タレコミ|広尾晃「野球のことを中心に、そのほかの話題も」
首をかしげたくなる「タレコミ」
確かに今回の2人の教員が行ったことは、県教委の規則に違反していた。軽率のそしりはまぬかれないだろう。しかし、教員が生徒を家や学校に送っていくことは、教員の車での通勤が当たり前の地域では、普通にあるのではないか。下校時間が遅くなったとか、荷物が多いとか、いろいろな事情があろう。教員は生徒の「安全」に対して責任があるから、場合によってはマイカーに乗せることもある。しかしそれは厳密に言えば「ルール違反」になる。所属長の許可を得なかったということかもしれないが「形式的」な話だ。「タレコミ」にも「正当性」ありとなるのだろうが、特に高校部活周辺には、首をかしげたくなるような「タレコミ」が、たくさんあるのも事実だ。
網にかかった指導者
ある県立の野球強豪校で、野球部の練習を見学に来た地元中学生に、指導者が、たまたま車の中にあった、甲子園出場記念のフラッグをプレゼントした。その中学生の指導者とも面識があったこともあり、親近感を抱いたのだが、このことが県高野連に通報され、中学生と私的に接触することを禁じた「中学生との接触ルール」違反となり、指導者は2年間の謹慎処分になった。通報者は、同じ県の私学強豪校の指導者にこれを「タレコミ」して、そこから県高野連に伝わったという。暴力をふるった指導者は数か月で復帰を認め、中学生と接触ルールに違反した指導者には、無期や年単位の謹慎処分になる。学生野球協会審査室の“処罰規定”がおかしいとしか言いようがないが、この事件など、ライバル校の足を引っ張ろうと網を張っていた私学指導者に格好の「タレコミ情報」が入ったとみることもできるだろう。
関係者が会場に来ているんだよ
毎年、年末に大学もちまわりで開催される日本野球学会には「ポスター発表」と言う部門がある。模造紙1枚程度のボリュームで、各研究者が研究発表するものだ。一般の研究者だけでなく、高校生の部門もあり、毎年高校野球部が研究発表をしている。近年は発表校が増加して、野球学会側は新たな対応を検討している。この日本野球学会には、プロ野球関係者も多数来場する。ポスター発表の会場では各高校生が待ち受けて、来場者に説明する。プロ球団に在籍する関係者に高校生が説明をするのは「プロアマ規定」に抵触するのではないか?関係者によると「グレーゾーンだ」という。会場で「これ、はっきりさせないと、後々ややこしい問題になるよね」と知人と話していると、隣にいた知らない人が「それを調べてタレコミするために、地方高野連の関係者が会場に来ているんだよ」と話した。高校野球部の部員たちが「データ野球について」「選手のコンディションについて」「野球人口の減少について」「マネージャーの仕事について」など様々なテーマで発表することは、誠に健全なことだと思うが、プロ野球関係者に高校生がその内容を説明すれば、「プロアマ規定」に引っかかる可能性がある。その証拠を押さえるために地方高野連が来ているというのだ。なんという陰湿なことかと思う。そういえば、野球学会に毎年顔を出す現楽天監督の吉井理人さんや、桑田真澄さん、仁志敏久さんなどが、ポスター発表の会場に来たのを見たことはない。用心しているのかもしれない。
2025日本野球学会の高校生発表「権威」の名を借りて捻りつぶす
「高野連」で書いた通り、日本高野連は前向きな方向に進んでいるとは思う。しかし一方で、旧来の高校野球の因習の中で、足の引っ張り合いをするつまらない関係者もたくさんいるのだ。「タレコミ」をする人には、正義感や高校野球を良くしたいという純粋な気持ちでそうした人もいるだろう。しかしそれ以上に「新しいことをする者」「自分たちにとって目障りなことをする者」を、高野連と言う「権威」の名を借りて捻りつぶそうという邪悪な意志を持った人間もいるのだ。高校野球には、こうした陰湿な一面もあることを忘れてはならない。