ロシア「この冬は凍結する」、ウクライナ「この冬は暑くなる」、双方の国防省が長距離攻撃の応酬を宣言(JSF)
8月14日、ロシア国防省はウクライナ国民に対して「冬に貴方は”凍結”に見舞われる」という脅迫文をシャヘド136自爆無人機(ロシア名称:ゲラン2)のイラストと共に公式Telegramに投稿しました。するとウクライナ国防省は同じような構図のFP-1自爆無人機のイラストと共に「この冬は暑くなるだろう」と公式Telegramに対抗の投稿を行いました。
Зимой вам будет «заморозка» | ロシア国防省Telegram
Зима буде спекотною | ウクライナ国防省Telegram
双方が長距離ドローン攻撃の応酬を行うと宣言したことになります。ロシア国防省はウクライナの民間人を凍えさせるために発電所や変電所など電力インフラへの攻撃を行い、暖房を止める気です。そしてウクライナ国防省は対抗でロシアを長距離攻撃で焼くとしていますが、投稿したイラストでは沿岸部の石油タンクが炎上しているものの、実際の攻撃目標はこれだけではなく別の目標も狙うことになるでしょう。
またTelegram投稿時の本文の文章だけでなく、一緒に投稿された自爆無人機のイラストにも文章が書き込まれていました。ロシア国防省は「頭の上の雪のように(突然に)」、ウクライナ国防省は「寒くなると鳥たちは暖かい地へと飛び立つ」と書き入れています。
左:ロシアのシャヘド136、右:ウクライナのFP-1
左:ロシア国防省より「КАК СНЕГ НА ГОЛОВУ (頭の上の雪のように:”突然に”という意味の慣用句)」、右:ウクライナ国防省より「В холод птахи летять в горящі краї (寒くなると鳥たちは暖かい地へと飛び立つ)」КАК СНЕГ НА ГОЛОВУ | ロシア国防省Telegram
- 「頭の上の雪のように」:”突然に”という意味の慣用句
В холод птахи летять в горящі краї | ウクライナ国防省Telegram
ロシア国防省はウクライナ国民への脅迫文にシャヘド136自爆無人機のイラストを付けています。しかし実際にはウクライナ軍はパトリオット迎撃弾の枯渇により弾道ミサイル迎撃が不可能になっており、この冬のロシア軍による戦略爆撃の鍵を握る兵器はドローンではなく弾道ミサイルであると見られています。しかしそれにもかかわらずシャヘド自爆無人機が脅迫の絵として選ばれました。
それはおそらくドローンの飛行速度が遅いからです。遅いゆえに空襲中に市民が目撃しやすく、姿形が印象深くなってしまいます。これが弾道ミサイルの場合は超音速以上で突入して来るので、ミサイルの姿は見えません。弾道ミサイルは明るい昼間でも人間の目では目視などできず、突然の着弾と共に爆発します。弾道ミサイルは夜間ならば大気圏突入時の空力加熱で光って見える場合もありますが、ミサイルの姿形は分かりません。でもドローンならば飛んでいる姿が見えます。不時着した損傷の少ないドローンが丸ごと回収されて展示もされています。シャヘド136自爆無人機は大勢の人が姿形を知っています。
こうして毎日の空襲で使用されて目撃されやすい遅い空中目標であるシャヘド136自爆無人機がイラストに選ばれてしまったのでしょう。このロシア-ウクライナ戦争で最も有名で姿形が知られている兵器となってしまったのです。シャヘドはロシア製ではなくイラン設計の兵器であり、ロシアの技術力は示せない存在なのにもかかわらず。
なお現在、ロシアの長距離ドローンはプロペラ型からジェット型に生産の主力が急速に転換中です。ウクライナの迎撃ドローンよりも速く飛んでこれを無力化する意図があります。特にゲラン4の生産に注力していると見られ、目撃例も多くなっています。ジェット型のゲラン4の生産が拡大していくと、これまで長距離攻撃の主力だったプロペラ型のシャヘド136(ゲラン2)は引退が近づくのかもしれません。あるいは今後も長距離ドローンをジェット型とプロペラ型で併用していく可能性もあります。
ロシア軍の長距離ドローンと低コスト巡航ミサイル
- 低コスト巡航ミサイル:バンデロール
- 低コスト巡航ミサイル:ゲラン5
- ジェット型自爆無人機:ゲラン4(ゲラン3を改良した高速ジェット型)
- ジェット型自爆無人機:ゲラン3(シャヘド136のジェットエンジン換装型)
- プロペラ型自爆無人機:ゲラン2(シャヘド136:シャヘド131の大型版)
- プロペラ型自爆無人機:ゲラン1(シャヘド131:イラン設計)
- プロペラ型囮無人機:ガーベラ(小型爆薬を積んでいた例も報告されている)
- プロペラ型囮無人機:パロディ(レーダー反射材を搭載)
※ロシア軍はゲラン5を自爆無人機扱いしているが形状は低コスト巡航ミサイル。ゲラン系列は1~4までがデルタ翼無人機だが、5だけ巡航ミサイル化した。
※ウクライナ空軍はバンデロールを徘徊弾薬(自爆無人機の別の呼び名)に分類しているが、ロシア自身は低コスト巡航ミサイルと考えている。
ゲラン4(ジェット型シャヘド自爆無人機)
ウクライナ国防省情報総局が運営するサイト「War & Sanctions」より「ゲラン4」無人機※画像の出典はウクライナ国防省情報総局が運営する敵兵器の構成部品の出所を明らかにする目的のサイト「War & Sanctions」の「БпЛА Герань-4」
ロシアのゲラン4自爆無人機を追いかけるウクライナのMiG-29戦闘機