米陸軍長官が迎撃ドローンを絶賛、Shahedを迎撃すればするほど優位になる
米陸軍長官は議会の公聴会で「イラン紛争勃発から約8日以内に1.3万機のメロプスを調達することができた」「現在の単価は約1.5万ドルだが量産効果が高まれば1万ドルを切ると見込んでいる」「3万ドル~5万ドルもするShahedをこのコストで撃墜できるなら、何度でも取引に応じる」と述べた。
参考:Cheap Interceptor Drones Proven In Ukraine Protected U.S. Troops Against Iranian Shaheds
2027年までにコスト交換比率が優れた迎撃ドローンは多くの国で正式採用されているだろう
米国とイスラエルは2月28日にイランへの大規模な共同攻撃を開始し、イランも弾道ミサイルや自爆型無人機でイスラエル、米軍基地、この戦争を支援する国の基地がある中東諸国に反撃を加え、高価な迎撃ミサイルを信じられないスピードで消耗させており、ヘグセス国防長官やケイン大将は議会で行われた非公開のブリーフィングで「イランのShahed-136が国防総省の予想以上に戦場で戦術的混乱を引き起こしている」「対ドローン技術の欠陥で米軍部隊や資産がますます脆弱になる恐れがある」「(Shahed-136の脅威に対する)我々の備えは不十分だった」「イランのShahed-136は低高度を飛行し防空システムを回避できる」と警告。
米当局者は3月6日「ウクライナでShahed-136の迎撃に有効だと証明された対ドローンシステムが中東地域に送られる」と明かしていたが、これは元Google CEOのエリック・シュミット氏が設立したProject Eagle製のMerops(メロプス)と呼ばれる地上制御装置、発射機、そして敵のドローンを追跡して破壊するSurveyor Interceptor UAS=サーベイヤー迎撃ドローンで構成された対ドローンシステムだ。
ダン・ドリスコル陸軍長官はBloombergの取材に対して「対イラン作戦開始から5日以内に対ドローンシステムのメロプスが中東に派遣された」「これは元Google CEOのエリック・シュミット氏が設立したProject Eagle製のシステムで2024年にウクライナへ送られてテストされた」「サーベイヤー迎撃ドローンは1機あたり1.4万ドル~1.5万ドルもするが、ドリスコル陸軍長官は大量発注されれば3,000ドル~5,000ドルまで値下がりする可能性がある」と、さらにトランプ大統領がウクライナ支援の必要性を疑問視する発言をしたことを踏まえて「我々は誰よりもドローンのことを知っているし、最高の迎撃ドローンを持っている」と言及。
出典:U.S. Army photo by Sgt. Luis Garcia, 52d ADA Bde
Bloombergは記事の中で「米軍は迎撃用ドローン1万機を中東に派遣した」と報じていたが、ドリスコル陸軍長官は議会の公聴会で「紛争勃発から約8日以内の間に1.3万機のメロプスを調達することができた。これは驚くべきことだ。現在の単価は約1.5万ドルだが量産効果が高まれば1万ドルを切ると見込んでいる。3万ドルから5万ドルするShahedをこのコストで撃墜できるというのは素晴らしいことだ。なぜなら我々がコスト曲線の優位に立つことを意味するからで、何度でもこの取引に応じるだろう」と言及。
米軍が中東にサーベイヤー迎撃ドローンを何機配備しているのかは不明だが、2025年度から調達が開始されているドローン迎撃機=Coyote Block2の推定単価は約10万ドルで、War Zoneは「Coyoteはサーベイヤー迎撃ドローンよりも10倍も高価だ」「発注量が増えれば迎撃機1発あたりの価格は3,000ドルから5,000ドルまで値下がりする可能性がある」「ウクライナでの成功を踏まえると国防総省をはじめとする顧客は大量発注のリスクを低く見積もるだろう」と報じている。
出典:RTX Coyote Block2
国防総省はFY2027予算説明資料の中でPAC-3 MSEを計3,203発を調達するため139.3億ドル=2.2兆円以上を要求しており、PAC-3 MSEの推定単価も434万ドルなので、1発の調達資金でサーベイヤー迎撃ドローンを291機~437機、仮に大量発注で5,000ドルまで値下がりすれば874機、3,000ドルまで値下がりすれば1,456機も調達することができ、サーベイヤー迎撃ドローンを単価1.5万ドルで1.3万機調達するのにかかった費用も1.9億ドル=約300億円に過ぎない。
War Zoneも「メロプスはShahed-136迎撃において従来型防空システムに代わる極めて安価な代替手段だと実証されている」「このような迎撃ドローンは高価なパトリオットミサイルのようなペイロードや射程を備えていないものの大量配備が可能であるため、より広範な地理的領域をカバーすることができる」「これにより高度な迎撃ミサイルの弾薬保有量が枯渇するのを防ぎながら、標的と迎撃兵器のコストに関する破滅的な交換比率を根本から覆すことができる」「ただし、価値の高い施設やインフラに対する拠点防衛をおこなう際は多層式防空シールドの一部に従来型防空システムを組み込む必要がある」と指摘した。
出典:Lockheed Martin
欧米の軍事当局、ディフェンスメディア、アナリストの間では「自爆型無人機は安価な迎撃ドローンで対処し、高価な迎撃ミサイルは本来の目的(弾道ミサイル、巡航ミサイル、有人航空機など)に使用する」という考え方が常識になりつつあり、ドリスコル陸軍長官が言及したメロプス=サーベイヤー迎撃ドローンの1.3万機調達も「その常識が口先だけのものではない」と物語っているが、迎撃ドローンは長距離攻撃に使用されるShahed型無人機の迎撃にだけ有効なわけではない。
ウクライナのミハイロ・フェドロフ国防相は9日「迎撃ドローンはウクライナの発明品であり、既に我が国の防空にとって重要な要素になっている」「ウクライナ軍は迎撃ドローンを使用してShahed、Gerbera、Molniya、Zala、Orlanなど各種ドローンを3月に3万3,000機以上も撃墜した」「この戦果は2月と比べて2倍以上に相当する」と明かし、ウクライナ空軍が3月に報告したShahed型無人機の飛来数は6,463機、撃墜数(電子戦による無力化を含む)は5,833機なので、前線付近で使用されるShahed型無人機より小型の無人機を2万5,000機以上も撃墜している計算だ。
STING regularly takes down jet-powered Shaheds 💥
These Shaheds differ from conventional ones by having a jet engine, which gives them higher speed and longer range. This significantly reduces reaction time, but the skill of the pilots and the STING interceptors still make it… pic.twitter.com/wN9J0dSqVs
— Wild Hornets (@wilendhornets) January 26, 2026
つまり迎撃ドローンは「対Shahed型無人機に対する迎撃手段」ではなく「地対空ミサイルや携帯式防空ミサイルではコスト交換比率が合わない無人機全般に対する迎撃手段」であり、欧州、英国、トルコ、韓国、ロシア、中国でも独自の迎撃ドローンが次々に登場し、英国、ドイツ、イタリア、オランダでもウクライナ製迎撃ドローンの共同生産が開始される予定で、2027年までに多くの国で迎撃ドローンが正式採用されているだろう。
ちなみに、迎撃ドローンは比較的大きな標的=Shahed型無人機の迎撃には弾頭を搭載するが、比較的小型の標的の迎撃には体当たりで対応するため再使用が可能で、1度の迎撃で複数の小型無人機を無力化することも出来るためコスト交換比率が特に優れており、ウクライナ製迎撃ドローンがロケット型のデザインを採用するのもそのためだ。
出典:Денис Шмигаль
サーベイヤー迎撃ドローンも弾頭による迎撃と体当たりによる迎撃が可能で、任務終了後に機体を再利用できる場合にはパラシュートを使用して回収する仕組みが採用されている。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army photo by Sgt. Luis Garcia