390選択、需要増で生産能力を年10機に引き上げ
エンブラエルのC-390/KC-390はC-130更新需要を次々と獲得して運用国も10ヶ国以上に広がり、リトアニアとスロバキアも正式発注に向けて交渉中、米国、インド、コロンビアへの売り込みも続く中、ギリシャ議会がC-390取得を承認し、エンブラエルは同機の需要規模を最大450機と見積もっている。
参考:Greece Selects Embraer C‑390 As Hercules Replacement 参考:Embraer ramping KC-390 production, plans Czech, Uzbek, Korean deliveries this year
中型軍用輸送機のシェア(1,500機前後)はC-130が独占しているものの平均機齢は30年を超えており、アフガニスタン撤退やウクライナ侵攻を経験した欧州諸国は「旧式輸送機によるロジスティクスシステムが時代遅れになっている」と再認識、多くの国で始まった中型軍用輸送機の更新で主役に躍り出ているのはC-130Jではなく、ブラジル空軍(19機)、ポルトガル空軍(6機)、ハンガリー空軍(2機)が採用しているエンブラエル製のC-390/KC-390だ。
出典:Embraer
2022年以降にオランダ空軍(5機)、スウェーデン空軍(4機)、オーストリア空軍(4機)、チェコ空軍(2機)、ウズベキスタン空軍(2機)、韓国空軍(3機)、アラブ首長国連邦空軍(確定10機+オプション行使で追加10機)での採用が確定し、リトアニア空軍(3機)とスロバキア空軍(3機)もC-390調達を表明して正式発注に向けた交渉を続けており、米国、インド、コロンビアへの売り込みも続く中、今度はギリシャ議会がC-390取得の資金(3機取得に6億ユーロ/ポルトガルの契約に含まれる追加調達オプションを利用して2027年の初号機取得を想定)を承認した。
エンブラエル防衛部門のマーケティング責任者を務めるマルシオ・モンテイロ氏は10日「需要が拡大する中、顧客と結んでいる現在の契約を満たすだけでなく、将来を見据えた今後の展開を見越して我々は増産体制に入っている」「2020年代の終わりまでに年間10機(現在は6機)の生産体制に到達するだろう」「(中型軍用輸送機は)まさに活況な市場で、今年中にチェコ、ウズベキスタン、韓国への納入が行われる」と言及。
Breaking Defenseも「エンブラエルのKC-390ミレニアムは好調の波に乗っており、数々の選定プログラムで勝利を収めている」「エンブラエルは今後20年間におけるKC-390の獲得可能な最大市場規模を最大450機と予測している」「KC-390はC-130Jと選定プログラムで頻繁に競合し、場合によってA400Mとも競合する存在だ」「KC-390は戦術輸送機でプローブ&ドローグ方式を用いて他機への空中給油が可能だ」「ノースロップ・グラマンとの提携を通じてKC-390専用のフライング・ブームを装備する計画も検討している」「新たなブームが搭載されればKC-390はさらに幅広い種類の航空機に給油が可能になる」と報じた。
エンブラエルが見積もるKC-390の最大市場規模=450機という数字に米国市場分は含まれておらず、モンテイロ氏はKC-390の獲得可能な最大市場規模の見積もりについて「保守的な数字だ」と、ノースロップ・グラマンとの協力についても「両社がブームシステムの開発にかかる費用分担、その構成に向けた技術的評価などの詳細について検討している」「エンブラエルとしては伸縮式の給油ブームが貨物輸送などのマルチミッション任務の妨げにならないようにすること、そして既に納入済みの機体にも後付けが可能な設計にすることを目指している」と述べているが、Breaking Defenseは米国市場参入の課題も指摘している。
出典:Embraer
“米国はKC-390にとって極めて収益性の高い市場になる可能性が高く、エンブラエルは将来の契約をより魅力的なものにするため、米国政府が発注に踏み切った場合「米国内にKC-390の組み立てラインを開設する」と約束しているが、短期的な参入機会=米空軍の次期空中給油機プログラムは宙に浮いた状態だ。ノースロップ・グラマンとの提携を発表した際、両社の幹部は「欧州などのKC-390運用国にとってブームを装備したKC-390がF-35への空中給油に役立つ」とメリットを強調した”
“ただし、モンテイロ氏は「米国以外の需要分だけでブーム開発への投資というビジネスケースを成立させるのに十分なのか」という質問に「現在のところ明確な答えを持ち合わせていない」と認めて「それこそがノースロップ・グラマンと共同で進めている調査で答えを出したい疑問の一つだと考えている」「つまり、これを実現するために我々がどれほど米国市場に依存しているかという点だ」と語った”
エンブラエルとノースロップ・グラマンは2026年2月「米国および同盟国向けに高度な空中給油能力を備えたKC-390を共同開発する」「KC-390改良型は先進的な自律型空中給油ブームが搭載される」と発表したが、現在は事業投資の妥当性を見極めようとしている最中で、米国市場以外の需要でもビジネスケースが成立するなら投資リスクが劇的に下がり、宙に浮いた状態の次期空中給油機プログラムに依存するならブーム開発への投資は慎重にならざるをえない。
エンブラエルが「納入済みの機体にも後付けが可能な設計にする」と言っているのも、納入済みや導入が確定している50機以上のKC-390に自律型空中給油ブームを売ることで「ブーム開発への投資リスクを引き下げたい」という意図の現れだと思うが、最終的に米国市場以外の需要でビジネスケースが成立するかどうかは現在の勢いが続くかどうか、新しい顧客の確保や運用国の追加発注で「後付けが可能な自律型空中給油ブームの潜在的需要をどこまで拡大できるか」に懸かっている。
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※アイキャッチ画像の出典:Embraer