 メモ

創造性を働かせるためには、頭の中を整理して目標への道筋を明確にすることが重要です。かといって、シンプルさを重視してすぐに整理するクセをつけてしまうと、かえって創造性が発揮できなくなります。イノベーションと創造性に関する専門家のジェフ・デグラフ氏が、「創造性はシンプルさから始まるわけではなく、シンプルさで終わる」というメソッドについて解説しています。

Creativity Starts in the Mess | Psychology Today

https://www.psychologytoday.com/us/blog/innovation-you/202504/creativity-starts-in-the-mess

シンプルさは認知負荷を軽減するため、精神的に心地良い状態になります。1988年に心理学者のジョン・スウェラー氏が提唱した「認知負荷理論」では、「人間の作業記憶は一度に少量の情報しか保持できないため、学習効果を最大化するためには作業記憶に過負荷をかけないようにすべきである」ということが論じられました。

また、クリエイティブなアイデアは忙しくしても生まれることはなく、むしろぼんやりと思考している時やリラックスしている時に生まれることを示す研究結果がいくつも存在しています。たとえば、カリフォルニア大学サンタバーバラ校心理学部のジョナサン・スクーラー氏は「あるタスクに集中している時よりも、集中せずぼんやりと『心が彷徨っているとき』の方がクリエイティブな力が発揮される傾向がある」という研究結果を示しています。

「優れたアイデアは集中とぼんやりの狭間で生まれる」、クリエイティブな思考をブーストする3つの方法とは？ - GIGAZINE

By Faith Goble 思考や記憶に負荷をかけすぎず、頭をシンプルにすることでクリエイティブな思考を発揮することができます。しかし、デグラフ氏によると、シンプル化を意識しすぎてあまりに早い段階で過剰に単純化してしまうと、かえって創造性が台無しになってしまう可能性があるとのこと。 その理由のひとつとして、創造性が発揮されるプロセスが挙げられます。創造性の専門家である心理学者のキース・ソーヤー氏は、「創造的な洞察は通常、はっきりとした状態ではなく、『ジグザグ思考』と呼ばれる構造化された混乱から生まれる」と強調しています。これは、思考の誤ったスタート、遠回り、予期せぬ方向転換に満ちた非線形のプロセスが、整然とした効率的な道筋よりも、創造性に結びつきやすいという考え方です。 創造性を発揮するためのアイデアとして、削減や簡素化を推奨することは多くありますが、デグラフ氏によるとこれは創造性のプロセスの終盤には役立つものの、初期段階では望ましくないそうです。可能性を十分に探究し、複雑な世界の中で理解し生まれてくるものがある中で、迅速な解決を求めることで、本来解き放とうとしている創造性そのものを制限してしまうことがあります。

デグラフ氏は、シンプルに整理してしまうこと以外で創造的な複雑さを乗り越えるアイデアを3つ挙げています。

1：曖昧さを許容する

異なる視点や概念がバラバラに切り替わっていくのは、結論を出す際には整理が必要ですが、創造性のプロセスにおいては答えが明確ではない状態こそが重要です。問題を急いで解決しようとせず、じっくりと向き合ってより良い質問をしていくことで、シンプルに考えるだけでは気付けない思考が生まれます。

2：量産する

デグラフ氏によると、創造的な仕事においては、量が質より優先するとのこと。完成品を作り上げることにこだわらず、草稿をいくつも考えて量産の中からブレイクスルーを見つけることができます。

3：編集は後回しにする

最初からシンプルさを求めずに、山積みされたアイデアや思考から、引き算を通してシンプルさが浮かび上がってくるプロセスが理想的です。

デグラフ氏は「現代社会は騒々しく、私たちは複雑さに圧倒されています。しかし、創造性とは複雑さから逃げることではなく、複雑さと向き合うことを学ぶことです。複雑さを乗り越えて形作ることで初めて、有用で、エレガントで、新しい何かが生まれるのです。私たちは複雑さから逃げようとすべきではなく、複雑さを信頼することを学ぶべきです。複雑さの向こう側には、何かシンプルで洗練されたもの、そして完全にあなただけのものがあるかもしれないからです」と語っています。