【検証】 ウクライナによるロシア爆撃機破壊、新たな衛星画像とドローン映像から分かること
ポール・ブラウン記者、トーマス・スペンサー記者、BBCヴェリファイ(検証チーム)
ウクライナによる1日のドローン(無人機)奇襲攻撃により、ロシア国内の複数の空軍基地で航空機が深刻な損傷を受けたことが、新たな人工衛星画像とドローン映像から明らかになった。
4日朝に撮影された人工衛星画像によると、ロシア北西部および中部に位置する2カ所の空軍基地で、少なくとも12機の航空機が損傷または破壊されたことが確認された。
一方、ウクライナ保安庁(SBU)が同日に公開したドローン映像には、これら2基地に加え、他の2カ所の基地に対する攻撃の様子も映っていた。
ウクライナ側は、今回の作戦で戦略爆撃機41機を標的とし、「少なくとも」13機を破壊したと主張している。保安当局によると、この奇襲作戦は18カ月をかけて計画され、多数のドローンがロシア国内にひそかに搬入されたという。
SBUが公開した映像は、約5分間にわたる編集済みのドローン映像で構成されており、ロシア国内のオレニヤ、イヴァノヴォ、ジャギレヴォ、ベーラヤの各空軍基地に対する攻撃の様子が記録されている。
各映像では、爆発の瞬間の直前で映像が途切れているが、一部の場面では背景で他の航空機が炎上している様子が確認できる。
映像の中では、攻撃が明らかに進行しているにもかかわらず、ロシア側の防御措置が確認できる場面は一切なかった。
多くの航空機にはいくつものタイヤがかぶせられている。これはドローン攻撃の被害を軽減するためのロシアの戦術とされている。
火災の規模や延焼の状況から、一部の航空機は巡航ミサイルを搭載し、燃料も十分に積んでいたとみられる。それらの機体が出撃の準備を整えていた可能性がある。
オレニヤおよびベーラヤの両空軍基地の人工衛星画像が最も鮮明で、オレニヤでは5機、ベーラヤでは7機の航空機が損傷または破壊された様子が確認できる。
ムルマンスク州オレニヤの空軍基地は、ロシア北西部における主要空軍基地だ。
SBUが公開した映像には、3機の航空機から煙が立ち上る様子が映っており、これらは戦略爆撃機「TU-95」と特定されている。また、ドローンが4機目に接近する様子も確認できる。
さらに、同じ位置に駐機していた戦略爆撃機「TU-22M」にドローンが接近する様子も映像に収められている。
米民間衛星企業マクサーによる衛星画像では、「TU-22M」とみられる航空機が並ぶ列のそばに、破壊された機体が確認できる。
画像提供, Maxar
「TU-95」と「TU-22M」は、ソヴィエト連邦崩壊直前の1990年代初頭に製造が終了しており、修理は困難で、代替機の確保はほぼ不可能とされている。
SBUの映像では、別の場面で輸送機「AN-12」にドローンが接近する様子も確認されている。マクサーの衛星画像にはこの攻撃の結果は映っていないが、X上で衛星画像を分析する「アヴィヴェクター」が公開した別の画像をBBCヴェリファイが検証したところ、この機体も破壊された可能性がある。
4日朝に撮影されたプラネットラブス提供の人工衛星画像には、ウクライナ国境から約3000キロ離れたロシア・イルクーツク州のベーラヤ空軍基地全体が映っている。
この画像では、基地内の複数箇所において、損傷した「TU-95」3機と「Tu-22」4機が確認できる。SBUが公開した映像にも、これらの機体にドローンが接近する様子が映っていた。
映像の中では、ドローンが2回にわたって、「Tu-95」の燃料タンクのすぐそばにある翼に慎重に降りる場面が確認されている。
映像の最後には、基地内の複数地点から煙が立ち上る様子が映し出されていた。
イヴァノヴォ州中部にあるイヴァノヴォ空軍基地では、早期警戒管制機「A50-AWACS」2機が標的となった様子が確認された。「A50」は機体上部に大型のレーダーシステムを搭載しており、いわゆる「スパイ機」として運用されている。
ウクライナは、2024年1月と2月に同型機2機を撃墜したと発表している。
現時点では、同基地における「A50」の損傷を示す映像や画像は確認されていない。
同基地の衛星画像には機体の残骸が映っているが、BBCヴェリファイの検証によると、これらの残骸は2日の攻撃以前から存在しており、別の事案によるものとみられている。
リャザン州中部のジャギレボ空軍基地で撮影されたSBUの映像には、「Tu-22」3機にドローンが接近する様子が映っている。ただし、映像および入手可能な衛星画像のいずれによっても、これらの機体が損傷を受けたことは明確に示されていない。