カローラ クロスGR SPORTは、最上級グレードZとの価格差わずか20万6000円でGRファミリーらしい走りが楽しめる

カローラクロスGR SPORT 車両価格:389万5000円オプション価格51万2000円(ボディカラー5万5000円/ナノイーX1万1000円/ステアリングヒーター1万1000円/ハンズフリーパワーバックドア7万7000円/LEDリヤフォグランプ1万1000円/ブレーキキャリパーレッド塗装GRロゴ付き5万5000円/アダプティブハイビームシステム5万1700円/トヨタチームメイト+パーキングサポート12万2100円/アクセサリーコンセント4万5100円/GRフロアマット2万7500円/アームレスト1万3200円)

トヨタは2025年5月にカローラ クロスの一部改良を行なった。一部改良とはいえ大がかりな手が入っており、内外装はもとより、走りの面で劇的な進化を遂げている。締結トルクアップによるサスペンション締結剛性の向上は変化点のひとつで、ストラット式のフロントサスペンションはロワーアームのフロント側ボディ側取り付け点、2WD(FF)のトーションビーム式リヤサスペンションは、トレーリングリンクのボディ側取り付け点、4WDのダブルウィッシュボーン式リヤサスペンションは、トレーリングリンクのボディ側取り付け点と、スタビライザーリンクの締結トルクアップを行なった。

ボディカラー:ブラック×アッシュ

カローラ クロスは2023年の商品改良でもサスペンションのチューニングや高減衰ボディ接着材の採用などで走りの質を高める改良を行なっている。イメージでいうと、スニーカーのひもをギュッと締め直したような格好だ。おかげで靴と足の一体感が増し、路面の具合がより正確に感じられるようになるし、路面に無駄なく力を伝えられるようになる。無駄な動きがなくなりダイレクト感が増すので、余計なストレスがなく心地いい。といった効果が得られる。

全長×全幅×全高:4460mm×1825mm×1600mm ホイールベース:2640mm トレッド:F1560mm/R1565mm 最小回転半径:5.2m

カローラ クロスは先の商品改良に合わせてラインアップを整理し、それまで設定していたエンジン車を廃止。1.8Lエンジン(2ZR-FXE型)と走行用+発電用の2基のモーターを組み合わせるハイブリッド車のみのラインアップとした。さらに、GR SPORTグレードを新設定した。

ロングストローク化、バルブ挟角拡大、レーザークラッドバルブシートによる高効率吸気ポートの採用などによって最大熱効率40%を実現。 形式:2.0L直列4気筒DOHC 型式:M20A-FXS 排気量:1986cc ボア×ストローク:80.5mm×97.6m 最高出力:152ps(112kW)/6-00rpm 最大トルク:188Nm/4400-5200rpm 燃料供給:PFI 燃料タンク容量:47L

今回はそのGR SPORTグレードの話だ。カローラ クロスGR SPORTは専用のフロントバンパー、19インチアルミホイール、スポーツシートなど、GRらしい機能の裏付けがあるスポーティな外観・内装が与えられ、サスペンションは専用にチューニング。ハイブリッドシステムは専用設定の2.0Lエンジン(M20A-FXS)とし、エンジンレスポンスを最大限に向上させるため、標準車のPOWERに替わってSPORTモードを設定した。駆動方式は後輪をモーターで駆動するE-Fourのみの設定だ。

GRカローラ譲りのブッシュを採用

フロントサスペンションは、マクファーソンストラット式、リヤはダブルウィッシュボーン式

フロントサスペンションはフロントロワーアームNo.1(フロント側)、No.2(リヤ側)ブッシュを高硬度化、リバウンドスプリング内蔵式ショックアブソーバーを採用し、リヤ側にはピストンバンドを適用した。フロントロワーアームに適用したブッシュはなんと、GRカローラと同じ諸元である。GRカローラの開発アイテムのなかから、乗り心地を悪化させずにインフォメーションを向上させるアイテムを選定し採用に至ったという。ブッシュの開発には工数(つまり開発費)がかかるので、GR SPORT専用に開発するのは難しい。ブッシュの変更は、GRシリーズの資産を有効活用した格好だ。

車高は10mm下げて低重心化を図り、コイルスプリングはばね定数を変更している。操舵応答性と操縦安定性を高めつつ、乗り心地を高次元で両立するのが開発の狙いだ。ベース車のボディ剛性をより高水準にするため、リヤバンパーにはブレース(補強材)が追加された。

フロントサスペンション リヤサスペンション

これらの変更により、カローラ・クロスGR SPORTはベース車に対し、ヨー応答が10%早期化し、ロール量は8%低減しているという。ドライバーの操舵に対して応答良く反応し、その際の車両姿勢は安定するようになったということだ。

視覚面ではただ者ではないことを、さりげなく主張しているのがGR SPORTのいいところだ。見る人が見ればわかるが、興味のない人にはただのSUVに見えるかもしれない。が、それでいい。「見る人」には低重心の精悍なフロントマスクが目を引くし、ツインスポーク形状の19インチホイールから覗く赤いブレーキキャリパー(オプション)が目に入る。豆知識的にお伝えしておくと、ホイールはベース車比で1インチサイズアップしておきながら、重量は同等に抑えている。リヤで「らしさ」を主張するのはGR SPORTのバッジだけだが、それで充分である。

脚は硬いというより、引き締まった印象

ステアリングホイールにGRマーク。

ドアを開けて運転席に乗り込む際は、ステアリングのスポーク部に配されたGRロゴが目に入るし、ヘッドレストでもGRロゴが主張している。フロントシートはGRカローラと同じだ。ホールド性を徹底的に追求したスポーツシートであり、腰を下ろした瞬間にサポート性の高さを実感する。表皮のメイン材は身体が滑りにくいスエード調で、パーフォレーションが施された表皮は視覚的にもスポーティ。走り出す前から気分が高揚する仕掛けに満ちている。

締結剛性とボディ剛性を専用に向上させた効果は、走り出し、わずかに転舵するだけで実感できる。ラグ(応答遅れ)も大げさな揺れもなく、スッと向きが変わるからだ。背の高いSUVであることを実感させず、平行移動するようにスイスイと向きを変える。ステアリングホイールから路面の状態がダイレクトに伝わってくるのは、フロントロワーアームのブッシュを高硬度化した効果だろう。荒れた路面ではザラザラした感触がやや過敏に伝わってくるが、応答性やライントレース性を高めた引き換えである。GR SPORTを好んで選択するオーナーは許容するはずだ。

内装色:ブラック シートは専用スポーツシート。シート表皮は合成皮革+ブランノーブ。ブランノーブはTBカワシマノが回収ペットボトルを減量したリサイクルポリエステル糸を使った素材だ。

脚は硬いというより、引き締まった印象。普段は意識しない横断歩道の白線に明確な段差があることを、カローラ クロスGR SPORTは教えてくれる。その際、サスペンションはいきなり縮まずにじんわりストロークし、じんわり元の状態に収まって姿勢を安定させる。手や尻の感覚を通じ、路面の粗密だけでなくわずかな段差もドライバーにしっかり情報を伝えてくれる。快適性を高めるためにノイズをカットすると必要な情報もある程度カットされてしまうが、GR SPORTは快適性を損なわないギリギリを狙い、できるだけ多くの情報をドライバーに伝える方向でチューニングした。絶妙な落とし所になっている。

開発者によると、ブッシュの高硬度化をフロントだけに行なったのは、後席の快適性を損ないたくなかったから。ドライバーは多少入力が大きくなっても許容してくれるだろうとの読みからだという。フラット感を高める(ロールを抑える)にはスタビライザーを強化する(太くする)手もあるが、カローラ クロスGR SPORTの開発ではその手法は選択せず、前述したようにショックアブソーバーにリバウンドスプリングを内蔵する方法を選択した。そのほうが、「タイヤの接地感が損なわれず、収まりが良い」からだという。

タイヤ:ヨコハマADVAN FELEVA サイズは225/45R19 タイヤ&ホイールは19インチ化したが、18インチ仕様と同等の重量とした。

リヤのショックアブソーバーに適用したピストンバンドは、横方向の力が加わったときだけ側面との摩擦力が発生し、車体を制振する力が働く仕組み。横力が発生したとき、つまりコーナリング時に軸力を上げて回頭性の良さを引き出す考えだ。いっぽうで、横力が発生しないときは軸力を弱めて快適な乗り心地を担保する。ベース車に対して「意のまま」に走る能力は高まっているが、助手席や後席のパートナーから不満が出るようなガチガチの脚では決してない。

新スポーツモード SPORTモードを選ぶとメーターはこうなる。

新設定のSPORTモードに切り換えると、エンジンは常時かかった状態になる。これには社内で議論があったという。ハイブリッドシステムとはそもそも、燃費向上を最大の目的として開発されたものだ。であるのに、エンジンをかけっぱなしにするとは何ごとかと。ごもっともな意見だが、ハイブリッドシステムはもはや、燃費向上を唯一の目的とするデバイスではなくなっている。気持ち良く、レスポンスのいい走りを提供する使い方の提案があってもいいのではないか──。

社内でのコンセンサスがとれ、トヨタ車国内向けとしては初めて、エンジンがかかりっぱなしになるSPORTモードが採用されることになった。アクセルペダルの動きに対するレスポンスが良くなるのはもちろんだが、エンジンがかかり続けて待機しているときの、ハミングにも感じられるエンジン音が気分を高揚させる。

GRヤリスやGRカローラのようにガチではないが、GRの一員にふさわしいスポーツ性は充分に感じられる。日常使いもオーケーだ。驚くべきは価格設定で、「カローラだから」とのことだが、カローラクロスの最上級グレードZ(E-Four)との価格差はわずか20万6000円である(税込389万5000円)。GR SPORTを手にすることによって得られるうれしさを考えれば、大バーゲンだ。

カローラ クロスGR SPORT■ボディサイズ全長×全幅×全高:4460mm×1825mm×1600mmホイールベース:2640mm最低地上高:145mm車両重量:1510kg室内 長×幅×高:1800mm×1505mm×1260mm乗車定員:5名■エンジン形式:2.0L直列4気筒DOHC型式:M20A-FXS排気量:1986ccボア×ストローク:80.5mm×97.6m最高出力:152ps(112kW)/6-00rpm最大トルク:188Nm/4400-5200rpm燃料供給:PFI燃料タンク容量:47L使用燃料:レギュラーフロントモーター1VM型交流同期モーター最高出力:113ps(83kW)最大トルク:206Nmリヤモーター1WM型交流同期モーター最高出力:41ps(30kW)最大トルク:84Nmシステム最高出力:199ps(146kW)■シャシーサスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rダブルウィッシュボーン式駆動方式:4WD(E-Four)燃費WLTCモード燃費23.3km/L 市街地モード22.0km/L 郊外モード24.5km/L 高速道路モード23.1km/L車両価格:389万5000円オプション価格51万2000円(ボディカラー5万5000円/ナノイーX1万1000円/ステアリングヒーター1万1000円/ハンズフリーパワーバックドア7万7000円/LEDリヤフォグランプ1万1000円/ブレーキキャリパーレッド塗装GRロゴ付き5万5000円/アダプティブハイビームシステム5万1700円/トヨタチームメイト+パーキングサポート12万2100円/アクセサリーコンセント4万5100円/GRフロアマット2万7500円/アームレスト1万3200円)

関連記事: