鎌倉「黄金のペットボトル」を寺に放置で住職は怒り インバウンドの「トイレ」問題をどう改善するか

 インバウンド(訪日外国人客)が急増している古都・鎌倉(神奈川県)で、住民がストレスを抱えている。その一つが、文化の違いやマナーに起因する「トイレ」問題だ。 【写真】「放尿問題」が深刻化する大人気「映えスポット」 *   *   * ■駅のホームで「トイレ」アナウンス  8月中旬、江ノ島電鉄・鎌倉駅のホームは観光客でごった返していた。電車を待っていると、こんな構内放送が流れた。 「鎌倉高校前駅にはトイレがありませんので、こちらで用をおすませください」  聞いたことのない内容は、日本語に続いて、英語、中国語、韓国語でアナウンスされた。  鎌倉高校前駅周辺はインバウンドに特に人気の観光スポットだ。江ノ電の踏切はアニメ「スラムダンク」に登場する印象的な場所でもあり、連日、国内外から訪れるファンが後を絶たない。  ――親切になったものだな。あるいは、鎌倉高校前駅でトイレに困る乗客が増えているのか。  江ノ電の同駅には今年4月下旬までトイレは設置されていたが、閉鎖されたのだという。担当者によると閉鎖の理由は、「異物が流されるなどして、設備の破壊行為が繰り返しあったため」。 ■トイレの形状、使い方に差  トイレの故障にインバウンドが関係している可能性はある。文化が違えば、トイレの形状も使い方も大きく異なるからだ。記者も、アジアから中東を旅した際、トイレの使用方法が分からず困惑した経験がある。トイレの仕切りがない場合もあり、周囲を見て使い方を学んだ。  和式トイレは独特だ。逆向きにしゃがんで用を足したり、便器にそのまま腰かけたりしたという話はいまもよく聞く。また、洋式トイレの便座に座るのではなく、便座に上がってしゃがんで用を足せば、便器を破損することも起こりうる。  確かに、この人出ならそれもありうる。そう考えていたが、観光地の「トイレ」をめぐる事態ははるかに深刻だった。 ■踏切周辺はインバウンドで混雑  電車が市街地を抜け、車窓から海が見えると、「ほーう」と、ため息のような歓声が車内に広がった。いっせいにスマホのレンズを向け、車窓の撮影が始まる。  鎌倉高校前駅で、乗客の半数ほどが下車した。目的地は100メートルほど離れた場所にある「踏切」だ。  踏切周辺は200人ほどのインバウンドが滞留していた。香港からやってきた20代の男性はスラムダンクファン。「本当にすばらしい場所で、幸せを感じます」と語った。バスケットボールの黄色いユニホームを着た40代男性は、念願かなって4人家族で台湾から訪れたという。「最高です」と感激することしきりだ。「スラムダンク」とは関係なく、訪れる人も多い。  西日に照らされた海が光る。その手前を、緑を基調としたレトロな電車が走っていく――。  ノスタルジーを誘う光景を写真に収めようと、観光客が押し合うように歩道から車道に溢れ出た。車が走ってくるにもかかわらず、強引に道路を横断する人もいる。そのたび、市が配置した警備員が「ストップ、ストップ」と声を上げる。 ■「観光客が敷地で放尿する」 ―――この人数だ。混乱もするし、トイレに行きたい人も出るのだろう。  通りかかった60代の地元男性に声をかけると、苦い表情でこう語った。 「外国人観光客が家の敷地に勝手に入ってきて、ごみを捨てる、あろうことか放尿する。周辺住民は迷惑しています」

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