リスク回避が割高に、株式から金まで-オプションプレミアム上昇

株式から金に至るまで、各種資産のオプションでリスクプレミアムが上昇している。主要指数のインプライドボラティリティー(予想変動率)は今年に入っておおむね横ばいか低下しているにもかかわらずだ。

  一見すると矛盾しているように見えるが、その主因は実際の市場変動が極めて乏しいことにある。その結果、市場が実際に動いた幅とトレーダーが予想する動きとの乖離(かいり)、つまりリスクプレミアムが上昇している。

  値動きの狭さおよびリスクプレミアムの上昇要因は、市場ごとに異なる。

  オプティバーでS&P500種株価指数のオプション部門共同責任者を務めるロビー・クノップ氏は「行使価格を固定したオプションのボラティリティーは過去数週間でかなり上昇しており、インプライドボラティリティーは実現ボラティリティー指標と比べて高止まりしている」と述べた。

  個別銘柄が異なる方向・スピードで動く低相関の状態によって銘柄ごとの値動きが互いに打ち消し合い、S&P500種株価指数のボラティリティーは抑えられている。

  このため、決算シーズンを控えて個別株のボラティリティーが上昇しているにもかかわらず、ボラティリティー指数(VIX)は低水準にとどまっている。VIX構成銘柄ボラティリティー指数とVIXとの差は先月、1月末以来で最大となり、過去2年のレンジでも上限近くにある。

  ここ数カ月の値動きが限定的な代表例は原油だ。供給過剰への見通しが、ロシアの製油所や輸出施設への攻撃による短期的な供給減少観測と拮抗している。

  ヴォルテクサで市場分析の米州責任者を務めるサマンサ・ハートケ氏は「日々の動きを見るとかなり揺れているように見えるが、10歩引いて見れば非常に狭いレンジで推移している」と述べた。

  他の市場のリスクプレミアム上昇は実現ボラティリティーの低下が主因となっているが、金はインプライドボラティリティー上昇が理由だ。

  米政府閉鎖を巡る懸念などを背景に過去1カ月、金現物価格が連日で最高値を更新する中で、インプライドボラティリティーは上昇を続けている。オプションのリスクプレミアムは過去5年間のレンジ上限に近い水準に達している。

  ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントの金・金属戦略責任者、アーカシュ・ドシ氏によると、「金のボラティリティー・リスクプレミアムがこれほど高水準となるのは、2022年のロシア・ウクライナ戦争初期以来だ」という。「価格が急騰する局面では、投資家の乗り遅れ恐怖症(FOMO)心理からオプションプレミアムが急騰することがある」と同氏は説明した。

原題:Traders Pay Steeper Price to Hedge Risk From Stocks to Gold(抜粋)

— 取材協力 Bernard Goyder and Mia Gindis

関連記事: