<独自>万博のVIP来場「予測の3割」 案内役に勤務機会なし、夏の参院選も影響か

アテンダントの案内で万博会場を視察する経済同友会の新浪剛史代表幹事(右)=4月24日、大阪市此花区

開催中の大阪・関西万博で、会場を訪れる国内外の賓客(VIP)が運営側の予測を大幅に下回り、案内役として雇用されているアテンダントの大半がほぼ勤務日がない状況となっていることが6日、関係者への取材で分かった。アテンダントの事業会社は「VIP来場は予測の3割に満たない状態」としている。

「契約違反」の声も

アテンダント業務は、万博を運営する日本国際博覧会協会から委託を受けた日本コンベンションサービス(東京)が担当。同社は2005年の愛知万博でも施設運営を手掛けた実績がある。

関係者によると、アテンダントは万博会期中のアルバイト契約で、場内の迎賓館や日本館を拠点にパビリオンやイベントの視察などに同行する。

同社は協会からVIPの来場予定の情報提供を受け、勤務シフトを組んでいる。万博関連の仕事の時給は一般の仕事よりも高水準となっていることもあり、1週間に5日など〝フル稼働〟を希望する契約者が多い。

だが、会場を訪れるVIPが少なく、アテンダントの稼働がない状況が続いている。VIP側が協会ルートではなく、関係先のパビリオンを直接訪問するケースもあるほか、国内の政治家に関しては、夏に参院選があるため、万博訪問よりも地元対策を優先しているとの見方も出ている。

万博開幕から3週間が経過したが、勤務回数が0または1という人が続出。アテンダントからは「契約違反ではないか」との声が出ている。

この問題への取材に対し、協会は明確な回答をしなかった。

協会はVIPについて、王族や閣僚といった地位により「S」~「D」に分類している。

「生活に支障」丸投げの協会に批判

万博を訪れるVIPの案内役の仕事がほぼないことについて、事業会社に雇用されているアテンダントからは「収入が得られず生活に支障が出ている」との声が出ている。万博会場で働くことを希望し、それまでの仕事を辞めて応募した人も少なくない。日本国際博覧会協会はこの問題について特段対応をしておらず、事業会社への〝丸投げ〟に批判が出ている。

「万博期間中の収入は生活費として相当あてにしていたのに、開幕以来1日しか勤務がなく非常に困っている」。事業会社と契約している大阪府の女性は、苦しい胸の内をこう明かす。

女性はもともと、万博とは無関係のサービス業でアルバイト収入を得ていたが、時給2千円近くのアテンダントの仕事が決まったため、主な収入源を万博に移した。アテンダントの研修も受けて期待を膨らませていたが、仕事で万博会場に行ったのは開幕直前のユニホームの採寸と、VIPの案内が1度だけだ。

今さら副業OKと言われても…

今も万博会場で働く希望を持つが、事業会社からは「VIPの来場が増えるかどうか見通しが立たない。万博が盛り上がるかにもよる」などの説明を受けたという。女性は「10月の閉幕までこの状況が続くならどうしてくれるのか。協会は何の反応もしていないが、事業会社に丸投げは許されない」と憤る。

さらに別のアテンダントは4月末まで一度も仕事がなかったといい、「これから急にVIP対応に入るよう言われも不安だ」とこぼす。別のスタッフは「事業会社から副業をしていいとの連絡がきたが、今さら条件の合う仕事なんてない」と語気を強める。

一方、関係者によると、事業会社は4月下旬、スタッフに状況を説明。VIPの来場の少なさが問題の主要因との見解を示し、来場キャンセルで仕事がなくなった場合は「平均賃金の日額6割」を支払うことになったという。

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