ダンスや絵画などのクリエイティブな活動に取り組むことが脳の若さを保つ可能性

研究チームは脳磁図と脳波計を用いて、被験者の脳活動をリアルタイムで測定しました。また、訓練された機械学習モデルを使い、各被験者の脳の生物学的年齢を推定する「脳時計」を作成しました。脳時計によって予測された脳年齢が実年齢よりも若ければ、その被験者の脳は老化が遅いということになります。 今回の研究では、収集したデータを用いて脳の生物学的モデリング(デジタル脳)を作成し、創造性の背後にある生物学的メカニズムについても調査しました。デジタル脳は詳細な生物学的・物理的法則を用いて脳の働きをシミュレートし、創造性と脳の健康について知る助けになるとのこと。

調査の結果、対象となったあらゆる創造的な分野において、創造性と脳の若々しさに関連したパターンがみられました。たとえばタンゴのダンサーの脳年齢は実年齢より7歳以上若く、ミュージシャンやビジュアルアーティストでは5～6歳、ゲーマーでも約4歳若いことが判明しました。

さらに研究チームは、短期的な創造的学習が同様の効果をもたらすかどうかを確認するために、非熟練者の被験者に戦略ビデオゲーム「StarCraft II」を30時間トレーニングしてもらう小規模な実験も行いました。すると、わずか30時間の創造的トレーニングを行っただけで被験者の脳は若返り、脳年齢が2～3歳若くなることが示されました。

今回の研究では、ダンス・絵画・音楽・ゲームなどの創造的な活動に取り組めば取り組むほど脳年齢が若返りました。研究チームは、創造性が老化の影響を受けやすい脳の領域を保護し、脳のコミュニケーションをより効率的にすると結論付けています。 コロネル氏らは、「芸術と科学はしばしば相反するものとみなされますが、実際には同盟関係にあります。創造性は文化だけでなく生物学も形作ります。私たちの研究は、創造性を単なる文化的・心理的現象ではなく、脳の健康と回復力につながる生物学的経路として捉え直すものです」と述べました。