【米IT社員が指摘】なぜ日本は「やらなくていい仕事」まで全力でやってしまうのか?(AERA DIGITAL)

 ハンコ文化、資料の印刷文化など、無駄な仕事が多いと言われる日本。しかしそれどころか、「なくてはならない」ように思われる仕事でさえ「やらなくてもいい」仕事である可能性がある、と識者は指摘する。  資本主義の最前線で「成果」と「休息」を両立する一流は何をしているのか――シアトルの外資系IT米国本社で、世界中で利用されるシステムの機能の開発に携わる福原たまねぎさんの書籍『世界の一流が休むためにやっていること』から一部を抜粋して紹介する。 【画像】じわり話題!『世界の一流が休むためにやっていること』表紙 *  *  * ■積極的に「後回し」  ぼくは本書の冒頭から「アメリカに来てから仕事の量が少なくとも40~50%は減った」と豪語してきた。この極意が「忘れる」だ。  アメリカに来てびっくりしたのは、本当に仕事をどんどん忘れていくという点だ。つまりP1(あったら良いもの)を積極的に後回しにしていくのだ。 「なんとなく大事そうだけれど、実際には最初の段階ではいらないもの」。これらを「P1」として定義して、後回しにする。  こう説明すると当たり前のことのように感じられるかもしれない。普段から誰でもやっていることだろうと。 ■「優先順位」との決定的な違い  しかし、これはいわゆる「優先順位づけ」とは決定的に異なる部分がある。どういうことだろうか。  タスクに優先順位を付けたら、通常ならばそれぞれに「いつまでにやる」という期限を設定するだろう。そして、優先順位の高い順にすべてのタスクを並べ、「いつ頃すべてのタスクが完了するか」の見通しを立てる。  けれどP0/P1の考え方では、本当に大事なタスク、つまりP0だけをスケジュールに組み込む。P1はそもそもプランに入れない。P1は「余裕がありそうならやる」という位置づけにする。  日本で10年以上働いていたときも「優先順位を付ける」ということはもちろんやっていた。そこで前提とされていたのは「優先順位に従って上からタスクをこなす」というやり方だ。 ■ひとまず忘れる  でもP0とP1で果たそうとしていることは、似ているようでぜんぜん違う。 「絶対必要なもの=P0」を決めて、「あるとうれしいもの=P1」をいったん、捨てる。一番大事なことにみんなでフルに集中して、あとはひとまず忘れる。  ぼくは当初、このアグレッシブなタスクの捨て方にぜんぜん慣れなかった。タスクは与えられたものをしっかり全部こなしてこそ一人前だという認識が拭えなかった。そんなに思い切ってP1を忘れてもいいのだろうか?  それでいい、と思わされた出来事がある。 ■チームの決断にびっくり  ぼくがあるプロジェクトに参加したときのことだ。以下、分かりやすさのために仮想事例として「写真共有アプリ」の開発シーンを語っていくが、そこで起きた問題や解決の流れはぼくの実体験そのものと考えてほしい。  一般的な写真共有アプリでは、ユーザーが写真を「アップロード」して保存・共有できる。さらにアップロードした写真は「削除」したり、「名前の変更」をしたり、ときには「並べ替え」たり「アルバムにまとめる」といった管理機能も利用できるのが普通だ。  このプロジェクトは、そのような写真共有アプリを開発するというものだった。開発しないといけない機能は無数にあったが、チームではまずプロトタイプと呼ばれる試作品を開発することになった。この試作品を一部のお客さんに使っていただき、フィードバックをもらい、最終的なリリースに向けて機能を拡充していくのだ。  ぼくは途中からこのプロジェクトに参加したのだが、チームが下した決断にびっくりした。「大事そうな機能」をどんどん後回しにしていくのだ。 ■「ぶっちゃけた話……」  チームが提案したのは、試作品には写真の「アップロード」だけができるようにするというものだった。つまり、写真の「削除」や「名前の変更」、「並べ替え」や「アルバムにまとめる」機能もすべて諦めるということだ。ぼくから見たらそのどれもが「なくてはならない基本的な機能」に思えた。  試作品とはいえ、これはさすがにまずいんじゃないか?  そう思い、エンジニアを束ねるマネージャーのルッコラさん(仮名)、開発チームのリーダーであるサトイモさん(仮名)とトウモロコシさん(仮名)にも相談した。するとサトイモさんはこう言った。 「良い質問だね。でも、ユーザーに直接聞いてみたら良いんじゃないかな?」  そこでお客さんに短いミーティングの時間をもらい、試作品に必要な機能について聞いてみた。すると、「ぶっちゃけた話、試作品の段階ではアップロードさえできればいいよ」という返事だった。 ■実は要らない仕事もある  ぼくはこの経験から「優先順位は自分の思い込みによって支配されがちだ」と思い知った。  自分が大事だと思っていることは、自分の仮説でしかない。本当に大事な仕事はお客さんが決める。  アメリカの開発現場では、会社の上層部が事あるごとに「この新しいサービスについてユーザーから意見を聞いた?」「本当に求められているものなの?」と質問してくる。  こうした学びを取り入れて、ぼくらのチームもプロダクトを企画するかなり早い段階で、お客さんの声を徹底的に集めるようになった。ここで一手間を入れることでさらに「やらなくていいこと」が明確になり、タスクが減った。そして、「やるべきこと」に集中することができるようになった。 ※【関連】<【新潮流】外資系ITアメリカ本社の日本人が断言「スキルアップは平日にやるもの」>(7/10公開) 【AERA Books MEMO】 書籍『世界の一流が休むためにやっていること』(福原たまねぎ)  なぜ「忙しい」から抜け出せないのか? 外資系IT米国本社で一流たちに教わった、「休み方」以前の「休むため」の戦略とは。中島聡氏(元 米Microsoftエンジニア)、ピョートル・フェリクス・グジバチ氏(元Google人材・組織開発責任者)推薦。 (記事の内容は個人の意見であり、所属会社・団体を代表するものではありません)

福原たまねぎ

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