“踊らずに掃除で勝つ” 中国発人型ロボット「Unix AI」、世界競技大会で金メダル
人工知能(AI)搭載ロボットを開発するスタートアップ「優理奇科技(Unix AI)」の人型ロボット「Wanda」シリーズが、北京市で開催された世界初の人型ロボット競技会で優れたパフォーマンスを見せ、「ホテル清掃サービス」と「ホテル接客サービス」部門で金メダル2個と銀メダル1個を獲得した。特に清掃サービスでは、ドドアの開閉やゴミの認識・回収、床拭きといったタスクを完璧にこなした。派手なジャンプやダンス、複雑な動作は課されないものの、極めて高い安定性と実用性を示し、注目を集めた。 人型ロボットなど、もっと写真を見る 清掃業務は見た目ほど簡単なタスクではない。素材や形状、位置が異なるさまざまな物体を扱うため、ロボットは認識、判断、実行まで一連の動作を自律的に完結させることが求められる。今大会のホテル清掃競技は、現実世界並みの難度が高い環境を再現した。室内には紙くずや飲み物の空瓶、テーブルクロス、椅子などが置かれており、ロボットはドアを開けるところからスタートして、状況認識やルート設定、ごみの拾い上げ、分別、整頓といった動作を自律的に完了しなければならない。 Unix AIが送り出したWandaシリーズの汎用人型ロボットは、自社で開発した高トルク密度関節モジュールと8軸のロボットアームを搭載しており、優れた動的応答や経路制御能力を持つ。制御面ではすべての過程で安定した動きとタスクの切り替えを実行し、素早いとは言えないまでもきびきびとした動きを見せた。 これを支えているのは、Unix AI独自開発の3つのアルゴリズムだ。操作タスク用の模倣学習アーキテクチャ「UniFlex」は、わずかなデモンストレーションでも即座に汎化することができ、拭く、収納するといった接触を伴うタスクに適用される。視覚と触覚を融合させた大規模言語モデル「UniTouch」は、素材や接触感覚に対する理解を高め、より人間に近い動きを可能にする。長いシーケンスのタスク計画モデル「UniCorex」は、複数ステップのタスクを実行する際にルート調整や優先度の管理をする。 サービス業にロボットを導入する際に重視されるのは、機能の豊富さよりも、現場環境にいかにスムーズに溶け込めるかという点だ。Unix AIはこの課題に向けて準備を進めて、すでに小規模納入を始めている。ホテルグループや不動産会社、高齢者向けコミュニティなどと契約を交わし、受注規模は数千万元(数億円)に達している。さらに、年間1000台規模の量産に対応できる生産体制も整っている。 Unix AIは高齢者介護や家事支援、教育などのシーンにも用途を拡大し、統一プラットフォームとモジュール化アルゴリズムを活用して、タスクの切り替えによりさまざまなニーズに応えている。 さらにWandaは今年初め、中国電子商取引(EC)大手の京東集団(JDドットコム)のサイトで販売を開始、一般的な小売りチャネルに参入した数少ない人型ロボットとなった。Unix AIは、こうした方法で早期ユーザーに働きかけ、市場のフィードバックを収集し、後継モデルの開発や機能拡充に活かす考えだ。 *1元=約21円で計算しています (翻訳・36Kr Japan編集部)