米国の若い世代で増える脳卒中、30年近くでほぼ倍増 専門家のアドバイスは?
若い女性は若い男性よりも脳卒中を起こしやすい/eternalcreative/iStockphoto/Getty Images
(CNN) 心血管の健康について心配するのは、年齢を重ねてからという人が多い。しかし、脳卒中が若年成人の間で着実に増えており、30年近くでほぼ倍増したことが、新たな研究から明らかになった。
「脳卒中は何歳でなっても深刻な病気だ。若い人に起きた場合、とりわけ影響が大きい」。そう話すのは、専門誌ニューロロジーに23日に掲載された研究の上級著者、デービッド・ロビンソン氏だ。
研究によると、若年成人の脳卒中発症率は、1993~94年の10万人当たり33.9件から、2020年には10万人当たり62.2件へ増加した。脳卒中に見舞われて一命を取り留める人の割合もわずかに上昇しており、長期の後遺症を抱えたまま暮らす若い成人が増えている可能性がうかがえる。
米シンシナティ大学医学部で臨床神経学やリハビリテーション医学の助教を務めるロビンソン氏は、「脳卒中によって障害が残れば、生活に必要なあらゆることが格段に難しくなる」と指摘し、仕事や小さな子どもの世話といった例を挙げた。
「脳卒中は高齢者だけに起きるものではなく、若い人にも起こり得る。その可能性を踏まえ、予防に最善を尽くす手段はあると知っておくことが大切だ」(ロビンソン氏)
以下では、若年成人が心血管の健康を守り、脳卒中のリスクを下げるための専門家のアドバイスを紹介する。
増加の中心は虚血性脳卒中
今回の研究では、シンシナティ都市圏とケンタッキー州北部に住む20~54歳の成人を対象に、脳卒中の発症状況を調べた。1993年から2020年にかけて初めて脳卒中を発症した患者は2076人に上り、そのうち黒人は738人(35.6%)、女性は1030人(49.6%)だった。
研究によると、増加の大部分を占めていたのは、最も一般的な虚血性脳卒中だった。これは脳の一部への血流が遮断されることで起こる。
27年間で脳卒中のリスク因子も増えた。高血圧の割合は47%から60%、糖尿病は19%から26%、心房細動は1%から6%へ増加。薬物使用の割合も5%から40%まで上昇したが、これは主として大麻使用の増加による。
ただ、脳卒中を発症していない人との比較データがないことから、こうしたリスク因子の増加でどこまで発症率の上昇を説明できるかは研究の著者にも分かっていない。
ロビンソン氏によると、座っている時間が多い生活スタイルに加え、肥満や高コレステロールといった健康問題の増加も脳卒中リスクを高める要因になり得る。
「答えは一つではないと思う。様々な要因が重なり合って影響する、ということだろう」とロビンソン氏。「では、どう介入して減らしていくのか。まず取り組むべきなのは、私たちが最もよく分かっていること、つまり心血管疾患のリスク因子を減らすことだ」
ロビンソン氏はリスクを減らすためのチェックリストとして、米心臓協会の「生活エッセンシャル8」を挙げる。健康的な食事、活動的な生活、禁煙、質の高い睡眠の確保、体重、コレステロール、血圧、血糖値の適切な管理といった項目からなるリストだ。若い世代も、こうした数値をチェックしてもらうかかりつけ医を持つことが重要だという。
「若いうちから心血管の健康について意識し始めることが大切だ」「早い段階で気付けば、介入して深刻な影響を低減できる可能性が高くなるはず」(ロビンソン氏)
残念ながら、今回の結果は意外なものではなく、過去の研究で示された傾向に沿うものだった。そう話すのは、ボストンの医療機関「マス・ジェネラル・ブリガム」の神経内科で脳卒中部門を率いるクリストファー・アンダーソン氏だ。アンダーソン氏は新たな研究に関わっていない。
アンダーソン氏は「重要なのは、人種構成や社会経済的状況、教育水準が米国全体を比較的よく反映している集団で、脳卒中発症率の大幅な上昇が確認されたこと。この結果は全米に当てはまる可能性が高い」と語る。
若年成人の脳卒中の病因論を専門とするタフツ・メディカルセンターの脳血管神経内科医、ミシェル・レパート氏も、今回の結果に驚きはなかったと話す。そのうえで、若い世代のデータを収集するこうした研究の重要性を強調した。レパート氏も今回の研究には関わっていない。
若い世代の脳卒中はまだ比較的まれであり、過度に不安になる必要はないと、レパート氏は言い添えた。ただし、リスクを持つ人の発見につなげるためにも、病院で毎年の健康診断を受けることが重要だという。医療従事者の側でも、若年成人の間で脳卒中が増えている現状を認識し、血管系リスク因子の早期の発見と治療に当たることが望ましい。