大和ミュージアム、人気が出過ぎて休館…47億円かけ大規模改修・混雑解消や回遊性高める工夫

 広島県呉市の大和ミュージアムは17日から2026年3月末まで、大規模改修工事のため休館する。今年は開館20周年で、さらに戦後80年の大きな節目が重なるが、来館者数が当初の見込みを大幅に上回る状況が続いているため、混雑の解消や安全性の向上をはかることにした。期間中に観光客が減らないよう、市は代替施設での新たな展示や街ぐるみでのイベントなどを計画している。(池尻太一)

大和ミュージアム休館中の代替展示施設で公開される零式観測機の実物大模型(広島県呉市で)

 太平洋戦争当時、世界最大の戦艦だった「大和」と、建造した呉海軍 工廠(こうしょう) の技術と歴史を伝えようと、05年4月に開館。戦争をテーマにした国内の他施設を参考に、年間来場者数を初年度40万人、2年目以降20万人と想定して設計された。

 しかし、大和の10分の1模型などの目玉展示が人気を呼び、初年度160万人、翌年度以降も80万~90万人が来場。空調設備の能力不足や、混雑による安全面の課題が生じていた。所有する市は、空調やエレベーターなどの更新時期を迎えたタイミングで、総事業費47億1000万円をかけ、展示も含めた大規模改修を行うことにした。

大規模改修後の大和ミュージアム3階展示室のイメージ(広島県呉市提供)

 1階エントランスホールの混雑解消のため、ホール内のミュージアムショップを館外に別棟として新築する。市によると、来場者の半数以上が大和の模型などがある1階しか見ていないことから、呉海軍工廠の造船技術や、航空機開発をしていた広海軍工廠の技術が現代の工業に引き継がれていることを紹介する展示を3階に新設し、回遊性を高める。

 「呉最大の集客施設」の休館中も観光客を呼び込むため、市は25年度一般会計当初予算案に総額4億1100万円を計上して対策を図る。

 代替施設として今月17日に、大和ミュージアムから南に約1.8キロ離れたレンガ倉庫群にある観光施設「 澎湃館(ほうはいかん) 」(昭和町)に仮展示室を開設。JR呉駅近くの「ビュー・ポートくれ」(中通)内には28日に「大和ミュージアムサテライト」をオープンする。

 仮展示室には大和の主砲塔の模型(50分の1)などが置かれ、サテライトでは戦艦から発射された砲弾の着弾位置を確認するために開発され、大和にも搭載された「零式観測機」の実物大模型(全長9.5メートル、全幅11メートル、高さ4メートル)が展示される。

 改修中の同ミュージアムでも、屋外に足場を設置し、ガラス越しに大和の模型を見られる。

 また、市の観光アプリ「マイクレ」を利用し、市内の観光地や加盟する飲食店などを巡ってデジタルスタンプを集めることで、オリジナルグッズと交換できるスタンプラリーなど様々なイベントも行う。

 同ミュージアムの戸高一成館長は「休館中に皆さんに忘れられないよう、色々な取り組みをやっていく。(サテライトの)模型などを見て、改修後のミュージアムに期待を寄せてもらえれば」と話している。

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