イランが原油出荷急ぐ様子、衛星画像で裏付け-イスラエルの攻撃受け
イランは同国産原油の出荷を急いで進めている。米国がイスラエルによるイラン攻撃に加わる可能性を検討する中で、同国が異例の物流措置を講じている様子がうかがわれる。
イランは港湾から石油タンカーへの積載を急ぎ、出荷の混乱が生じた場合でもしばらくは原油収入を確保できるよう努めている。なお、出荷急増にもかかわらず、同国沖ペルシャ湾のカーグ島にある重要な輸出ターミナルでは貯蔵タンクが原油で満杯となっている。
イスラエルはイランの核施設や軍事拠点、エネルギーインフラを攻撃しており、同国やペルシャ湾岸地域の他の産油国からの原油出荷にどのような影響が生じるか把握しようと、トレーダーや投資家は利用可能なあらゆるデータを精査している。イランの動静を知るには、衛星データが少なくとも部分的な手掛かりとなる。
貯蔵タンク
カーグ島の原油貯蔵施設には、液面の上下に応じて浮き沈みする浮き屋根が採用されており、その影の様子を上空から観察することで、タンク内の原油量をある程度把握することができる。今月11日に撮影された画像では、大型タンクのほとんどで屋根がタンクの壁の上端よりもかなり下に位置していた。これらの貯蔵タンクは一部しか満たされていなかったということだ。
イスラエルによる攻撃開始から数日後の18日の画像では、そうした影が全く見られず、屋根がタンクの壁の上端まで達していることが分かる。貯蔵タンクは満杯になっているということだ。
また、タンク横の地面の影は確認されており、屋根の影が見られないのは日照不足によるものではないことも明らかだ。これらの画像はいずれも、現地時間で午後2時40分ごろ、10分も差がない時間帯にほぼ同じセンサー角度で撮影された。
衛星画像を用いてイランなどの秘密裏の原油取引を監視する企業、タンカートラッカーズ・ドット・コムの共同創業者サミール・マダニ氏も「島での原油在庫の増加を確認した」と述べた。
イランが輸出を加速させている点を踏まえれば、こうした状況は本来予想されるものではない。
輸出量が通常を大きく上回っているのであれば、イランがさらに多くの原油をこの施設に振り向けていない限り、貯蔵タンクの中身は減っていくはずだ。このことから、イランは今のうちにできるだけ多くの原油を世界市場に送り出そうとしていると推測できる。
S&Pグローバル・コモディティー・インサイツが2024年に発表したリポートによれば、イランはカーグ島に約2800万バレルの原油を貯蔵できる。先月には100万バレル規模のタンク2基の改修工事が完了したが、これらが早い段階の貯蔵能力に含まれているかどうかは不明だ。
輸出の流れ
マダニ氏によると、イスラエルが13日にイランへの攻撃を開始して以降、同国の原油輸出は急増している。
タンカートラッカーズのデータでは、13日に攻撃が始まって以降の5日間で、イランの原油輸出は日量平均233万バレルに達した。これは14日までの年初来平均と比べ44%の増加となる。
マダニ氏はイランの動向について、「彼らが何をしているのかは非常に明白だ」とし、「できる限り多くの原油を出荷しようとしているが、安全を最優先にしている」と指摘した。
カーグ島では原油が密集した貯蔵タンクに保管されており、ペルシャ湾全体に点在する船舶や中国に向かう輸送中の貨物よりも攻撃に対し脆弱(ぜいじゃく)だ。
タンカーの分散配置
イランの物流対応を示すもう一つの兆候として、船舶はカーグ島からできる限り距離を置いて待機し、積載の直前になってから急いでターミナルに接近し、接岸時間を最小限に抑えていることが分かる。
イスラエルによる攻撃前に撮影された人工衛星画像サービス会社プラネット・ラボの画像には、カーグ島とイラン本土の間にある穏やかな海域に停泊するタンカーが映っている。これらの多くは約200万バレルの積載能力を持つ超大型原油タンカー(VLCC)だ。過去の画像と比較すると、そこに停泊している船舶の数は通常の範囲内に収まっていることが確認できる。
イスラエルによる攻撃開始から4日後に撮影された2枚目の画像では、全ての船舶が分散しており、カーグ島近くの停泊地点には1隻も残っていなかった。
これらの写真は視認性を高めるために、停泊地の中心部のみを示しており、島からさらに離れた場所に停泊しているタンカーは含まれていない。
イランは昨年10月にイスラエルの攻撃を受けた際にも、待機中のタンカーを分散させるという同様の戦略を採っていた。当時も輸出は途切れることなく継続されていた。
原題:Iran Imagery Shows Race to Get Its Oil Out Into the World(抜粋)