米海軍の次期フリゲート計画総数は最大65隻、Flight IIでVLS搭載を検討
米海軍はレジェンド級カッターをベースにした次期フリゲートの建造を開始し、Flight Iのミサイル搭載はコンテナ方式だが、Flight IIではVLS搭載(ESSM、SM-2、SM-6、VL-ASROCを運用可能)を検討中で、50隻~65隻を予定している計画総数の大部分はFlight IIになるだろう。
参考:Shipbuilding and Conversion, Navy (SCN) Justification Book 参考:U.S. Navy wants first FF(X) frigate in the water by 2028
米海軍のコンステレーション級フリゲートはFREMMの設計と85%の共通性を保ち、詳細設計の進捗が80%に達した2022年8月に建造を開始したものの、海軍が追加の設計変更を要求したため計画外の重量増を招き、将来のアップグレードを受け入れる重量的余裕が無くなり、米政府説明責任局(GAO)は2024年5月に発表したレポートの中で「コンステレーション級とFREMMとの共通性は遠い親類程度にしか見えなくなった」と批判。
出典:U.S. Government Accountability Office
海軍の強力な擁護者であるウィットマン議員も「コンステレーション級への資金供給に賛成だが、海軍は過去の失敗から何も学んでいないように見える」「コンステレーション級はオリジナル=FREMM設計の85%を維持する構想から始まったのに、現在では状況が逆転してオリジナルの15%と追加要素の85%で構成されている」「コンステレーション級の方向性に関する疑問は沿海域戦闘艦で問われるべきだった疑問と同じだ」と述べ、ジョン・フェラン海軍長官は2025年11月「コンステレーション級計画を中止する」と発表。
当時のフェラン海軍長官は声明の中で「私はHIIのレジェンド級(バーソルフ級のこと)カッターの設計に基づく新型フリゲート艦(FF-X)調達を指示した」「これは実績ある米国設計の艦艇であり国内外で国益を守ってきた」「FF-Xはゴールデン・フリート構想の一環となる」と明かし、コードル作戦部長も「紅海やカリブ海などの作戦はフリゲート艦の必要性を浮き彫りにした」「我々が保有する小型艦艇はニーズの1/3しかない」「駆逐艦はハイエンドの戦闘に集中させるためにはフリゲート艦が必要だ」と述べた。
出典:U.S. Marine Corps photo by Cpl. Elijah Murphy
レジェンド級カッターに基づくFF-Xは設計変更を最小に抑えるため「コンテナ化されたミッションパッケージを採用する」とも報じられていたが、米海軍はWar Zoneの取材に「FF-Xの初期建造分は57mm砲×1基、30mm機関砲×2基、RAMランチャー、各種対抗手段が搭載され、ヘリコプターや無人システムを運用する飛行甲板を備えている。さらに飛行甲板後方の艦尾にはコンテナ化されたペイロード(対ドローンシステムや各種ミサイル)が搭載される」「FF-Xはアーレイ・バーク級駆逐艦と同じように段階的な仕様更新が行われる」「FF-Xはこれを受け入れる拡張スペースが確保されている」と説明。
海軍はFF-Xを2028年に進水させるためレジェンド級カッターからの設計変更を最小(垂直発射セルの省略)にし、飛行甲板後方のスペースにコンテナ化されたペイロードを追加することで「FF-Xとして必要な最低限の能力」を確保する格好で、War Zoneも「FF-Xは無人水上艦を指揮統制できる能力も備えているため、これを作戦中に追加の弾薬庫やセンサーとして分散活用することになる」と述べていたが、2027会計年度の予算文書でFF-Xの全貌が明らかになった。
出典:Commander, Naval Surface Force, U.S. Pacific Fleet Mk70コンテナランチャー
FY2027予算文書に記載されているFF-X×22隻の推定調達コストは約360億ドル=約5.7兆円、1隻あたりの平均調達コストは約16.3億ドル=約2,600億円で、推定調達コストは船体の建造費用、政府支給の戦闘管理システムや兵器システム、初期支援装備(スペアパーツ、特殊工具、試験装置、訓練器材、シミュレーター、技術資料、マニュアル、保守資材、消耗品)で構成され、FY2027に1番艦の調達に割当られた直接的な資金は14.2億ドル、これに加えてFF-Xの研究・開発費として2.1億ドルが計上されている。
FF-Xの1番艦はFY2029第1四半期=2028年末頃までに進水する予定で、米海軍にはFY2030第3四半期中(2030年6月まで)に引き渡されるため、計画開始から就役まで約4年という異例の早さで実用化されることになるが、1番艦と2番艦はRAMランチャーやSPS-77派生型レーダーの搭載、船体後部のボートランプをコンテナ化されたペイロード搭載に転用するための設計変更のみのFlight I仕様であり、既にFlight II仕様の設計作業も進んでいるらしい。
出典:USNI News
Flight IIでは船体へのVLS搭載や既存の対潜戦システムを統合することも検討されており、FY2027予算文書に記載されたFF-Xの推定調達コストは22隻分だが計画総数は50隻~65隻(Naval Newsは55隻~60隻と報じているが、公式の予算文書ではnotional total 50-65と言及)で、その大部分がESSM、SM-2、SM-6、VL-ASROCを運用可能なVLS搭載型=Flight II仕様になる可能性が高く、55隻~60隻まで調達規模が拡張されれば1隻あたりの平均調達コストも大幅に値下がりするだろう。
レジェンド級からの設計変更が最小に抑えられたFlight I仕様の調達で時間を稼ぎ、Flight II仕様もVLS搭載や既存の対潜戦システム統合で済ませるなら手堅い計画といえ、これと協調する中型無人水上艦(MUSV)の入札も具体的に動き出しているため、上手くハマれば米海軍の海上戦力縮小に歯止めがかかるかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy