年収3000万円のブロッコリー農家を生み出した…農業を「ドル箱」に変えた九州の野菜卸業者のすごいアイデア(プレジデントオンライン)
今年4月から「指定野菜」に追加されたブロッコリー。その生産を陰で支えてきたのが、長崎県雲仙市の野菜卸業者・國﨑青果だ。年商88億円のこの会社は、流通業者でありながら異色のビジネスモデルで、生産量を伸ばし、年収3000万円を稼ぐブロッコリー農家を生み出している。「儲かる農業」を実現させた仕組みとは何か。農業ライターの鈴木雄人さんが取材した――。 【写真をみる】年収3000万円のブロッコリー農家を生み出した方法 ■ブロッコリー界のトップランナー 長崎県雲仙市。肥沃な火山灰土壌に恵まれたこの地で、国﨑青果は1996年に設立された。野菜の仲卸業を営み、2025年には年商88億円を記録。扱うブロッコリーは年間250万ケース(1ケース8キロ計算で約2万トン)にも上る。長崎と熊本を筆頭に、鹿児島、福岡、鳥取、島根、徳島、埼玉、北海道など全国各地にネットワークを築き上げ、日本の青果流通業界において知る人ぞ知るブロッコリー界のトップランナーだ。 前編で紹介した「発泡氷詰め」による出荷。これにより國﨑青果は、各産地を大きく成長させた。しかし、國﨑青果がこれほどまでに利益を生み出し続けている最大の理由は、単なる拠点の多さではない。 農家の「一番の弱点」を自社で丸抱えしてしまうというビジネスモデルにある。
■生産性を5倍に引き上げる分業モデル 「ブロッコリー農家にとって一番しんどいのは『収穫作業』です。ある農家さんでは、夜中の12時から畑に入って収穫し、その後に梱包、朝10時の出荷に間に合わせるような過酷な生活をしています。毎晩そんな生活が続いたら、農業がちっとも楽しくないじゃないですか」 井上さんがそう語るように、ブロッコリーは収穫期の見極めが難しく、畑の中で適切なサイズのものを一つひとつ包丁で切り出す「選択収穫」が必要となる。1つの畑に10回以上入ることも珍しくない。これほど収穫に時間がかかると出荷に間に合わせるためには夜中のうちに畑に来るしかないのだ。 この労働集約的な作業がボトルネックとなり、農家は今以上に作付面積を増やせないという問題を抱えていた。さらに、近年開発が進む自動収穫機についても、井上さんは「アメリカの巨大な畑で機械収穫を見たことがありますが、結局は人が目で見て切っていく方が圧倒的に速い。ブロッコリーの完全機械化はまだ厳しいと感じています」と分析する。 そこで國﨑青果が打ち出したのが、農家の畑のブロッコリーを丸ごと買い取る「単買(たんが)い」という手法と、自社の従業員による「農家サポート体制」だ。 農家は日々の管理といった「作ること」に専念する。その分、種まきから定植、そして収穫と人手が必要な部分は國﨑青果の社員が手伝う。なので、時期を迎えると、國﨑青果が自社で抱える約300人弱(うち外国籍スタッフが約220人、日本人が約60人)の各部隊が畑に行き、種まきや定植、さらには収穫から選別、箱詰めといった手が掛かる作業を代行してしまうのである。 「農家さんからすれば、もちろん自分だけで全て行った方が利益率は高いです。でも、一人で全てやろうとすると、作り切れるブロッコリーの面積がだいたい2ヘクタール(サッカーコート3面ほどの面積)。作業をうちの部隊に任せてもらえれば、5倍の10ヘクタール(東京ドーム約2個分)まで面積を広げられます。圧倒的な量を作れるので、結果的に農家さんの手元に残る金額は劇的に跳ね上がるんです」と井上さんは胸を張る。 ■年収3000万円の儲かる農業 では、実際にどれくらい「儲かる」のだろうか。井上さんは現場のリアルな数字を明かしてくれた。 「相場にもよりますが、例えば農家さんの手取りがブロッコリー1個で80円になったとします。10アール(1ヘクタールの10分の1の面積)の畑には約4000本のブロッコリーが植えられるので、ロスを見込んでも、うまく作れれば10アールあたり28万円〜30万円の売上。たとえ相場が崩れて手取りが1個60円に落ちたとしても、10アールあたり20万円は超えます。これを10ヘクタール(1000アール)やれば、単純計算で2800万円〜3000万円。一人でやってこれだけあれば、家も建てられるし、数千万円するトラクターなどの機械投資もできます。実際に弊社と連携する農家さんで一人で10ヘクタール管理する方がいるのでこれは現実的な話です」