高評価だけど要注意な「R指定」実写化映画「奇跡のモザイクなし演出」「ガチ中学生？」

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令和になっても、映画館では何本も「R指定」の作品が公開されています。なかには、青年向けマンガの実写化でかなりの攻めた描写を盛り込み、なおかつ高い評価を受けた作品もありました。

　コンプライアンスが厳しい令和の世になっても、年齢制限を設けてかなり過激な方向に振り切った映画は毎年多数作られています。長年映像化されていなかった衝撃マンガが実写化され、ファンも驚きつつ高く評価された作品もありました。

　浅野いにお先生の『うみべの女の子』は、中学生同士の性愛描写含めたこじれたラブストーリーで、当然映像化は不可能と思いきや、2021年にまさかのR15+指定で実写映画化されています。

　海辺の田舎町に住む中学生の少女「佐藤小梅」は憧れの先輩にひどい振られ方をしてやけくそになり、自分に好意を持つ男子の「磯辺恵介」と恋愛感情はないまま肉体関係を持つようになります。原作に忠実な濡れ場の数々が再現されたほか、磯部への複雑な思いを募らせていく小梅と、次第に彼女から心が離れていく磯部の姿も、切なく生々しく描かれました。　

　小梅役の石川瑠華さん（撮影当時22歳）と、青木柚さん（当時19歳）は、浅野先生も参加したオーディションで選ばれ、身体を張った場面だけでなく、各々の思春期の心の闇も繊細に表現しています。「石川さんも青木さんもガチ中学生に見えるくらいあどけないけど、言うても大人の俳優らしく中学生→高校生への変化も上手かった」「情緒不安定な中二病具合を演技しきる俳優たちすげぇ」「若さゆえに何が正解なのかも分からない感じで、ほんとに身勝手な小梅の演技にムカつく（いい意味で）」と演技面が特に高く評価されました。

　そのほか、2024年11月に公開された『雨の中の慾情』（R15+）は、『ねじ式』『無能の人』などで知られるつげ義春先生が1981年に絵コンテのまま発表した同題の短編をもとに、つげ先生のほかの短編『夏の思い出』『隣の女』『池袋百点会』の要素も付け加えた内容です。そして、映画オリジナルのどんでん返しからのさらなる衝撃展開も描かれました。

　監督はデビュー作『岬の兄妹』と次作『さがす』や、Disney+の食人ホラーのドラマ『ガンニバル』（原作：二宮正明）も高い評価を受けた片山慎三さんです。

　主人公の漫画家「義男（演：成田凌）」は、冒頭で不思議な夢を見ます。彼は激しい雷雨のなか田んぼ近くのバス停に逃げ込み、先にいた女性（演：中西柚貴）に「金物を身に着けていると危ない」と言って最終的に彼女の服をほぼ脱がせ、土砂降りの田んぼのなかで行為に及ぶという衝撃シーンが描かれました。

　その夢の場面の後も、異国情緒漂う街を舞台に義男の知人「伊守（演：森田剛）」と未亡人「福子（演：中村映里子）」との奇妙な三角関係が描かれ、さらに「子供のつむじに注射針を刺して薬になる液体を抽出する仕事」など、とても現実とは思えない不思議な描写が次々出てきます。

　本作は義男が見ている世界はいったい何なのか、なぜ「欲情」していたのか、という種明かしが中盤にあった後も衝撃的な展開が続き、最後は切ない余韻を残す作品です。

「つげ義春が描く『夢』の生々しくもふわふわした雰囲気を見事に再現してる」「開始5分くらいで成田凌の〇〇が田んぼに入るシーンで吹いてしまったけど、それを後悔するほどの切ないどんでん返しが……」と、公開から絶賛と衝撃を受けたレビューが相次いでいます。

　そのほか、長年ピンク映画の世界でキャリアを積み、近年は一般映画でも高評価の作品を連発している城定秀夫さんは、マンガの実写化映画でもいくつも話題作を手掛けています。特に2020年の『性の劇薬』（原作：水田ゆき）は、R18+の指定を受けて公開され、センセーショナルな話題を呼んだだけでなく高い評価を受けました。

　作中では、人生に行き詰まり飛び降り自殺しようとしたエリートサラリーマン「桂木（演：渡邊将）」が、謎の人物「余田（演：北代高士）」に助けられるも監禁されてしまう物語が描かれます。余田は「生きてることを実感させてやるよ」と、彼を徹底的に「調教」するのです。　

　過激な内容ですが、「『性』によって『生』の意味を見つける再生の物語」と銘打たれていた通り、最終的には感動を味わえる作品で「前半はホラー映画さながらの映像なのに対して、後半は全く別の映画のようで泣ける」「お互いのトラウマを克服していく内容で生と死を考えさせられた」と、刺さる人には刺さる作品として支持されています。

　また、実写『性の劇薬』は男性同士の激しい性愛描写を描きつつ、各シーンの「局部」の部分は小道具やカメラワークの工夫で隠し、モザイクは使われておらず、城定監督の長年のキャリアが活きた見事な演出となりました。