この夏、個性的な旅をしよう-世界の「穴場」ならお得感も味わえる
米国のメモリアルデー(戦没者追悼記念日)が終わり、本格的な夏の旅行シーズンが到来した。ギリシャの島々やイタリアなどに毎年繰り出す旅好きが一斉に動き出す時期だ。
もっとも、今年の夏はやや緩やかなスタートとなりそうだ。米国人観光客の間では、経済情勢や地政学的リスク、航空上の安全、移民政策、加えて米国に対する国際的評価の悪化といった要因により、旅行を控える動きが見られる。
そんな状況でも意気揚々と旅に出る米国人や旅行好きで知られる欧州人にとって、目指すべき個性的な目的地が幾つかある。
以下に紹介する5つの旅行先は、2025年の「行くべき場所」リストの中から選ばれた、今はまだ観光客が少ない「穴場」だ。つまりその分、価格も抑えめだということだ。
だが、今は穴場であっても静けさも長くは続かないだろう。今夏に訪れれば、時代を先取りしたと帰国後に自慢できるに違いない。
スコーネ(Skåne、スウェーデン)
スウェーデンの小さな県スコーネには、英国コッツウォルズの古城やフレンチリビエラの海辺で味わえる幸福感に、スカンジナビア流の心地よさを少し加えたような魅力がある。
中でもグルムスレブにある「Maryhill Estate」は100年の歴史を持つ建物を163室のホテルとして開業したばかりだ。宿泊料金は1泊約225ドル(約3万2400円)から。
花柄のサンベッドが並ぶ4つのプールや広々とした庭園が主な魅力であることを考えると、冬季の開業はやや異例だったと言える。
今はまさに花々が見頃だ。ラケットスポーツやブール、飛び込み台、子ども向けの遊び場、そして同じく北欧にあるデンマークの首都コペンハーゲンの住民が90分でアクセスできるクラブもある。
コペンハーゲンの美食文化を受け継ぐかのように、スコーネもまたグルメの聖地になりつつある。
伝説のシェフ、マグヌス・ニルソン氏はボースタードで野心的なレストランと客室を備えるプロジェクトに取り組んでおり、その第1段階として6月にはかわいらしいベーカリーがオープン予定だ。
カップフェレ(Cap Ferret、フランス)
もしあなたが、銀の皿に山盛りの牡蠣(かき)と海辺で止めどなく注がれるワインを楽しみたいと考えているのなら、カップフェレにひかれるのは当然だ。
かつての漁村がしゃれた街並みに変貌を遂げたこの場所は、サーフィン好きが集まる岬がアルカション湾を包み込む。フランス南西部の砂丘が続く海岸にあり、ボルドーから車でわずか45マイル(約72キロ)だ。
この1年ほどで、カップフェレには個性的なホテルが次々と誕生。例えば、レトロな雰囲気が魅力の全12室の「Hôtel de la Plage」(1泊約390ドルから)や、フィリップ・スタルク氏が設計したガラス張りの客室が海に面する「La Co(o)rniche」(1泊約600ドルから)などがある。
しっかり泳ぎたい人には、視界の開けた「インフィニティー」プールか半島西側の大西洋が適している。一方、東側にはゆったりとした潮の満ち引きが特徴の浅瀬が広がっている。
ロッテルダム
人類の移動という壮大なテーマに特化した新しい展示施設「フェニックス」ほど、今の時代にふさわしい美術館はないかもしれない。
ロッテルダムの波止場沿いにある旧造船所の建物が改修され、その上に未来的な展望台「トルネード」が設けられた。設計はMADアーキテクツだ。渦巻く二重らせんの形状からその名が付けられた。
館内には、スティーブ・マックイーン、フランシス・アリス両氏ら著名アーティストのインスタレーションが展示され、「故郷とは何か」「アイデンティティーとは何か」といった問いを投げかけている。
また、迫害からの逃避を強いられた人々の物語を伝えるために、スーツケースを手に人生を再出発する人々の過去および現在の写真が展示されているほか、「ベルリンの壁」の一部も見ることができる。
ロッテルダムを今訪れるべき理由は、フェニックスだけではない。
アムステルダムの空港から電車でわずか30分の距離にありながら、ロッテルダムは混雑とは無縁。無料で楽しめるパブリックアートが街中に点在し、鉄道の高架下に造られたミシュラン星付きの「フードラボ」など、街の多様性と創造性、そしてサステナブルな考え方が随所に表現されている。
宿泊には、アートの街ニューウェ・ビネンウェグにあるバウハウス建築の20室のブティックホテル「Morgan & Mees」がお勧めだ。この夏も150ドル以下で宿泊可能な部屋が見つかる。
グリーンランド
島でのバケーションを求めていて、ギリシャやカリブ海よりも冒険的な体験がしたいなら、世界最大の島グリーンランドを訪れてみてはいかがだろうか。
政治と無関係の魅力がこの地には数多くある。白夜の下でパドルボードを楽しんだり、パフィン(ニシツノメドリ)が生息するフィヨルドをスピードボートで巡ったり、素手でホッキョクイワナを釣ったりすることができる。
過酷な冒険を覚悟する必要はない。ブラック・トマトのような高級志向の旅行会社によるツアーを利用すれば、ヘリコプターで人里離れた集落へ向かい、地元の人々が運営するサファリ風のキャンプで5つ星の設備を備えた快適な滞在が楽しめる。
きっと高さ3200フィート(約975メートル)の氷山や、圧倒的な星空の美しさを誰かに伝えたくなるだろう。ガイド付きの6泊ツアーは、航空券を除いて2人で約1万9435ドルから。
安くはないが、同じ価格帯のクルーズに比べ、効率的かつプライベート感覚でまだ手つかずのフロンティアを体験できる。
ポルティージョ(Portillo、チリ)
昨年12月に毎年恒例の魅力的な旅先のガイドを発表した際、ポルティージョについて、北海道のスキーリゾート、ニセコの南半球版と紹介した。
ポルティージョは今年、開業75周年を迎え、イベント盛りだくさんのシーズンが6月21日から9月27日まで続く。この機会にチリのアンデス山脈に点在するスキーリゾートで遊ぶのもいいだろう。
中でも有名なスキー場の1つがバジェネバドで、サンティアゴから日帰りで訪れることができる。このスキー場は複数の山をまたぐシーズンチケットの対象で、例えば「マウンテンコレクティブ」パスは639ドル、「パワーパス」は849ドルだ。
どちらのパスも値上がり前に手に入れておけば、夏と冬の計画を一度に立てることができる。
原題:Five Value-Packed, Under-the-Radar Vacations to Take This Summer(抜粋)