世界最大・最古の氷山「A23a」、サウスジョージア島沖で座礁
東京都の1.6倍もあるものは「氷山」ではないと思うの。「氷島」でよくない?
イギリス南極研究所によると、5年にわたるのんびりした旅の末に、巨大氷山A23aは南極海のサウスジョージア島付近で座礁しちゃったみたいです。
分離後座礁、漂流、また座礁
A23aの重さは約1兆トン。現存する氷山としては世界最大とされています。1986年に南極から分離したこの氷山は、現在世界最古の氷山でもあります。そして今、5年間の漂流の果てに、サウスジョージア島の南約90kmの地点で座礁したもようです。
イギリス南極研究所の海洋学者であるAndrew Meijers氏は次のように述べています。
Image: The Mapping and Geographic Information Centre, British Antarctic SurveyA23aの経路と現在の位置もし氷山が座礁したままであれば、サウスジョージア島の野生生物に大きな影響を与えることはないと考えています。ここ数十年の間に、このルートを通る多くの氷山はすぐに崩壊して分散し、最終的には融解しました。しかし、過去には商業漁業が混乱した例もあり、氷山が小さなかたまりに分かれて散らばることで、この海域での漁業がより困難になり、危険が増す可能性があります。
1月末時点で東京都の約1.6倍の大きさ(約3,500平方km)だったA23aは、1986年の分離後すぐに座礁して何十年もの間ずっと海底に居座っていましたが、その後サウスジョージア島へ向かう気ままな旅をはじめました。
そして、「テイラー柱」と呼ばれる海流の渦に巻き込まれたためにしばらくは進路が予想しやすくなった(クルクル回るだけなので予想が簡単)ものの、2024年にはその渦を抜け出してサウスジョージア島に衝突しそうなコースに乗りました。
現在、この高さ約400mの巨大な崖は島の南で座礁してひと休み中。どうやらこのままゆっくり解けて崩れていく可能性が高いようです。
Meijers氏は座礁の影響について次のように説明します。
科学的な観点から、この氷山が地域の生態系にどのような影響を与えるのかを注視しています。座礁や融解によってかき混ぜられた栄養素が、サウスジョージア島に生息するペンギンやアザラシなどの象徴的な生物を含め、この地域における生態系の食料供給を増加させる可能性があります。
イギリス南極研究所のサイトに掲載されているMeijers氏とのQ&Aによると、A23aはまだ小さい破片に分裂していないようです。
まだ抜け出して迷走する可能性も
現在座礁中のA23aは、崩壊しやすい状態にあるとのこと。とはいえ、まだ抜け出して北へ進む可能性も残されているといいます。
Meijers氏は、過去には暖かい海水と空気の影響を受けて崩壊し、オーストラリアのパースから約1,000kmの地点まで接近した氷山があったと指摘しています。安心するのはまだ早いということみたいですね。
今のところ、A23aの追跡は簡単なのだとか。なんせサイズが巨大なので、航行中の船舶や人工衛星からもはっきり確認できるうえに、座礁しているので位置の把握も容易とのこと。
しかし、A23aが崩壊し始めると、より小さく、でも危険なミニ氷山が生まれて分散するため、追跡が難しくなって漁業にも影響を及ぼすかもしれません。
温暖化で加速する氷棚融解
Meijers氏によると、2000年以降、地球の氷棚は約6兆トンもの質量を失っているそうです。化石燃料使用を主因とする人為的な気候変動が氷棚の減少を加速させており、海洋循環や海面上昇など、さまざまな環境要因に影響を与えています。
科学者たちはA23aの動向を見守りつつ、地元の海洋生物がこの「新たなお隣さん」にどう反応するかを注意深く観察しています。
お隣さん、これ以上引っ越さないでそのままそこでいなくなって。