【日本市況】金利低下、中東緊迫化でリスク回避-株、為替方向感欠く
18日の日本市場は長期金利が低下(債券価格は上昇)している。中東情勢の緊迫化を受けて安全資産需要が強まった。
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10年債利回りは一時前日比3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低い1.445%に低下した。中東情勢を巡っては米国がイスラエルのイラン攻撃に加わるとの観測が再燃、投資家のリスク回避姿勢が鮮明になっている。株式は半導体やゲームの一角が買われて上昇、任天堂は上場来高値を更新した。為替は円がニューヨーク終値比で上昇している。
米関税政策を巡る貿易戦争に中東地域の緊迫化が加わり、経済・物価の先行き不透明感が世界的に強まっている。日本銀行は17日に政策金利の引き上げを見送り、植田和男総裁も債券市場の安定に配慮などと発言し、ハト派的だった。米国でも18日の連邦公開市場委員会(FOMC)は金利を引き下げない見通しだ。
大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリスト兼テーマリサーチ担当は中東紛争について、イスラエルとイランともに国や体制の存亡がかかっていると感じているとしたら何があるか分からないと18日付リポートに記した。日米関税交渉については自動車分野で交渉が進展するかもしれず、トランプ米大統領から為替に言及がないのは良いことだと指摘した。
18日の国内債券・株式・為替相場の動き-午後1時42分- 長期国債先物9月物は一時前日比38銭高の139円05銭に上昇
- 新発10年債利回りは一時3bp低い1.445%
- 新発5年債利回りは一時3.5bp低い0.995%
- 東証株価指数(TOPIX)は前日比0.5%高の2800.77
- 日経平均株価は0.6%高の3万8780円66銭
- 円は対ドルでニューヨーク終値比0.2%高の144円93銭
債券
債券相場は上昇。米国市場で弱い経済指標が相次いだことやイスラエルとイランの軍事衝突激化を受けたリスク回避の買いで長期金利が低下した流れを引き継いでいる。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは「植田総裁のハト派姿勢継続により利上げ期待が低下していることが買い材料になっている」と述べた。特に中長期ゾーンは、日銀が国債補完供給の減額措置の対象銘柄を最割安銘柄(チーペスト)以外に広げ、実施上限を引き上げたことで売られた反動による買いも出ているとした。
超長期債も20年債と30年債が堅調。稲留氏は「日銀が7-9月の国債買い入れ予定で超長期債の買い入れ額を据え置いたことが支えになっている」とした。19日の5年債入札については、超長期債の発行減額の代わりに5年債は増額される可能性が高いため、「不安が残る」と語った。
株式
東京株式相場は上昇。イスラエルとイランの軍事衝突を巡って米国が一段と直接的な介入に踏み切ることへの警戒感が強い中、個別に電気機器や小売り、輸送用機器、ゲームの一部が買われた。
ピクテ・ジャパンの田中純平投資戦略部長は、主要7カ国首脳会議(G7サミット)や日銀金融政策決定会合といったイベント通過を受けて、買い戻しが上昇を後押ししている可能性が高いと述べた。「日経平均が節目の3万8500円を明確に超えてきたことも、テクニカル面ではプラス材料」としている。
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任天堂は一時7%超の値上がりとなり、上場来高値を更新した。バンダイナムコホールディングスやスクウェア・エニックス・ホールディングスも高い。半導体関連のレーザーテックも買われた。
東海東京インテリジェンス・ラボの澤田遼太郎シニアアナリストは任天堂について、家庭用ゲーム機「スイッチ2」が前作をはるかに超えるペースで売れているとし、日経平均の上昇に寄与していると指摘した。
為替
円相場は1ドル=145円近辺で推移。145円台半ばまで値下がりした後、ニューヨーク終値比で上昇に転じている。
東海東京インテリジェンス・ラボの柴田秀樹金利・為替シニアストラテジストは、ドルは145円50銭にテクニカルなポイントがあって売られているほか、手持ちのポジション調整の売りも出ていると指摘した。ただ、「ドルは下を突っ込んで売る感じはなく、下値は切り上がっている印象がある」と語った。