国会閉会と高市首相 独りよがりが分断深めた

2026年度補正予算案が衆院本会議で可決されたことを受け、自民党控室で迎えられる高市早苗首相(左)=国会内で2026年6月4日午後7時17分、平田明浩撮影

 特別国会が閉会した。あらわになったのは、立法府の危機的状況である。巨大与党を率いる高市早苗首相は独善的な振る舞いに終始し、審議の形骸化が進んだ。

 異例ずくめの展開だった。通常国会冒頭で首相が唐突に衆院を解散した結果、自民党は戦後初めて単独で衆院の3分の2を超える圧勝を収めた。

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 首相は就任時の少数与党状況を覆し、強固な政治基盤を得た。積極財政をはじめ「国論を二分する政策」の具体化へ突き進んだ。

 衆院解散により、当初予算の審議入りは約1カ月遅れた。それでも首相が年度内成立を主張したため、自民は強引な議事運営を連発し、2000年以降で最短となる審議時間で衆院を通過させた。中東危機に対応する補正予算も異例のスピード成立となった。

 いずれも目先の物価高対策としてのバラマキ色が濃い。財政運営は借金頼みの様相を一段と強めることとなった。

「数の力」で審議形骸化

衆院予算委員会で「サナエトークン」などに関する中道改革連合・後藤祐一氏の質問に答弁する高市早苗首相(左)。右は答弁内容をめぐり坂本哲志委員長に詰め寄る中道改革連合の長妻昭野党筆頭幹事。この日の答弁を機に国会は空転した=国会内で2026年6月22日午前10時27分、平田明浩撮影

 首相は肝いりの戦略17分野に巨費を投じ、経済成長を実現する構想を描く。しかし、過去の成長戦略の失敗に対する総括はなおざりだ。問題の多い消費税減税にもこだわる。

 財政悪化への警戒感から長期金利が上昇した。円安も加速し、物価高に追い打ちをかける。国際法を無視した米国のイラン攻撃は原油高騰を招いたが、首相はトランプ大統領にすり寄るだけだった。

 国民生活は上向かず、将来不安が増す。だが首相は、そうした懸念にどう応えるかを正面から議論しようとしなかった。

 後半国会では、日本維新の会との連立合意に盛り込まれた政策の実現に固執した。看過できないのは、国のあり方を左右しかねない施策であるにもかかわらず、幅広い合意形成を怠ったことだ。

国会が不正常化する中、野党議員席(手前)が空席のまま、賛成多数で国旗損壊処罰法案を可決した衆院本会議=国会内で2026年6月30日午後1時10分、平田明浩撮影

 衆参両院の「総意」を逸脱する形で皇室典範を改正した。当面の皇族数確保策にとどまらず、自民が主張してきた皇統の男系維持にも踏み込んだ。

 議会政治の根幹を成す選挙制度改革では、衆院議員定数の「比例代表のみ削減」をごり押しした。中小政党に不利な内容で、野党の猛反発を受けて頓挫した。

 「不要不急」の法案提出も目立った。国旗損壊処罰法は表現の自由などを侵害しかねず、裁判で違憲性が問われる公算が大きい。副首都法は、維新の地盤である大阪への利益誘導を疑われたが、国会会期を延長してまで成立させた。

 国民感覚とはかけ離れており、明らかに政策の優先順位を見誤っている。「二分」させた国論を統合する努力も欠いたまま、独りよがりな政権運営に陥れば分断を深めるばかりだ。

 首相の露骨な国会軽視は、禍根を残しかねない。予算委員会の集中審議への出席は異例の少なさだった。中傷動画問題では、自身の秘書の陳述書を提出することで答弁を回避しようとした。

 「国会に呼ばれれば誠実に答弁する」と繰り返した。そうであるならば、自民総裁として、自身の答弁機会を増やすよう党側に指示すべきだったが、「国会で決めること」と責任転嫁した。

言論の府の立て直しを

特別国会中、高市政権への抗議デモも頻繁に行われた=国会前で2026年7月10日午後7時9分、後藤由耶撮影

 国会が本来求められた役割を果たせたとは到底言えない。高支持率を誇った首相の勢いに押され、与野党論戦は低調に推移した。暮らしの課題を解決する具体策や、持続可能な国づくりの方向性を示せなかった。

 自民は首相に追従し、国民政党としての自律性を欠いた。細分化した野党は対立軸を打ち出せず、監視機能も発揮できなかった。中道改革連合は萎縮して迷走し、国民民主党などは個別政策での「手柄争い」に注力した。

 与党が圧倒する衆院に対し、与野党が拮抗(きっこう)する参院が政権の「暴走」に一定の歯止めをかけたことは確かだ。国会終盤には全野党が結束する場面もあった。ただ、いずれも限定的だった。

 言論の府の立て直しは急務である。政府は説明責任を果たそうとせず、各党の政策論争が深まっていない。これでは、内外の懸案を解決する道筋を見いだすことなどできない。根深い政治不信を払拭(ふっしょく)することもかなうまい。

 高市内閣の支持率は下降し、有権者の期待が剥落しつつある。数の力を振りかざす強権的手法は通用しない。首相は猛省し、多様な声に耳を傾けるべきだ。そうでなければ人々の心はさらに離れる。

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