欧州では2026年が最後 6代目 ホンダ・シビック・タイプR(1) 珠玉のFL5型を再確認
英国では、ホンダ最後のマニュアル・ホットハッチだと想定される、FL5型のシビック・タイプR。その発売当初から、ピリオドが打たれる時期はわかっていた。悲しいけれど。
初代は正規に日本から輸出されることがなく、待望のEP3型がグレートブリテン島へ上陸したのは2001年。それから25年後の2026年に、この土地では歴史へ幕が閉じられる。
ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)ホンダも、この別れは特別だと考えているのだろう。欧州市場限定となる、40台のタイプR アルティメット・エディションが投入されている。ルーフがブラックアウトされ、カーボンファイバーが散りばめられた、英国には10台だけの特別仕様だ。
現行型は、ご存知のように2021年に登場した11代目シビックがベース。タイプRは2022年に追加されている。
330psの2.0L 4気筒ターボ 車重は1417kg
先代のFK8型と同様に、該当クラスではボディは大きめ。全長4595mm、全幅1890mm、全高1405mmと、数世代前のホンダ・アコード・タイプRへサイズ感は近い。リアウインドウが長く傾斜し、見た目のハッチバック感も薄い。
シャシー剛性は、通常のシビックから15%向上。ホイールベースは先代から35mm伸ばされ、ワイドトレッド化され、ステアリング系は強化された。デュアルアクシス設計のフロント・コントロールアームも採用し、機敏な身のこなしが目指されている。
ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)2.0L 4気筒エンジンは、ターボとエグゾースト系の改良で、従来の320psから330psへ上昇。6速MTの変速機構は再設計され、19インチ・アルミホイールを履く。
ボンネットはアルミニウム製で、テールゲートはコンポジット素材。47Lの燃料タンクへガソリンを半分注いだ状態での車重は、1417kgだった。FK8型より50kg重いとしても、大きさを考えると軽量だといっていい。
タイプRを象徴するレッド 8mm低い座面
ドアを開くと、アルカンターラ張りの鮮やかなバケットシートが迎えてくれる。レッドはタイプRを象徴する色といえ、シートベルトやカーペット、ステッチの糸なども同色でコーディネートされている。
少し派手だという人はいるかも知れないが、英国編集部でそう感じた人はいなかった。むしろ、エンジンのスタートボタンも赤でいい。ダッシュボードは、しっかりブラック。フロントガラスへの映り込みは避けられている。
ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)フロントシートの座面は、先代より8mm低い。腰まわりのサポートはもう少し欲しいものの、横方向はしっかり身体が支持される。
3枚のペダルは足元へ整然と並び、ブレーキは丁度中心付近。シフトダウン時のヒール&トウを考えると、アクセルはもっと離れていても良さそうだが、運転姿勢は望ましい。
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車載機能の主な操作は、ほぼ実際に押せるハードスイッチで済む。デザインはシンプルで、タッチはソリッドで、とても扱いやすい。エアコンやパワーウインドウのスイッチは期待通りの場所にあり、サイズも充分で、考えずに触れられるはず。
車線維持支援など、一部の運転支援機能のショートカットにも、ハードスイッチがある。制限速度警告の切り替えは停車中にしかできないが、運転の集中力を保てるようデザインされていることは間違いない。高く評価したいコクピットだ。
ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)タッチモニターの使い勝手は、特に優れる訳ではないものの、アップル・カープレイには無線で対応。安定して動作していた。
後席側は、身長の高い大人でもゆったり過ごせる広さ。ただし定員は4名で、ベンチシートの中央にはカップホルダーが固定されている。ボディサイズが貢献し、荷室はクラス最大級といえる。
走りの印象とスペックは、6代目 ホンダ・シビック・タイプR(2)にて。
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執筆
マット・ソーンダース
Matt Saunders
- 役職:ロードテスト編集者 AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
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翻訳
中嶋けんじ
Kenji Nakajima
- 1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。
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