GPLv2ライセンスの末尾にある住所へ本当に手紙を送るとどうなるのか?

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GNU一般公衆ライセンス(GPL)とは、コードの改変や再頒布を許可するオープンソースライセンスの一種です。1991年にリリースされたGPLの初期バージョン2であるGPLv2は、著作権者の権利とソフトウェア利用者の権利を保護するためにオリジナルの著作権表示を残す必要があることなどを定めています。ソフトウェアエンジニアのメンダック氏は、GPLv2ライセンス通知にメールアドレスではなく住所が記載されている理由について調査した結果を報告しています。

I wrote to the address in the GPLv2 license notice and received the GPLv3 license

https://code.mendhak.com/gpl-v2-address-letter/

メンダック氏によると、GPLv2には、「あなたはこのプログラムと一緒にGPLのコピーを受け取っているはずです。もしそうでないなら、アメリカ合衆国 マサチューセッツ州 ボストン市 フランクリン通り51番地 5階 郵便番号02110-1301までご連絡ください」という一節があったそうです。この住所は、GPLv2を管理するフリーソフトウェア財団の本拠地があった場所です。

「なぜライセンス通知にURLではなく住所を記載しているのか」と疑問に感じたメンダック氏は、オープンソースに関する質問と回答を専門に扱うQ&AサイトのOpen Source Stack Exchange質問を作成しました。すると、「GPLv2が1991年に公開された当時、ほとんどの人がオンラインではなく、ダウンロードではなく物理メディアを通じてソフトウェアを入手していたはず。そのため、コミュニケーション手段として郵送を使っていた名残ではないか」と結論付けられました。実際に、2007年に公開されたGPLv3では内容が更新され、ライセンス通知に住所ではなくURLが含まれています。

ライセンス通知は明示する必要があるのみで、実際に連絡をするケースはほとんどありません。しかしメンダック氏は、「ライセンス通知として示される住所にメッセージを送るとどうなるか」と思い立ち、返信用の切手も含めて手紙を準備しました。この時、メンダック氏が在住していたイギリスでは2011年に国際返信切手の発行を中止していたため、返信用切手を準備するために、オンラインショッピングでアメリカのグローバル切手を購入したそうです。 最終的に、メンダック氏は以下のように手紙を送りました。手紙には、「親愛なるフリーソフトウェア財団様、私はプログラムと一緒にGPLのコピーをもらえませんでした。GPLのコピーをいただけますか?」という内容の文章が記載されています。

手紙を送ってから約5週間後、メンダック氏のもとにフリーソフトウェア財団からの返信が届きました。封筒には、USレターサイズの紙5枚の両面にわたってライセンスの全文が記載されていましたが、ライセンスの内容はライセンス通知に住所が記載されているGPLv2ではなく、GPLv3のものでした。

ソーシャルサイトのHacker Newsでメンダック氏のブログが話題に上がった際に、「この手紙を受け取った当時、私は業務アシスタント(事務員)でした。独特の切手だったため、この手紙を覚えています」とコメントするユーザーが登場しています。ユーザーによると、メンダック氏がしたようなリクエストは、年間で5件から10件くらいあったとのこと。 なお、メンダック氏の投稿は2022年のもので、フリーソフトウェア財団は2024年8月にボストンのフランクリン通り51番地のオフィスを閉鎖しており、ミルク通り31番地に住所を移しています。記事作成時点では、GPLv2には、住所についての記載はありません。

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