何目的?天に向かって放尿するオスのイルカに研究者らが困惑

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 アマゾン川で驚くべき場面が目撃された。そこで暮らす「アマゾンカワイルカ」のオスたちが、水面からイチモツを覗かせ、空へ向かって放尿しているのだ。

 おしっこは水面から1mほど上がり、やがて着水。この天に向かって尿を飛ばす行為はいったい何のため?イルカは賢いから何か目的があるはずだ。

  確かなことは不明だが、たまたまやっているわけではないのは確かだ。研究チームは、4年間で219時間もの観察を行い、36回にわたる「空中放尿」の瞬間を記録しており、何らかの意図があるものだと研究者らはにらんでいる。

 このアマゾンカワイルカの奇妙な行動は、カナダのCetAsia Research Groupをはじめとする研究チームが、その4年間におよぶ観察でたびたび目撃してきたものだ。

 のべ219時間の観察の中で、空への放尿が記録されたのは36回。アマゾンカワイルカが奇妙な行動をするという噂はかねてからあったが、その決定的瞬間がついに科学的に確認されたのだ。

 その衝撃の瞬間は論文でこう説明されている。

「空中への放尿を始める際、アマゾンカワイルカがゆっくりと逆さまになり、水面から上に陰茎を露出。それから尿を空中へと噴出する」

 しかも記録された事例の3分の2では、そのそばに仲間のオスがおり、わざわざ着水ポイントに近寄って行ったという。動画に映されているように、中にはじゃぶじゃぶとおしっこを浴びるオスの仲間もいたそうだ。

 そう、かかわっていたのはすべてオスである。

 アマゾンカワイルカは、南米のアマゾン川やオリノコ川に生息する淡水イルカで、体色がピンクがかっているのが特徴だ。

 成長とともにピンク色が濃くなるが個体差もある。体長は約2~2.5m、体重は最大185kgほどになる。

 視力は弱いが、エコーロケーション(超音波を使った探知能力)を駆使し、魚やカニなどを捕食する。

 社会性があり、特にオス同士の交流が活発なことで知られている。

 イヌ・クマ・ネコなど、尿をコミュニケーションの手段として利用する動物はたくさにる。だが、水中の生き物では珍しい。

 それに相当するものとしては、アフリカカワスズメ(Astatotilapia burtoni)というう魚がいる。彼らは尿の成分を嗅覚や化学感覚で感じ取り、繁殖状態や縄張り情報を得ることが知られている。

 また、ターキッシュクレイフィッシュ(Astacus leptodactylus)というヨーロッパや西アジアに生息する体長15cm程のザリガニは、尿の匂いを通じて攻撃的な意図を伝えると考えられている。

 だがアマゾンカワイルカの場合、嗅覚や味覚があまり発達していない。

 代わりに、口先に生えているヒゲのような感覚毛を使って尿の成分を分析し、ホルモンの違いから相手の健康状態や社会的地位を判断しているのではないかと考えられている。

 その一方で、過去の研究では、ハンドウイルカが舌で尿の味を感じ、ほかのクジラ類を識別していることが確認されている。ならばアマゾンカワイルカも同じように舌で尿を味わっている可能性もある。

 だがすべて仮説の段階にすぎず、正確なことはわかっていない。

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 ではなぜ彼らは空中におしっこを放つのか? はっきりとした理由は今のところ不明だ。

 空中放尿は特定の個体から他の個体へと学習によって受け継がれているのではないかという仮説も立てられている。

 これまでの観察では、オスのイルカしかこの行動をしておらず、他のオスの行動を見て学んだ結果、次の世代にも引き継がれている可能性があるという。

 研究チームは、空中放尿は、ただの排泄を超えた「社会的な機能を果たしている可能性」があるとしつつも、具体的な機能については「社会的なコミュニケーションによるもの」と推測するのみだ。

 イルカは音に敏感なので、尿が水面に当たる音が仲間に警戒をうながしている可能性もあるという。

 あるいは、ただおしっこの飛ばしっこで遊んでいるだけなもかも。男の子ってそういうところあるっていうし。知らんけど。

 この研究は『Behavioural Processes』(2025年1月24日付)に掲載された。

References: Male Amazon river dolphins pee into the air, confusing scientists | Popular Science / There's a curious animal in the dark rivers of Brazil that pees on its own head – scientists are trying to figure out why | Discover Wildlife

本記事は、海外メディアの記事を参考に、日本の読者に適した形で補足を加えて再編集しています。

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