筒井義信・新経団連会長、トランプ関税という「外圧」でいっそうの「構造改革」…革新など重点5分野

 29日付で経団連会長に就任する日本生命保険前会長の筒井義信氏(71)が、報道各社のインタビューに応じた。会長として「将来世代への責任を果たす経団連を目指したい」と語り、〈1〉イノベーション(革新)〈2〉税・財政・社会保障〈3〉地方創生〈4〉労働改革〈5〉経済外交――の5分野について重点的に取り組む考えを示した。(石黒慎祐)

関税好機に

報道各社の質問に答える筒井義信氏(東京都千代田区で)=野口哲司撮影

 国内外の経済情勢について筒井氏は、トランプ米政権の高関税政策を念頭に、「世界の経済秩序が分断の危機に 瀕(ひん) している」との認識を示した。日本が米国と行っている関税交渉に関しては、日本企業による米国への多額の投資や雇用面での貢献をアピールしながら、「中長期の目線を持って交渉するというスタンス(態度)が必要」と述べた。

筒井氏が掲げた五つの重点分野

 自動車大手などが関税措置の影響による業績悪化を見込んでいることに関しては、「必要な政策支援を講じる必要がある」と話した一方、「日本経済は外圧によって一種の構造改革が起きてきた」とも説明。今回の関税措置を契機に、国内投資の活性化や産業構造の転換を進める必要性があるとした。

産業競争力強化

 イノベーションに関しては、科学分野の研究開発促進のため、各国で政府が主導して集中的に資金を投じていると指摘。この動きに乗り遅れれば、「中長期に日本の産業競争力の低下につながりかねない」と懸念を示した。

 対策として、経団連に「科学技術立国戦略特別委員会」を設置し、政府に対して科学研究費の倍増を働きかける考えを明らかにし、産学連携で研究力の強化を目指すとした。

 経済外交については、インドやブラジルなど「グローバル・サウス」と呼ばれる新興・途上国について「日本がパートナーを組む筆頭のエリア」と位置づけ、連携を深める必要があるとした。

継承も

 近年の春闘では経団連の役割が大きくなっている。退任する十倉雅和会長(74)は、物価高を背景に賃金の引き上げを「企業の社会的責務」として訴え、大企業を中心に高水準の賃上げが実現した。筒井氏も「非常に強力な賃上げモメンタム(勢い)が形成されてきた」と評価し、「賃上げの定着をさらに定着させることが使命」と話した。

 ただ、賃上げが日本経済の成長に不可欠な個人消費の拡大につながっていないとの指摘もある。筒井氏は「(増税や社会保険料の増額といった)将来不安を 払拭(ふっしょく) することで安定的な消費活動を喚起する」と述べ、政府に対して税と社会保障の一体改革を求めていく考えを示した。

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