「9条から語る」のではない平和論 藤原帰一さんが憤る日本政府の姿

インタビュー

聞き手 編集委員・塩倉裕

 平和主義国家とは、何をする国家のことなのだろう――。

 米国がイスラエルと組んでイランに武力攻撃をしかけた。日本では、平和主義の柱である憲法9条を改正しようという声が上がる。世界はどう変わったのか、日本政府は平和を守ろうとしているのか。戦争と平和を論じつつも、なぜか9条についてはほとんど語らない、国際政治学者の藤原帰一さんに聞いた。

国際政治学者の藤原帰一さん=2026年4月20日、東京都文京区、井手さゆり撮影

 ――南米のベネズエラへ、そして中東のイランへ。今年に入ってトランプ米政権は立て続けに軍事攻撃を仕掛けており、世界はとてもイヤな感じに包まれ始めたように思えます。

 「世界中に『戦争の時代がまた来るのか』という漠然とした不安と恐怖が広がっています」

 「ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのガザやレバノンへの攻撃、そして米国とイスラエルのイラン攻撃。大きな戦争が三つも進んでおり、戦火のゆくえは分かりません。現状では第3次世界大戦と呼ぶべき状態にまだ達していませんが、不安と恐怖が広がるのは当然です」

 ――米国のイラン攻撃で、世界はどう変わったのでしょう。

 「一般に、暴力で領土や勢力圏を広げる行動が各国に広がった場合、大国は小国を支配できるかもしれませんが、国際関係は不安定となり、大国間の戦争が起きてしまう可能性が増大します」

 「イラン戦争では米国とイスラエルが短期戦による勝利に失敗し、ともに戦前より弱体化しました。米国が弱体化した今こそ戦争を始める機会だと考える国家指導者が出てくる恐れもあります。危険な状況です」

 ――そう聞くと、中国政府の今後の動きが気になります。

 「私は、中国政府が台湾侵攻を第一に進めるべき課題と考えているとは思いません。ただ、トランプ政権は中国の抑止よりも自国の勢力圏拡大を重視しています。米軍の戦力が中東に傾くことで、実際に中国への抑止力は低下しています」

 「これは中国政府から見れば、中国が台湾に侵攻しても米国は中国を攻撃しないかもしれない、という予期が強まる状況です。残念ながら、中国が短期戦による台湾制圧に乗り出して成功する可能性は、イラン攻撃の前よりも高まっています」

平和へのチャンスはあるか

 ――藤原さんの目に、平和へのチャンスは見えていますか。

 「短期的なチャンスはありま…

お気に入りのニュースサイトをGoogleで優先的に表示できます。今すぐ「朝日新聞」をかんたん登録

この記事を書いた人

塩倉裕
編集委員|論壇・オピニオン担当
専門・関心分野
論壇、オピニオン、調査報道

関連記事: