国会閉会と高市首相 独りよがりが分断深めた
特別国会が閉会した。あらわになったのは、立法府の危機的状況である。巨大与党を率いる高市早苗首相は独善的な振る舞いに終始し、審議の形骸化が進んだ。
異例ずくめの展開だった。通常国会冒頭で首相が唐突に衆院を解散した結果、自民党は戦後初めて単独で衆院の3分の2を超える圧勝を収めた。
Advertisement首相は就任時の少数与党状況を覆し、強固な政治基盤を得た。積極財政をはじめ「国論を二分する政策」の具体化へ突き進んだ。
衆院解散により、当初予算の審議入りは約1カ月遅れた。それでも首相が年度内成立を主張したため、自民は強引な議事運営を連発し、2000年以降で最短となる審議時間で衆院を通過させた。中東危機に対応する補正予算も異例のスピード成立となった。
いずれも目先の物価高対策としてのバラマキ色が濃い。財政運営は借金頼みの様相を一段と強めることとなった。
「数の力」で審議形骸化
首相は肝いりの戦略17分野に巨費を投じ、経済成長を実現する構想を描く。しかし、過去の成長戦略の失敗に対する総括はなおざりだ。問題の多い消費税減税にもこだわる。
財政悪化への警戒感から長期金利が上昇した。円安も加速し、物価高に追い打ちをかける。国際法を無視した米国のイラン攻撃は原油高騰を招いたが、首相はトランプ大統領にすり寄るだけだった。
国民生活は上向かず、将来不安が増す。だが首相は、そうした懸念にどう応えるかを正面から議論しようとしなかった。
後半国会では、日本維新の会との連立合意に盛り込まれた政策の実現に固執した。看過できないのは、国のあり方を左右しかねない施策であるにもかかわらず、幅広い合意形成を怠ったことだ。
衆参両院の「総意」を逸脱する形で皇室典範を改正した。当面の皇族数確保策にとどまらず、自民が主張してきた皇統の男系維持にも踏み込んだ。
議会政治の根幹を成す選挙制度改革では、衆院議員定数の「比例代表のみ削減」をごり押しした。中小政党に不利な内容で、野党の猛反発を受けて頓挫した。
「不要不急」の法案提出も目立った。国旗損壊処罰法は表現の自由などを侵害しかねず、裁判で違憲性が問われる公算が大きい。副首都法は、維新の地盤である大阪への利益誘導を疑われたが、国会会期を延長してまで成立させた。
国民感覚とはかけ離れており、明らかに政策の優先順位を見誤っている。「二分」させた国論を統合する努力も欠いたまま、独りよがりな政権運営に陥れば分断を深めるばかりだ。
首相の露骨な国会軽視は、禍根を残しかねない。予算委員会の集中審議への出席は異例の少なさだった。中傷動画問題では、自身の秘書の陳述書を提出することで答弁を回避しようとした。
「国会に呼ばれれば誠実に答弁する」と繰り返した。そうであるならば、自民総裁として、自身の答弁機会を増やすよう党側に指示すべきだったが、「国会で決めること」と責任転嫁した。
言論の府の立て直しを
国会が本来求められた役割を果たせたとは到底言えない。高支持率を誇った首相の勢いに押され、与野党論戦は低調に推移した。暮らしの課題を解決する具体策や、持続可能な国づくりの方向性を示せなかった。
自民は首相に追従し、国民政党としての自律性を欠いた。細分化した野党は対立軸を打ち出せず、監視機能も発揮できなかった。中道改革連合は萎縮して迷走し、国民民主党などは個別政策での「手柄争い」に注力した。
与党が圧倒する衆院に対し、与野党が拮抗(きっこう)する参院が政権の「暴走」に一定の歯止めをかけたことは確かだ。国会終盤には全野党が結束する場面もあった。ただ、いずれも限定的だった。
言論の府の立て直しは急務である。政府は説明責任を果たそうとせず、各党の政策論争が深まっていない。これでは、内外の懸案を解決する道筋を見いだすことなどできない。根深い政治不信を払拭(ふっしょく)することもかなうまい。
高市内閣の支持率は下降し、有権者の期待が剥落しつつある。数の力を振りかざす強権的手法は通用しない。首相は猛省し、多様な声に耳を傾けるべきだ。そうでなければ人々の心はさらに離れる。