健康的な食事と運動の組み合せが糖尿病リスクを劇的に減らす 糖尿病の遺伝リスクのある人も予防効果が

 健康的な食事と運動の習慣化を組み合せることで、大きな予防効果を得られることが、新しい研究で明らかになった。研究成果は「Scientific Reports」に発表された。

 健康的な食事と運動による相乗効果は、2型糖尿病や肥満症などの代謝性炎症や心臓病などに対するもっとも強い予防効果をもたらすとしている。

 逆に、食事が乱れていて、運動不足の人は、内臓脂肪が多く、炎症のリスクが高い傾向があることも示された。

 研究は、フィンランドのユヴァスキュラ大学によるもの。研究グループは、閉経を迎えたフィンランドの51~59歳の女性494人を対象に調査を行った。

内臓脂肪を減らせば糖尿病や合併症のリスクを下げられる

 胃や腸などのまわりについた内臓脂肪は、炎症を引き起こす体に悪いサイトカインを分泌し、これが糖尿病などの代謝性疾患のリスクを高めている。

 健康的な食事と運動習慣は、どちらも内臓脂肪の減少に役立ち、2つを組み合せることで、その効果を相乗的に高められる。

 「食事や睡眠を改善し、運動を習慣として行うことで、内臓脂肪の蓄積を防ぐことができます。内臓脂肪を減らすことで、代謝性疾患や心血管疾患のリスクを軽減できることができます」と、同大学スポーツ健康科学部のハンナマリ ランキラ氏は言う。

 「食事と運動のどちらかが欠けると、効果は薄まります。食事が健康的な人でも、運動不足であると、その保護効果は小さくなることなども示されました」としている。

 とくに女性は、平均して人生の3分の1以上を更年期以降に生きるため、更年期は重要な時期だ。この時期には、代謝性疾患や心血管疾患のリスクが大幅に上昇するという。

 「有害な内臓脂肪の蓄積を減らせば、それによって引き起こされる病気を予防できる可能性は高まります」と、ランキラ氏は指摘している。

遺伝的リスクが高い人も糖尿病リスクを減らせる

 食事や運動などの生活スタイルを見直すことで、2型糖尿病の遺伝的リスクが高い人も、糖尿病のリスクを大幅に減らし、健康に生きられることは、フィンランドの別の研究でも明らかになっている。

 食事ガイドラインで推奨されている健康的な食事をして、運動に取り組むことで、血糖値が改善し、2型糖尿病のリスクが低下することが示された。研究成果は「Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」に発表された。

 「ライフスタイルを変えることで、遺伝的リスクに関係なく、誰もが恩恵を受けられることが示されました」と、東フィンランド大学公衆衛生・臨床栄養研究所のマリア ランキネン氏は言う。

糖尿病の遺伝リスクのある人が生活改善に取り組むとどう変わる?

 糖尿病の発症と進行には、複雑な要因が関わっており、食事や運動、ストレスなどの個人の生活スタイルが影響するが、社会的・環境的な要因、さらには体質や遺伝的な影響も大きいと考えられている。

 このうち遺伝的な影響については、2型糖尿病の人に多くみられる遺伝子が発見されており、そうした遺伝的リスクのある、糖尿病になりやすい体質の人は、少し食べすぎたり運動不足や肥満になっただけでも、血糖値が上がりやすいとみられている。

 研究グループは今回、2型糖尿病の人の遺伝子を調べている大規模な研究に参加した、フィンランドの50~75歳の男性973人を対象に、3年間の介入試験を行った。

 うち628人が、食事療法や運動療法の指導を受け、グループミーティングに参加し、オンラインのサポートも受け、ライフスタイルの改善に積極的に取り組んだ。

食事や運動に取り組むと糖尿病リスクが70%減少

 特定の遺伝子に遺伝子の違いがあると、2型糖尿病になりやすいことが報告されており、糖尿病の遺伝子多型(バリアント)と呼ばれている。糖尿病と関連するバリアントは500以上がみつかっている。

 研究グループは、2型糖尿病の発症に関連しているとみられる76のバリアントを調べ、参加者を糖尿病の遺伝的リスクの高い人と低い人に分けて比較した。

 その結果、2型糖尿病の遺伝的リスクの高い人でも、食事や運動の改善に取り組むことで、取り組まなかった人に比べて、2型糖尿病の発症が70%減少したことが示された。

 「2型糖尿病の遺伝的リスクが高い人は、健康的な食事や運動に取り組むことで、糖代謝が良好になり、恩恵を受けられることが分かりました。グループやインターネットを通じた支援も効果を期待できます」と、ランキネン氏は言う。

 「糖尿病のリスクがあるすべての人に、遺伝的リスクに関わらず、ライフスタイルを改善する支援を行うことが望まれます」としている。

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