中国のロボットが106kmを歩いてギネス世界記録を達成

Image: Guinness World Records Limited

頑張って歩いた! でもどれくらいの自律性で?

中国のロボティクス企業AgiBotが、ヒト型ロボットの連続歩行距離の最長記録を更新しました。AgiBotの「A2」は11月10日から13日の間に10万6286kmを歩行。見事ギネス世界記録と認定されました。

中国の国営系メディアは、ロボットが中国江蘇省の金鶏湖から上海の外灘ウォーターフロント地区まで徒歩移動したと伝えています。ロボット歩行中、一度も電源を落とすことなく、バッテリー交換中も動作し続けていたとのことです。

都市環境を自力で?

YouTubeに投稿された動画では、歩行の様子がかなり編集されているため、操作していた人間がどのようにモニタリングしていたかはわかりません。しかし、仮に人によるサポートがなにかしらあったとしても、都市環境で徒歩移動する際に想定される状況(さまざまな地面の形状、夜間の視界不良、傾斜など)をロボットが経験したと国営メディアは伝えています。

Video: AGIBOT / YouTube

自律性の範囲は不明

ロボットは信号を守って歩行しましたが、どの程度の自律性を持って動いていたかは明らかにはなっていません。AgiBotは国営メディアに、「ロボットにはデュアルGPSモジュールに加えて、内蔵のLiDARと赤外線深度カメラが搭載されているため、変化する光や複雑な都市環境にも正確に対応してナビゲーションできる能力を備えている」と説明しています。

ということは、ロボットが完全自律だったということなのでしょうか。ギネス世界記録でも「自律(autonomous)」という言葉が使われていんですよね。

AgiBotのパートナーで上級副社長であるWang Chuang氏は、国営メディアに

蘇州から上海まで歩くことは人間にとってはとても難しいことですが、このロボットはそれを成し遂げたのです。

と語っています。

ロボットのデモンストレーションにおいて、自律性がどれくらいあるのかという点は議論になるところです。イーロン・マスクのOptimusロボットは、実際持っている能力よりも高度な自律性を持つような言い振りをイーロンがしてきたため、多く批判されています。

自律ロボットを巡る過大表現

たとえばイーロンは2024年1月、Optimusがシャツを折りたたんでいる動画を投稿。この作業はロボットが自律的におこなうのが難しいとされる動きだったんです。でも実際には、画面のすぐ外側にいた人物が遠隔操作していたことが判明。その人の手が動画画面の端に映り込んでいたことから発覚しました。

Gif: Tesla / Gizmodo US

2024年10月にも、ロサンゼルスでのサイバーキャブのイベントで、Optimusがビールを注ぐデモがお披露目されましたが、こちらもシャツのときと同様、遠隔操作で動かしていただけでした。

AgiBotのA2ロボットが自律的に106kmを歩き通したという可能性は、十分にあります。技術はそこまで進歩していますし、長持ちするバッテリーはやはり大きな課題ではありますが、できないわけではありません。ただ、ロボット競争の世界では、イーロンのように盛って言っていることも多いので懐疑的になって見極めたほうがよさそうです。

これまで長い間、人間のように意志を持って動くロボットが出てくると言われつつもなかなか実現していません。出てきたと思ったら、Optimusの初公開のときのようにロボットの着ぐるみを着た人間だったりしますからね…。

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