イスラエル軍がガザのカトリック教会を攻撃、避難中の3人殺害 教皇は停戦呼びかけ

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画像説明, キリスト教カトリック教会の聖家族教会が、イスラエル軍の攻撃を受けた。教会に避難していた3人が死亡し、ガブリエレ・ロマネッリ司祭は負傷した(17日、ガザ市)

ヨランド・ネル、デイヴィッド・グリッテン (エルサレム)

キリスト教カトリック教会のローマ教皇レオ14世は17日、パレスチナ・ガザ地区北部ガザ市にあるカトリック教会「聖家族教会」がイスラエル軍に攻撃され、避難していた3人が殺害された事態を受け、改めて即時停戦を呼びかけた。攻撃についてイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「流れ弾が教会を直撃したことを深く遺憾に思う」とコメントし、原因を調査中だと述べた。

ローマ教皇庁(ヴァチカン)からの電報で、教皇は聖家族教会への「軍事攻撃によって命が奪われ、負傷者が出たことに深い悲しみを覚える」と述べた。

聖家族教会を管轄するラテン典礼エルサレム総大司教庁は、教会が「イスラエル軍によって攻撃された」と明らかにした。9人が負傷し、そのうち1人は病院に搬送され重体という。アルゼンチン出身のガブリエレ・ロマネッリ主任司祭は軽傷を負った。

BBCが入手した動画と写真では、聖家族教会の屋根が十字架の近くで損傷し、窓が割れているのがわかる。

テレビ映像には、ロマネッリ司祭がアル・アハリ病院でよろけながら歩き、担架に乗せられた男性の具合を確かめる様子が映っていた。

ヴァチカンのピエトロ・パロリン国務長官が教皇の代理で署名した電報によると、教皇レオ14世は、命の損失に深い悲しみを覚えると表明。ロマネッリ司祭とガザの教区全体に「寄り添っている」ことを念押ししたという。

ヴァチカンによると、「教皇は即時停戦を改めて呼びかけ、この地域における対話、和解、そして持続的な平和への深い希望を表明」した。

攻撃当時、教会には約600人が避難していたとされる。その大半は子供で、特別なケアを必要とする人も54人いたという。

ガザ市内の聖家族教会は、イスラエル軍がかつて地元住民に退避を勧告した地区にある。

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画像説明, 慈善団体カリタス・エルサレムによると、砲弾が聖家族教会の屋根を直撃し、破片やがれきが庭に散らばった

ラテン典礼エルサレム総大司教ピエルバッティスタ・ピッツァバッラ枢機卿は、聖家族教会が戦車の砲弾で攻撃されたと、ヴァチカン・ニュースに語った。

「戦車だったのは確かだ。イスラエル国防軍(IDF)は誤射だと言っているが、それは定かではない。(IDFは)教会を直接攻撃した」と述べた。

慈善団体カリタス・エルサレムは、砲弾が教会の屋根に命中し、「破片やがれきが中庭に飛び散った」と述べた。

カリタス・エルサレムは、「当時、母屋の外には数人いた。その中にはカリタスが心理的、社会的に支援を提供するテントの中で座っていた、高齢女性2人が含まれていた。2人とも重傷を負い、15分後に救急車でアル・アハリ病院に搬送された」と説明した。「教会の入り口に立っていた若者3人も重傷を負い、民間車両で病院に運ばれた」という。

その後、ラテン典礼エルサレム総大司教庁は、「負傷により3人が死亡し、9人が負傷した。そのうち1人は重体、2人は重傷」だと発表した。

死亡したのは、教会用務員サアド・イッサ・コスタンディ・サラメ氏(60)、フーミア・イッサ・ラティフ・アイヤド氏(84)、ナジワ・アブ・ダウード氏だという。

総大司教庁は、「この悲劇を、罪のない民間人と聖なる場所を標的としたことを、強く非難する」と述べた。そのうえで、「しかし、この悲劇は、ガザで起きている他の多くの悲劇と比べて、特に大きいものでも、特に恐ろしいものでもない。他の多くの罪のない民間人もまた、危害を受け、家を失い、殺害されているのだ」と強調した。

エルサレムのギリシャ正教総主教庁も、「人間の尊厳を甚だしく侵害し、生命の神聖さと宗教施設の神聖さを著しく侵害する行為だ」として、今回の攻撃を強く非難した。

カリタス・エルサレムの職員は、「ロマネッリ司祭が私たちに、屋内にいるよう警告していなければ、50〜60人が犠牲になっていた可能性がある。大虐殺になっていた」と語った。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「イスラエルは、流れ弾がガザの聖家族教会を直撃したことを深く遺憾に思う」と述べ、「罪のない命が失われるのは、常に悲劇だ。我々は遺族と信者の悲しみに寄り添う」とした。

IDFは、初期調査の結果、「現場での作戦中に発射された砲弾の破片が誤って教会に命中」した可能性があると説明。「事案の原因は調査中だ」と付け加えた。

ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は記者団からの質問を受け、ドナルド・トランプ大統領がこの件についてネタニヤフ首相と電話で会談し、「カトリック教会を攻撃したのはイスラエル側の間違いだったと、首相が大統領に伝えた」のだと話した。

イタリアのジョルジャ・メローニ首相は、「イスラエルが何カ月も、民間人を攻撃していることは容認できない」と述べ、「いかなる軍事行動もこのような態度を正当化することはできない」と非難した。

ガザ地区では同日、イスラエル軍の攻撃で20人以上が殺害されたという。医療関係者によると、北部では援助物資を守っていた男性8人と、夫妻およびその子供5人が犠牲になった。

イスラム組織ハマスは2023年10月7日にイスラエル南部に奇襲攻撃を実施し、約1200人を殺害し、251人を人質にした。イスラエルは反撃としてガザで軍事作戦を開始。ハマス運営のガザ保健省によると、これまでにイスラエルの攻撃で5万8500人以上が殺害されている。保健省の数字は、死傷者に関する最も信頼できる統計として国連なども引用している。

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