日本の美大に中国人留学生が殺到「たった200万円」で永住権に道、家族みんなで移住も(ダイヤモンド・オンライン)

 いま、日本の美術大学と大学院に中国人が大量に押しかけている。しかし、その多くは勉強がしたくて日本に渡ってきたわけではない。彼らは何を求めて日本の学校を目指しているのか?中国人留学生3人に直撃し、その本音に迫った。※本稿は、日本経済新聞取材班『ニッポン華僑100万人時代 新中国勢力の台頭で激変する社会』(KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。登場する取材協力者の肩書きや年齢は取材当時のものです。 【この記事の画像を見る】 ● 競争社会から脱落した中国人が 大学予備校に殺到している!?  東京・新大久保にある中国人向けの大学受験予備校「行知学園」が、美術専門コースを開設したのは2015年のこと。 当初こそ生徒は10人ほどだった。だが、今や同コースで学ぶ中国人留学生は約200人に及ぶ。10年で20倍にも膨らんだ計算だ。  学校自体も2008年、元・中国人留学生によって設立され、急成長を遂げた。  中国の経済成長と、日本の外国人受け入れ緩和策の波に乗る形で、設立当初24人だった生徒数は、2019年にはピークの3716人にまで達した。  3年余り続いた新型コロナのあおりを受け、生徒数は一時減少したが、足元では再び留学生が増加し、日本最大の中国人留学生向け大学予備校として、現在その地位を固めている。  最近の中国人留学生の傾向について、行知学園の男性担当者にも、内情を聞いてみた。  「中国では今、厳しい競争社会に巻き込まれることを意味する『巻』という言葉が社会現象になっています。人口が多すぎて、競争社会に本当に嫌気が差しているのです。今のままでは、中国では自分の将来が描けないため、日本など海外に留学に出て可能性を広げたいと考える学生が増えています」とのことだった。

 とはいえ、日本に留学するにも、まずは基本的な日本語の語学力を身につける必要がある。ただ、最近の中国人留学生は、その時間も短縮しようと、午前は日本語学校、午後は大学受験に向けた予備校といった具合に、2つの学校を掛け持ちすることが一般的になっている。  行知学園では、こうしたニーズに対応するため、語学と大学受験の両方のコースを提供する。学費は「日本語学校分」が年間約90万円、「大学受験予備校分」が年間約60万円だ。  ただ、美大を目指す美術コースの場合は、年間約200万円と跳ね上がる。  だが、たった200万円で美大に合格し、日本のゲーム会社やアニメ関連などの企業に就職することができ、永住権を取得する道が開けるのなら安いものだと、同コースにも毎年、中国人の応募者が殺到する状況なのだという。  実際、行知学園の合格実績を調べてみても、中国人留学生に人気の理由がよく分かる。  2024年度は、同校から日本全国の美大に163人もの生徒が合格を果たしている。内訳は、東京藝術大学1人、多摩美術大学21人、武蔵野美術大学11人、女子美術大学2人、京都精華大学23人、京都芸術大学16人――といった具合だ。 ● 永住権獲得のためには 美大に入るのが一番の近道  高田馬場周辺に集まる、そのほかの中国人向け大学予備校にも今、こうした「美術コース」なるものが次々と設立されている。美大人気はやはり、少し過熱気味だと言ってもいい。  行知学園で美術コースを統括する本間徹郎・美術部長もその人気ぶりを認める。  「この人気は今では、日本の地方の美大進学にまで広がっています」と明かす。  さらに「中国人留学生が殺到したことで、日本の美大の留学生枠の倍率もかなり上がってきています。2015年頃なら、デッサンができない留学生でも正直、日本の美大に入学できました。ですが、最近は日本人の学生よりも、レベルが高い人が増えている状況にあります」と話す。  一方、最近は、別の問題も感じているという。

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