「昔から正義感強かった」吹田の路上で命救った近大生と学童補助員 表彰式で知人と気づく

感謝状を贈られた神品昴瑠さん(右)と山本万紀子さん=13日、大阪府吹田市(小川恵理子撮影)

路上で倒れた50代男性の命を救ったのは、男子大学生と学童補助員の女性だった。いずれも医療関係者ではないが、過去に心肺蘇生法を学んだ経験から心臓マッサージ(胸骨圧迫)など迅速な措置を施したことが功を奏した。大阪府吹田市消防本部は今月13日、2人に感謝状を贈呈。同本部南消防署の松田旨功(むねよし)署長は「知識を自分のものにしていないとできない行動だった」とたたえた。

泡をふき、不規則な呼吸…とっさに動いた体

昨年12月20日土曜日の午前8時半ごろ。帰宅途中だった近畿大1年の神品昴瑠(こうじなすばる)さん(19)は、大阪府吹田市朝日が丘町の路上にうずくまる男性に気づいた。「転んだんかな」。そう思ったが、起き上がろうとして地面にはいつくばる姿を見て、ただ事ではないと自転車を止めた。

男性に駆け寄って声をかけると、「大丈夫」。意識もあり、会話もできたが、その後、男性の容体は悪化。神品さんが近くの自動販売機で購入した水を男性に飲ませようとしたところ、口から泡を吹いて意識を失った。いびきのように不規則な呼吸を続け、放置すれば死に至る危険な状態に陥っていた。

その様子を見た神品さんの脳裏に、約2カ月前に自動車教習所で受けた心肺蘇生法の講習がよぎった。すぐに自分の上着を脱ぎ、男性の頭の下に置いて気道を確保。膝をつき、男性の胸の上に手を重ねて心臓マッサージを施した。繰り返すうちに、男性の呼吸が戻ってきた。

神品さんは「迷ったときはやった方がいいと講習で教わり、考えるよりも先に体が動いた」と振り返る。

AED持って駆け付け

一方、学童補助員の山本万紀子さん(56)も神品さんと同じタイミングで男性を発見。神品さんと役割分担する形で119番通報し、現場から100メートルほど離れた公共施設から自動体外式除細動器(AED)を急いで持ってきた。

幸い、現場に戻る頃に救急隊が到着したためAEDは使用しなかった。

10年以上前にAEDの使い方の講習をうけた山本さん。「AEDの音声ガイドに従えばいいと思い、まずは持ってくることを優先した」と話す。

大阪府吹田市消防本部は今月13日、2人の勇気ある行動と的確な判断が救命につながったとして感謝状を贈った。

南消防署によると、男性は病院に搬送され、すでに社会復帰しているという。通報から救急隊の到着までは10分足らず。松田署長は「救急隊到着までの数分間に適切な対応を取れるかが命の分かれ道だった」と2人を称賛した。

表彰式では、意外な事実が明かされた。山本さんの息子と神品さんが小学生の同級生で、2人は知人同士だったという。

現場では互いに気づかず、表彰を受けるにあたり名前を聞いて思い出したという。山本さんは「昔から正義感が強かった昴瑠くんがそのまま大きくなっていた」と笑顔。神品さんも照れた笑みを浮かべていた。

AEDや心臓マッサージ、実際の使用には心理的壁

AEDの使用や心臓マッサージなど「一次救命処置」の重要性は理解しているが、実践することは難しい-。日本赤十字社(東京)が行ったインターネット調査でそうした傾向が明らかになった。

調査は令和4年11月、全国の10~60代1200人を対象に実施。急病などで呼吸や心臓が止まった人に対して、救急車の到着までに行う一次救命措置が必要だと回答した人は86・4%に上った。

一方、現実の場面で実践できるかどうか尋ねた設問では、心臓マッサージ(胸骨圧迫)は33・9%、AEDも25・5%が「できない」と回答。その理由として、「とっさにやり方を思い出せない」「相手の状態が悪化することが怖い」などが挙がった。

日本赤十字社の担当者は「一次救命処置が必要なケースに遭遇することは非日常で、うまく対応できないこともある」とした上で、いつ遭遇するか分からないと心にとどめる▽定期的に講習を受けるなどする▽ほんの少しの勇気を持つ-ことが大切だとした。(小川恵理子)

関連記事: