コメ農家「『ごめんなさい』と謝ってコメを売っている」 農機具で節税対策も2000万円コンバインは2年待ち
新米の価格高騰によって、米農家は利益上々のはずだ。しかし、意外にも浮かない顔だ。消費者が米を買い控えているのを、肌で感じるからだ。 【写真】コメ農家も「高値が続くと思っていたら、農家は痛い目に合う」と懸念 * * * ■「こんなに高くなっちゃってごめんなさい」 「直接、米農家に米を買いに来る個人のお客さんに、みなさん謝って売っていますよ。『こんなに高くなっちゃって、ごめんなさい。農協(JA)の買い取りと同じ価格でお渡しするから』と言っています」 福島県天栄村の米農家・吉成邦市さんは、そう語る。 吉成さんが暮らす地域のJAの今年の米(玄米)の買い取り価格(概算金+精算金)は60キロ3万2000円だった。 「それよりも安く売ることはフェアではないし、昔からの付き合いもあって、できない」(吉成さん) そのため、必要経費である低温倉庫の電気代などを上乗せして、30キロ1万8000円前後で個人客に販売している米農家が多いという。 吉成さんによると、通常、米の末端価格はJAの買い取り価格の約2倍になるという。倉庫の保管料に加え、物流コストや精米にかかる費用などが上乗せされるからだ。たとえば、60キロ3万2000円で農家が米を出荷すると、5キロ約5330円でスーパーの店頭などに並ぶ計算になる。 ■この10年採算割れだったのに 鈴木憲和農林水産相は就任会見で、「米の価格はマーケットの中で決まっていくもの」とも発言した。 これについて、吉成さんは「当たり前の話」だと言う。1999年に制定された「食料・農業・農村基本法」によって、従来の食糧管理制度から脱却し、農産物の価格を市場に委ねる方向に転換したはずだからだ。だが、実際は、米の価格は、JAの買い取り価格にしばられてきた。 2023年までの10年間、全国的な買い取り価格はおおむね60キロ1万2000~1万6000円の間で推移。生産コストは同1万5000~1万6000円だったので、ほとんどの米農家は採算割れの状態に陥っていた。 「農家は米を作るのをどんどんやめていきました」(同) そんな折に起こった令和の米騒動だった。米不足を背景に、昨年、米の買い取り価格は60キロ2万円を超えた。 「『これなら何とか稲作をやっていける』と、農家はみな、喜んだんです」 ■注文殺到でコンバインが2年待ち さらに、今年は前述のとおり、60キロ3万2000円。 「今年の買い取り価格はとても高かった。農機具を買うこともできる」(同) 所得が増えれば納税額も増えるが、設備投資をすれば所得を圧縮できる。今年は節税対策を兼ねて、農業機械を購入する米農家が多いという。 「近年、生産規模を縮小したところに注文が殺到したせいでしょう、2000万円の大型コンバインが納品まで2年待ちですよ。農機具メーカーは複雑な心境だと思います」(同)