ゼレンスキー氏、領土問題が和平交渉で「最も困難」 米特使はプーチン氏と会談へ
画像提供, EPA
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は1日、ロシアとの戦争を終結させるための和平交渉に関して、ウクライナにとっての優先事項は主権の維持と、安全の強力な保証を確保することだと述べた。また、「領土問題が最も難しい」とし、ロシアがウクライナに放棄を求めている東部ドンバス地方は決して手放さないと主張した。こうした中、和平案を提示しているアメリカの特使は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領との会談のためロシアへ向かった。
ゼレンスキー氏はこの日、パリでエマニュエル・マクロン仏大統領と会談した。イギリス、ドイツ、ポーランド、イタリアなどの欧州各国の首脳らも電話で協議に加った。終了後、ゼレンスキー氏は、領土についての考えを示した。
マクロン氏は1日にゼレンスキー氏と行った共同記者会見で、現時点では「話すべき最終的な和平案はない」と述べた。また、そうした案は、ウクライナとヨーロッパの意見を取り入れて初めてまとめられるものだと主張した。
マクロン氏はさらに、領土問題を「最終決定できるのはゼレンスキー大統領だけ」だと述べた。また、ロシアの凍結資産、ウクライナの安全の保証やEU加盟などの諸問題には、欧州各国の関与が必要だと主張した。
マクロン氏は他方、紛争終結に向けたトランプ米政権の努力を称賛した上で、「いま私たちはロシアの答えを待っている。戦いをやめ、和平を結ぶ準備ができているのか? ロシアはこれまで3、4回、ノーと言っている」、「だから、ロシアは急いでいないようだ」と話した。
一方、米フロリダ州では同日、ウクライナとアメリカの交渉担当者らが、2日間にわたる会合を終えた。会合では、ロシアに有利と評される和平案の修正に取り組んだ。
ホワイトハウスは1日、この協議を前向きに評価。キャロライン・レヴィット報道官は、戦争終結に向けた合意の成立について「非常に楽観的に感じている」と述べた。
だが、ゼレンスキー氏は慎重な姿勢を示している。フィンランドのアレクサンデル・ストゥブ大統領とも電話で話したと書いたソーシャルメディア「X」への投稿では、協議は「非常に建設的」だったものの、「まだ解決すべき難しい問題」がいくつかあるとした。
フロリダ州での協議に参加したスティーヴ・ウィトコフ米特使は、2日にロシアのプーチン大統領と会談する。この会談には、ドナルド・トランプ米大統領の娘婿で顧問のジャレッド・クシュナー氏も同席する。
ウィトコフ氏は、ゼレンスキー氏、マクロン氏、ウクライナのルステム・ウメロフ首席交渉官、イギリスのキア・スターマー首相らと話し合っており、その結果をプーチン氏に伝えるとみられる。
プーチン氏は先週、和平案の草案がアメリカからロシアに提示されたとし、戦争終結の合意の「基礎」になり得ると述べた。
11月に公表された、米ロ間でまとめた最初の和平案は、ウクライナと欧州各国を慌てさせた。ロシアの要求に大きく傾いていたばかりでなく、欧州金融機関で凍結されている数十億ドル相当のロシア資産の投資や、ウクライナの欧州連合(EU)市場への参加の条件についても指示する内容だった。
米ロの和平案が流出して以来、欧州各国の指導者らは、自分たちも交渉テーブルに着こうと奔走している。アメリカに対し、今後の和平案作成には自分たちも参加させるよう求めている。
ロシアはこの1年間、戦争の終結や停止に向けたアメリカの取り組みに関わっているように見える。ただ、ロシアの要求のいくつかは、ウクライナの主権と直接衝突するため、受け入れられないという姿勢をウクライナ政府は示している。
領土問題は大きな対立点だが、ウクライナにとっては安全の保証も争点となっている。ウクライナとヨーロッパの支援国は、ウクライナが再び攻撃されないよう、北大西洋条約機構(NATO)加盟などの形で、将来的な安全の保証をウクライナが得ることを強く望んでいる。
しかし、ロシアはこれに猛反対している。トランプ氏も、ウクライナのNATO加盟はないとしている。
画像提供, EPA/Shutterstock
現在の紛争は、ロシアによる2014年のクリミア不法併合に始まり、2022年2月のウクライナ全面侵攻開始へと至ったもの。ここへきてさまざまな交渉が続く一方で、戦争は続いている。
1日朝にはウクライナ東部の都市ドニプロで、ロシアによるミサイル攻撃があった。当局は、4人が殺され、40人が負傷したと発表した。
未確認の一部報道では、この攻撃で弾道ミサイルが使用されたとされる。
インターネットで公開された動画では、高速道路の脇で大きな爆発が起きている。現地メディアは、オフィス街や自動車、商店などが大きな被害を受けるなどしたと報じている。
ゼレンスキー氏はパリで、「私たちは全力でこの戦争を終わらせ、威厳のある形でこの戦争を終わらせようとしている」、「ロシアは自分が始めたこの戦争を終わらせなくてはならない。これはロシアの戦争であって、終わらせるのはロシア次第だ」と述べた。
トランプ氏は30日、大統領専用機での記者団とのやり取りの中で、ウクライナには「いくつかの難しい小さな問題」があると述べ、汚職スキャンダルに言及した。また、ロシアとウクライナの双方が戦争終結を求めているとの見解を改めて示した。