米多国籍企業、為替ヘッジ長期化 背景にトランプ政権の関税政策
[ニューヨーク 21日 ロイター] - 米トランプ政権の関税政策による為替相場変動に対処するため、米国の多国籍企業は為替ヘッジ(損失回避)の期間を長期化している。
ミルテックFXのエリック・ハットマン最高経営責任者(CEO)は、「ここ1週間、顧客は保護策を確保し、短期的な市場の不安定な動きに対処するために、可能な限りヘッジの期間を延ばそうとしている」と語った。
米州みずほの為替・新興市場デリバティブ部門責任者ガース・アペルト氏は、関税を巡る市場の混乱でドル安が進んだことが、企業が長期ヘッジに動く大きな要因になっていると指摘した。顧客は短期的なリスクをヘッジするのではなく、2年から5年先を見据えてヘッジを行っていると話した。
ドル安は米国の輸出企業にとってプラスに働く可能性がある。しかし、貿易を巡る不確実性やリセッション(景気後退)への懸念から、企業は将来の利益を確保するためにヘッジを強化している。
企業がヘッジ期間を長期化する背景には、市場の変動が大きくなったことで短期的なヘッジ手段のコストが上昇しているという事情もある。
ミルテックFXの投資ソリューション責任者サイモン・ラック氏は、ヘッジ期間を長くすることで、為替変動に対する保護レベルを維持しながら、短期的な為替変動による損益確定を避けることができると説明した。
<オプションへの転換>
米州みずほのアペルト氏は、ユーロを調達する必要がある企業向けに、ヘッジの選択肢が増えていると指摘した。
USバンクの為替営業部門トップ、ポーラ・カミングス氏は、トランプ氏の関税ショックによりユーロが上昇し、一部の顧客が不意を突かれる格好になったと述べた。
同氏は「カナダドルとメキシコペソのヘッジ戦略見直しに注目が集まっていたが、ユーロ高に備えてより良いポジションを取ることに関心が移っている」と語った。
一部企業では、フォワード契約の利点を持ちつつ、取引時期を柔軟に選択できる「ウィンドウフォワード」が検討されている。これは、特にキャッシュフローが不透明な環境に直面している企業にとって魅力的な選択肢となる。
初期費用なしでより有利なレートで複数回の満期日に通貨を売買できる契約への関心も高まっている。
カミングス氏によれば、より柔軟な対応を求める顧客を中心に、従来のフォワード契約によるヘッジから、オプション取引へと切り替える動きがここ2─4週間で増えている。
キリバのグローバルイネーブルメント責任者、ボブ・スターク氏は「オプション戦略を使うことには意味がある。明日のことを今日決める必要がない(という柔軟性がある)」と語った。
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