大阪万博も「スロースタート」? 愛知は入場者数目標を達成、要因は
大阪・関西万博は、開幕日の入場者数が事前予約数を下回るなど出足の鈍さが目立っている。
ただ、20年前の愛知万博(愛・地球博)でも予想を大きく下回る「スロースタート」だったが、最終的には目標を大きく上回る人が来場した。また、専門家は集団心理の影響で、万博に足を運ぶ人が増える可能性があるとする。
大阪・関西万博は13日に開幕。事前予約は14万人超だったが、実際の入場者は11万9000人にとどまった。14日は5万1000人で初日から半減し、15日も4万6000人と伸び悩んだ。
Advertisement開幕日は、断続的に携帯電話やインターネットがつながりにくい通信障害が起こったことや、雨が降りしきる荒天が影響したとみられる。
交流サイト(SNS)では、「雨の日の万博は、しんどすぎた」「雨宿りするとこない」など不満の投稿が相次いだ。
とはいえ、開催期間184日間の3日間が終了したばかり。20年前の愛知万博でも、今回と同様、開幕直後は目標の入場者数を大きく下回っていた。
愛知万博は愛知県長久手町(現長久手市)、豊田市、瀬戸市を会場に2005年3月25日~9月25日に開催。公式記録によると、開幕後3日間の入場者数は計14万5735人で、予想した45万人の3分の1にも届かなかった。
開幕日は4万3023人で、全日程の中で最低だった。天候にも恵まれず、雪もちらつき平均気温は3・7度、翌日も小雨となり真冬並みの寒さが続いた。
その後、大型連休中だった5月4日は14万9214人に上り、開幕60日目となる同23日には総数が500万人に到達した。
中盤となる7月4日には総数が1000万人、8月18日には目標だった1500万人を達成するなど、終盤に向かって盛り上がった。
閉幕1週間前の9月18日は28万1441人となり、1日の最多を記録。最終的には185日間で計2204万9544人が訪れた。
公式記録は、何度も会場に足を運ぶリピーターが多かったことが、終盤に向けて入場者が増えた要因だと分析した。
愛知万博の日本国際博覧会協会事務総長だった中村利雄さん(78)は「半年間の中で『いつか行けばいい』と考える人も多い。愛知万博に比べれば(大阪・関西万博の)出だしは悪くない」とみる。
愛知万博ではリピーターが約500万人いたとし、「開幕から1カ月間は、さまざまな問題が出てくるが、『日々改善』で柔軟に対応していけば、訪れる人は増えるはず」と話す。
中京大の近藤洋史教授(実験心理学)は、集団心理が働いて、入場者が増える可能性があるとする。
集団心理では、同調行動▽社会的証明のバイアス(多数派の意見を正しいと判断し、意思決定が左右されること)▽取り残される不安――の三つが大きく影響するという。
調和を重視する日本人は周囲に行動を合わせたり、自分では判断できない場合に多数派の意見を参考にしたりする傾向もあるという。
特に若い世代は、他者が楽しい体験をすると、取り残された思いを抱きがちだとも前置きしたうえで、こう話す。
「SNSが普及している今、『このパビリオンが面白い』といったポジティブな感想が集まれば、愛知万博のように終盤に向けて入場者数が増えるかもしれません」【真貝恒平】