【米国市況】S&P500が8日続伸、リスク志向が復活-ドル145円台
米国株は上昇。テクノロジー企業の堅調な決算を受けて、関税ショックで世界に先月広がった「米国売り」シナリオが覆され、ウォール街のリスク志向が復活した。
株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 5604.14 35.08 0.63% ダウ工業株30種平均 40752.96 225.34 0.56% ナスダック総合指数 17710.74 264.40 1.52%S&P500種株価指数は8営業日続伸と、昨年8月以来の長期連続高となった。ナスダック100指数は1.1%高で引けた。好調な決算を発表したマイクロソフトとメタ・プラットフォームズは大幅高となり、両指数を押し上げた。また、エヌビディア製品のアラブ首長国連邦(UAE)への販売制限緩和を米国が検討しているとの報道を受け、同社株も値上がりした。
市場の楽観ムードは主にテクノロジー企業の決算と、多くの国に課された高関税がディール(取引)によって軽減されるとの期待がもたらしている。
市場の注目は、2日に発表される米雇用統計に移った。
HSBCグローバル・プライベート・バンキングの欧州・中東・アフリカ(EMEA)地域の最高投資責任者(CIO)、ゲオルギオス・レオンタリス氏は「これまでのところ大手テクノロジー企業が好調な決算を発表しており、それが安心感となって株式相場を支えている」と指摘。「決算以外の要素はもちろん、関税に関するノイズがピークを過ぎたのかどうかを巡る議論だ」と付け加えた。
朝方発表された先週の新規失業保険申請件数は、2月以来の高水準に増加した。また4月の米製造業活動は縮小し、指数は5カ月ぶりの低水準となった。
企業の業績動向を見ると、米ゼネラル・モーターズ(GM)は、トランプ米大統領が課す自動車関税により最大50億ドル(約7200億円)の影響を受ける可能性があるとして、通期利益見通しを下方修正した。またマクドナルドは米国での売上高が1-3月(第1四半期)に大きく落ち込み、市場予想を下回った。クアルコムは4-6月(第3四半期)について低調な見通しを示した。
一部の企業決算はさえない内容だったものの、米国が関税問題を巡る交渉を目指し、複数のルートを通じて中国側に積極的に接触を図っているとの報道を受け、市場では明るいセンチメントが維持された。一方、トランプ大統領は前日、米関税措置の見直しを求める日本や韓国、インドとの間で「潜在的なディール」があるとしつつも、米経済を巡って懸念を表明している人々ほどは「急いでいない」と言明。市場のボラティリティーについては「関税とは無関係だ」と述べた。
国債
米国債は下落。米製造業活動のデータが予想ほど悪くなかったことから、市場では今年の米利下げ観測がやや後退した。
国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.72% 4.2 0.89% 米10年債利回り 4.22% 5.4 1.29% 米2年債利回り 3.69% 9.2 2.55% 米東部時間 16時49分利回りは全ての年限で上昇。4月の米製造業活動はトランプ大統領の関税の影響で縮小したものの、一部市場関係者の間ではそれほどひどい内容ではないと受け止められた。米金融政策に最も敏感な2年債利回りは、一時11ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り上昇した。
トレーダーが織り込む米連邦公開市場委員会(FOMC)による年内の利下げ幅は、約90bpに縮小した。この日の早い段階では約107bpと織り込まれていた。今年最初となる0.25ポイントの利下げについては、7月実施が100%織り込まれている。
ブラックロックの米州チーフ投資ポートフォリオストラテジスト、ガルギ・チャウドゥーリー氏は「経済に対するリスクを踏まえると、今年3-4回の利下げは妥当な確率と思われる」としつつ、「極めて大きな成長ショックがない限り、年内に4回の利下げがあるとは考えにくい」と述べた。
為替
外国為替市場はドルが主要通貨に対して上昇。トランプ政権が中国に関税協議を呼び掛けたとの報道が好感された。円は値下がり。日本銀行が経済・物価の見通しを引き下げ、追加利上げ観測が後退した。
為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1229.98 6.38 0.52% ドル/円 ¥145.36 ¥2.29 1.60% ユーロ/ドル $1.1291 -$0.0037 -0.33% 米東部時間 16時49分ブラウン・ブラザース・ハリマン(BBH)のストラテジスト、ウィン・シン、エリアス・ハダッド両氏は「最近のドル安は、その大部分が米政策当局者への不信感拡大と関税の不確実性が米経済に与える悪影響に起因していると、われわれは引き続き考えている。いかなるリリーフラリー(安心感による相場上昇)も懐疑的に受け止めており、今週の上昇も持続する可能性は低いとみている」と分析。「米国の関税政策の影響が完全に明確になるまで、ドルが弱含む状況は続き、米経済データがどのような内容になろうとも、ドルの回復は脆弱(ぜいじゃく)なものになると考えている」と述べた。
円はニューヨーク時間に下げ幅を拡大し、一時1ドル=145円73銭を付けた。日銀は1日の金融政策決定会合で政策維持を決定。トランプ関税で高まる世界経済の不確実性を踏まえ、2%の物価安定目標の実現時期を1年程度先送りした。植田和男総裁は記者会見で、各国通商政策の今後の展開やその影響を受けた「海外経済・物価を巡る不確実性は極めて高い」と指摘。金融為替市場や国内経済・物価への影響を十分注視する必要があると語った。
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インタッチ・キャピタル・マーケッツのシニアアナリスト、ショーン・キャロウ氏は「最近、円ロングの流れに乗った投資家らが望んだよりもハト派寄りのトーン」に感じられると指摘。ドル売り・円買いのポジションを取っている投機家は「広範なドル安への依存をますます強め、ドルを売るには他の通貨ペアの方が望ましいと判断する可能性がある」と述べた。
原油
ニューヨーク原油先物相場は4日ぶりに上昇。米株式相場の上昇に加え、トランプ大統領によるイラン産原油購入者への追加制裁の警告を受けて、買いが入った。
トランプ氏はイラン産原油もしくは石油製品を購入する国や個人は、その量にかかわらず、直ちに二次的な制裁の対象になると述べた。
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ただ、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」が4月に予想より大幅な増産で合意して以降、原油相場は下落基調にある。ガイアナを含む他の産油国も供給を拡大している。
前日のロイター報道によれば、サウジアラビア当局は同盟国に対し、低価格が長期間続いても同国は耐えられると伝えた。この報道により、サウジがOPECプラスを主導し、5月5日の会合で再び増産に踏み切るのではないかとの思惑が一段と強まった。
ラボバンクのグローバル・エネルギー・ストラテジスト、ジョー・デローラ氏は「ここ数日は売られ過ぎていた。来週のサウジによる大量供給を巡っては、臆測が多々ある」と指摘。「トレーダーはいったん様子を見て、週末とOPEC会合を前にリスクを少し減らしている」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物6月限は前日比1.03ドル(1.8%)高の1バレル=59.24ドルで終えた。ロンドンICEの北海ブレント7月限は1.07ドル高の62.13ドルで終了。
金
金相場は3日続落。2週間ぶりの安値を付けた。米国の通商交渉が進展している兆候が売りを誘った。景気減速への懸念がある中でも、安全資産としての需要はやや後退した。
ハセット国家経済会議(NEC)委員長が関税協議が進展していると述べ、「この日のうちに何らかのニュースがあると確信している」と話したため、ウォール街の市場心理が改善し、金価格は一時2.6%下落した。
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それでも金スポットは年初来で22%上昇しており、先週には3500ドルを超え、過去最高を更新した。トランプ政権の二転三転する貿易政策で市場が混乱した上、世界的な景気減速への懸念から金に避難する動きが強まった。中国での投機的な需要や各国中銀による買いも相場を支えている。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時52分現在、前日比63.50ドル(1.9%)安の1オンス=3225.21ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は、96.90ドル(2.9%)安の3222.20ドルで引けた。
原題:S&P 500 Gains for Eighth Day Before Apple Results: Markets Wrap(抜粋)
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