羽田空港ビル利益供与疑惑、自民元幹事長長男経営のコンサルが申告漏れ9000万円…空港ビル側も所得隠し
羽田空港ターミナルビルのマッサージチェア(MC)事業を巡る利益供与疑惑で、東京都内のコンサルティング会社が、「日本空港ビルデング」(東京)側から受領していた業務委託費などを税務申告していなかったことが関係者の話でわかった。コンサル会社は2019年2月期までの5年間に、こうした所得を含む計約9000万円の申告漏れを東京国税局から指摘されたという。(加藤哲大、駒崎雄大)
指摘を受けたのは、古賀誠・元自民党幹事長(84)の長男(52)が営む「アネスト」。これまでに、委託費を支払っていた空港ビル社の100%子会社「ビッグウイング」(東京)による所得隠しも明らかになっており、疑惑に関わる双方がMC事業を巡り、税務上の問題を指摘されていたことになる。
同国税局はアネストに対し、無申告加算税や過少申告加算税を含め、法人税など計約4000万円を追徴課税したとみられる。読売新聞はアネスト側に文書で取材を申し込んだが、回答はなかった。
ビッグ社はアネストに対し、空港内でMCを設置・管理する事業の業務委託費として、16年までの5年間に約1億円を支払っていた。同国税局は同年頃に実施した税務調査で、実際の業務は健康機器販売会社(埼玉)がほぼ全て担っていたと判断し、アネストにはMC業務の実態がないと認定した。
その上で同国税局は、この約1億円について所得隠しを指摘。経費にはあたらない「寄付」と認定したとみられる。だが、その後も販売会社経由で「手数料」として利益供与が続き、総額は20年までの約10年間で2億円近くに上る疑いがある。
関係者によると、アネストへの税務調査は19年頃に行われ、ビッグ社からの業務委託費や販売会社からの手数料などの収入があったにもかかわらず、税務申告していなかったことが判明したという。
アネストは24年頃にも再び税務調査を受け、23年2月期までの4年間で数千万円の所得隠しを指摘された。取引先にアネストとは別会社の名義の口座に入金させて売り上げを除外していたとして、仮装・ 隠蔽(いんぺい) を伴う悪質な所得隠しと認定されたという。今回のMC事業とは別の所得が対象になったとみられる。
販売会社元幹部の証言などによると、羽田空港でのMC事業は05年頃、一度は空港ビル社側から販売会社の参入に難色を示されたが、当時は衆院議員だった古賀氏側を通じて知り合った長男とともに再交渉。その後、アネストの下請けに入る形でまとまった。
それ以降、アネストは実際のMC業務をほぼ行っていなかったにもかかわらず、売り上げの3~4割を受け取っていたという。
20年末に販売会社が事業から撤退し、他のMC会社が参入した後も、空港ビル社側はアネストへの利益供与が続くように調整。空港ビル社の横田信秋社長兼COO(最高執行責任者)(73)がMC会社幹部と面会し、「これまでのお付き合いがある」などと利益供与への同意を求めていたことも分かっている。
ビル社 内部調査結果 今月上旬にも
空港ビル社はMC事業を巡る利益供与疑惑について、社外取締役でつくる監査等委員会を主体に内部調査を進めており、今月上旬にも調査結果が公表される見通しだ。
関係者によると、空港ビル社の調査には大手法律事務所も参加。MC事業について、契約相手の選定や取引の中で不適切な行為がなかったかどうかを調べている。担当者らへの聞き取りや資料分析のほか、パソコンや携帯電話を使ったやり取りについても調査し、消去された電子データを復元する「デジタル・フォレンジック」も行われているという。
空港ビル社側の不適切な行為が認められた場合、調査報告書には問題の原因分析とともに、再発防止策の提言も盛り込まれる可能性が高い。
空港ビル社は読売新聞の取材に対し「調査のプロセスについては、現時点ではお答えを差し控える」としている。中野国土交通相は先月の衆院国土交通委員会で「内部調査の結果を踏まえ、必要な対応を検討する」と述べている。