愛子さまの「小粒パール」に見る気品と若々しさ、春を感じる若草色のドレス…皇室に学ぶ令和の「正装」
ファッションが自由で多様になった現代でも、プロトコル(国際儀礼)やドレスコードは失われたわけではない。令和の「正装」を紹介しながら、今あらためてフォーマルな装いの伝統と意味を考える。
新年の装い
天皇、皇后両陛下が国民から新しい年の祝賀を受ける「新年一般参賀」。2025年も1月2日、両陛下と皇族方は皇居・宮殿のベランダに立ち、東庭に集まった人々へ手を振られた。両陛下の長女愛子さまは淡い若草色のドレス姿。素材は冬向けに暖かめでも色合いは春を感じさせるこの時期の服を 梅春物(うめはるもの) と呼ぶ。襟元や袖口に施されたビーズが陽光を受けてキラキラと輝いていた。
小粒なパールのネックレスとイヤリングがアクセントに。淡い若草色のドレスで新年一般参賀に臨まれた愛子さま(2日、皇居で)=若杉和希撮影「草花を抽象化したような模様が生地に凹凸で織り出され、あたたかみがありつつ上品な印象を生み出しています。明るい若草色から新年を 寿(ことほ) ぐお気持ちが伝わってくるかのようです」と、服飾文化の研究者でフェリス女学院大非常勤講師の青木淳子さんは話す。
青木淳子さん生地に凹凸をつけて模様を織り出す「ふくれ織り」は、色柄のくっきりした模様と比べて品が良い。襟元に見られる波形は、スカラップ(ほたて貝)に似ていることから「スカラップド・ネックライン」と呼ばれる。波形はドレスの袖口にも見られ、さりげない華やかさを添えている。
明るい若草色は、2022年3月に行われた初めての記者会見で着用されたドレスも近い色合いだった。「お肌になじみ、お好みの色なのかもしれませんね」と青木さん。
成年にあたっての記者会見に臨まれる天皇、皇后両陛下の長女愛子さま。服の色は淡いグリーンだった(2022年3月17日)=代表撮影ベランダでは裾丈まで見えないが、一般参賀での女性皇族方の装いは「お 長服(ながふく) 」と呼ばれるロングドレスが慣例だという。一般的に、スカート丈は短くなるほどカジュアルになる。国民の祝賀に正装で礼を示されているのだ。
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日本で晴れ着といえば着物を意味することが多く、若い世代の女性なら「振り袖」となる。2024年10月に行われた秋の園遊会に、愛子さまはピンク色の振り袖姿で参加された。百花 繚乱(りょうらん) の華やかな柄で、薄いサーモンピンクから朱色へと裾にかけて濃い色になる「 裾濃(すそご) 」になっていた。
秋の園遊会では華やかな振り袖を着用された(2024年10月30日)=須藤菜々子撮影今回の愛子さまの装いで青木さんが注目したのがアクセサリー。上品なパールは正装にふさわしい格を持つ。小粒のパールを組みひも細工のようにつないだネックレス、小さなパールを二つ組み合わせたイヤリングと、デザイン性は高かった。儀式などで着用されることが多い一連タイプのネックレスではないところに「若々しいイメージを大切になさっていると感じました」と青木さんは話す。
春の園遊会に初参加された愛子さま。首には小粒のパールネックレス(2024年4月23日)=武藤要撮影このネックレスは、愛子さまが2024年春の園遊会で身につけられたものによく似ている。淡いピンク色のジャケットの襟元を飾っていたパールだ。皇后雅子さまのドレスも、2023年の「歌会始の儀」や2015年のトンガ国王の 戴冠(たいかん) 式で着用された正礼装、ベージュのローブモンタントとみられる。「正装とは新しいものを着用するというわけではありません。大切に手入れをして長く使う。その精神が体現されているような装いでした」と青木さんは話した。
日ごろカジュアルなファッションにばかり親しんでいると、きちんとした装いはハードルが高いと感じてしまう。ファッションジャーナリストの宮田理江さんは「パールを用いるだけで上品な雰囲気が生まれます。小さなアクセサリーから取り入れてみては」と提案する。
宮田理江さんパールは粒が小さいと上品、清楚、エレガントなイメージ。大粒は豪華でリッチ、ゴージャスな印象になり、華やぎもひときわだが強いパワーを感じさせる。「慣れない人は小粒のほうが試しやすい。主張や癖が強すぎず、手持ちの服にも自然になじみます」
一連ネックレスは上品でクラシックな雰囲気を醸し出す。長めになるほど立体感と存在感が強まるため、扱いなれないうちは注意したい。丸襟の内側に沿うような短いものは、服と一体化して落ち着いて見える。
愛子さまが新年一般参賀で着用されたパールネックレスは粒が小さく、首にぴったりと巻くようなデザインだった。「気品と華やぎの好バランスが印象的でした」
新年一般参賀でお言葉を述べられた天皇陛下と、ベージュのローブモンタントを着用された雅子さま(2日)=若杉和希撮影一方、雅子さまはパールのブローチをローブモンタントの襟元に用いられていた。襟が高く、胸元にレースもあしらわれているこのようなドレスはネックレスを組み合わせるのは難易度が高いが、ブローチは付ける位置を選ばない。宮田さんは「高めのポジションなら顔周りをパッと華やかに見せてくれる効果も期待できますよ」と話す。
(読売新聞東京本社生活部 梶彩夏)