ECB理事会後のラガルド総裁発言要旨

欧州中央銀行(ECB)は17日、主要政策金利の預金金利を予想どおり0.25%引き下げ2.25%とした。ラガルドECB総裁は理事会後の記者会見で、 世界的な貿易混乱の拡大は、ユーロ圏のインフレ見通しにさらなる不確実性をもたらしているなどと発言した。写真は4月17日、フランクフルトのECB本部で記者会見するラガルド総裁(2025年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

[ロンドン 17日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は17日、主要政策金利の預金金利を予想どおり0.25%引き下げ2.25%とした。利下げは6会合連続で過去1年間で7回目となる。

理事会後のラガルド総裁の記者会見での発言は以下の通り。

<関税措置>

現在起きていることについて、特定の見解を示すことはしない。貿易問題を専門とするエコノミストは、マイナスの結果をもたらすとの見解で一致している。

(関税措置による)影響は、世界のどの地域にいるかによって異なる。このことで、金融政策決定が世界中で同一にならないということが正当化される。

<景気刺激策は討議せず>

景気刺激について討議しなかった。目標達成に向け適切な金融政策スタンスを決定するという、ECB声明にも記載されている事項に支持が示された。

<データ依存が最適な時期>

現在、多くのことが進行中だ。一部は6月の理事会までにある程度、落ち着く可能性がある。ただ、(トランプ米大統領が示した相互関税の上乗せ部分の一部の国・地域に対する)90日間の一時停止措置が終了するのは7月9日前後だ。

ドイツを含む複数の国での新政権が発足するが、状況がどのように進展するか、一段と明確になっていく。

  現在ほど、データに依存することが適切な時期はない。スタッフによる極めて強固で確実な分析に頼るのが最も適切な時期だ。

<FRBとの関係>

尊敬する同僚であり友人である米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長に大きな敬意を抱いている。

ECBは安定した確固たる関係を構築している。こうした関係は、金融安定の確保に向けた強固な金融インフラのために決定的に重要だ。ECBはこれまでも、金融リスクを巡る協議と理解という基盤に基づき、行動できると証明してきた。今後もこうした行動を揺るぎなく続けていく。

<理事会内の討議>

数週間前まで、複数の理事が利下げを見送り、一段のデータが得られた時点で決定すべきと主張していた。

一方、0.50%ポイントの利下げが妥当になる可能性があるとの見解も一部で示された。ただ、0.50%ポイント(の利下げ)の支持は皆無で、0.25%(の利下げ)が全会一致で支持された。

<「中立金利」の概念は衝撃がないときにのみ有効>

中立金利は「ショック」がない世界でのみ機能する概念だ。われわれは現在、「ショック」がない世界にはいない。このため(中立金利に基づく)政策の引き締め度合いの検証はもはや機能していない。

ECBがすべきことは、2%に設定しているインフレ目標を持続的に達成するために適切な金融政策のスタンスを決定することだ。

<政策の方向性>

政策の方向性についてコメントしない。目的地についてのみコメントする。目的地とは、2%に設定しているインフレ目標の達成だ。

<金融引き締め度合い>

(金融引き締め度合いを評価することは)意味がない。なぜなら、引き締め度を評価することは、政策金利と中立金利の比較に大きく依存しているからだ。中立金利は、測定の問題を除けば、ショックのない世界で機能する概念である。

<関税の影響>

需要へのマイナスショックであることは承知している。経済成長に一定の影響を与えることは予想できるが、インフレへの純粋な影響は、時間の経過とともに明らかになるだろう。

<全会一致の決定>

0.25%ポイントの利下げは全会一致で決定されたことを確認できる。選択肢は議論されたが、例えば0.50%ポイントの利下げに賛成する者は誰もいなかったため、0.25%ポイントの利下げは間違いなく、その場にいた全員が同意した利下げだった。

<貿易の混乱>

世界的な貿易混乱の拡大は、ユーロ圏のインフレ見通しにさらなる不確実性をもたらしている。世界的なエネルギー価格の下落とユーロ高は、インフレに更なる下押し圧力をかける可能性がある。さらに、関税上昇によるユーロ圏からの輸出需要の減少や、過剰生産能力を抱える国からの輸出がユーロ圏に流入することで、この圧力はさらに強まる可能性がある。

<世界的な貿易摩擦>

経済成長に対する下振れリスクは高まっている。世界的な貿易摩擦の激化とそれに伴う不確実性は、輸出を抑制しユーロ圏の成長を鈍化させる可能性が高く、投資と消費の落ち込みにつながる可能性がある。

金融市場のセンチメントが悪化すると、資金調達条件が引き締まり、リスク回避が高まり、企業や家計の投資や消費意欲が低下する可能性がある。

<防衛力強化>

防衛費とインフラ支出の増加は成長に寄与するだろう。

<緊急財政政策>

現在の政治環境においては、ユーロ圏経済の生産性、競争力、そして回復力を高めるための財政政策と構造政策が、これまで以上に急務となっている。

<例外的な不確実性>

経済見通しは例外的な不確実性によって曇っている。

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