西武池袋本店はなぜデパ地下を刷新したのか 再編の先に透けて見える百貨店の行方

 西武池袋本店(以下、西武池袋)のデパ地下がリニューアルされた。9月17日には地下1階のスイーツ売り場が、同月25日には地下2階の総菜売り場が刷新されている。この改装は2026年にかけて各フロアで順次進められ、同年内に完成する見込みだ。 【画像】どう変わった? 「西武池袋本店」のデパ地下を見る(5枚)  池袋は都内有数のターミナルであり、駅前にある西武池袋は、百貨店の中でも特に古い歴史を持つ存在だ。戦後日本の大量消費社会やファッション文化、贈答文化を支えてきた象徴的な百貨店の一つともいえる。  そんな老舗が、なぜデパ地下の大規模なリニューアルに踏み切ったのか。本稿では、百貨店という業態の現在地を踏まえつつ、その理由を探っていきたい。

 西武池袋のデパ地下は、日本最大級の規模を誇る。  今回のリニューアルでは、百貨店初出店となる11店舗を含む41の新規店が加わり、デパ地下全体では約180店舗となった。地下1階のスイーツ売り場では、改装前から人気だった生ケーキの取り扱いを強化している。  近年、百貨店のスイーツ売り場は、贈答用だけでなく、「自分用」「仕事帰りのご褒美」といった色も強くなっているが、西武池袋はその流れをより明確に押し出した形だ。洋菓子・和菓子ともに取り扱いブランドの幅を広げ、価格帯も以前よりやや高い印象を受ける。  地下2階の総菜フロアでは、和洋中にとどまらず、世界各国の総菜を取りそろえるとともに、弁当の品ぞろえにも力を入れる。  「今日は何を食べよう?」と迷うほど、魅力的な商品を多く取りそろえるデパ地下を体現したような売り場構成で、その規模は百貨店の中でも最大級だという。  西武池袋の改装は、2025年7月のコスメ売り場の改装を機に、2026年1月までフロアごとに手を入れていく計画で、今回のデパ地下刷新はその“序章”ともいえる。

 西武百貨店がここまで大きなリニューアルに踏み切った背景には、資本関係の変化がある。  西武・そごうは、かつて親会社だったセブン&アイ・ホールディングスから、米投資ファンドであるフォートレス・インベストメント・グループ(以下、フォートレス)へと売却された。  フォートレスは、グループ全体の再編を進める中で一部店舗の売却を決定したが、その一つが西武池袋であった。売却先は、家電量販店大手のヨドバシカメラを擁するヨドバシホールディングス。これにより、西武池袋の土地と建物の多くはヨドバシ側が保有する形となった。  その結果、売り場面積の約半分がヨドバシカメラとなり、百貨店として使えるスペースは従来よりも大幅に縮小された。広さで勝負できなくなったため、百貨店側は商品の「選択と集中」を迫られたのである。  フォートレスの描く方針は明確だ。ラグジュアリー、ビューティ、フード、アート。この4領域に注力し、「富裕層向け」の百貨店を目指している。  今回のデパ地下強化は、この「フード」領域への注力を具体化した結果だ。  リニューアルされた売り場を歩いてみると、全体として価格帯がやや高めであることに気付く。日常使いできる商品もあるが、中心に据えられているのは「わざわざここで買う理由のある商品」である。ここからも、西武池袋が目指す「ラグジュアリー」化の一面が見て取れる。

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