日本人は「考えすぎることのリスク」を知らない…心療内科医が「百害あって一利なし」という思考パターン
頭の中をぐるぐるするネガティブなひとりごとはなぜ起こるか。心療内科医の鈴木裕介さんは「反すうは百害あって一利なしだ。東アジア人は文化的に反省を重視する傾向があり、日本人はとくに“有益な反省”と“有害な反すう”をしっかり区別することが重要だ」という――。
※本稿は、鈴木裕介『頭の中のひとりごとを消す方法』(池田書店)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/maruco
※写真はイメージです
東アジア人は反省が大好き
おもしろいことに、東アジア人は儒教の影響などからか、文化的に「反省することを重視する」という傾向があります。
たとえば、『論語』には「三省吾身」という言葉があります。
(毎日何度もわが身について反省する。友だちとの交際において誠実でなかったのではないか。よくおさらいもしないことを(受けうりで)人に教えたのではないかと。)
――『論語』金谷治訳注、岩波文庫
要するに「一日三回は自分のことを振り返りましょう」という教訓です。
なかなかストイックで、この通りに実践できる人はそういないかもしれませんが、こうした精神性が自分の中のどこかにあると感じる人は少なくないのではないでしょうか。
このような感じで日本人を含む東アジアの人びとは、欧米人に比べて自己批判的であり、自分を改善し、成長させていくために自分の欠点に注目しやすい傾向があるのです(※1)。
そういえば、外国人の友人が「日本では謝罪会見をよく見るね」と言っていたのが印象的でした。かつては猿に反省を求める芸が話題にもなりましたが、日本は「反省せいや!」という社会的圧力が強い国なのかもしれません。
そうであればこそ、日本人はとくに「有益な反省」と「有害な反すう」をしっかりと区別することが重要なのではないかと強く思います。
※1 Heine, S. J., Lehman, D. R., Markus, H. R., & Kitayama, S. (1999). Isthere a universal need for positive self-regard? Psychological Review,106(4), 766-794.
Page 2
- 内科医・心療内科医・産業医
これまで述べてきたように、反すうは学びにならないし、問題解決の役に立ちません。それどころか、解決のための具体的な行動を遅らせてしまいます。
鈴木裕介『頭の中のひとりごとを消す方法』(池田書店)
反すうでは、「なんであのとき失敗しちゃったんだろう」「私ってダメなやつ」など、抽象的、自己批判的な思考が繰り返されます。それにより、具体的な解決策を考える余地がなくなります。問題解決には、「どうすれば次はうまくいくか」といった具体的な視点が必要ですが、反すうはこの視点の切り替えを妨害してしまうのです。
たとえば、受験で失敗した学生が「自分は勉強ができない」という反すうモードに陥ったとします。すると、改善策(勉強方法の見直し)ではなく、
「なんで、こんなに時間をかけて勉強したのに点数がとれないんだ」 「そもそも、僕なんかが受けていい大学じゃなかったんだ」
など、自分を責めることに時間を費やしてしまいます。
イラストレーション=さくら
思考は続けているのですが、そのエネルギーはすべて自分を攻撃することに使われています。
それにより、ストレスホルモン(コルチゾール)が増加し、集中力や判断力が低下してしまいます。脳のキャパシティ(ワーキングメモリ)も奪われ、新しい解決策を考える力もそがれてしまいます。
本当なら「今後の進路の検討」や「勉強方法の見直し」などに使いたいエネルギーがすべて自分を攻撃することに消費されるのです。
実際に病院に行くまでに過度に反すうをする傾向のある女性は、胸のしこりに気づいてから、そうでない人より1カ月以上長くかかったという報告があります。ネガティブな感情や思考を頭の中でこねくり回して、悩み苦しんでいたのに、実際にしこりが見つかると、いち早く病院に行くのではなく、その行動を先送りにしたのです。心配や不安が強すぎて、身動きがとれなくなってしまっているんですね。
いろいろと考えていて、気になっていることがあるのに、学びにも解決にもつながらないどころか、むしろ解決するための行動を遅らせてしまう。反すうは、本当に困ることばかりの思考パターンなのです。