納屋で10年眠ったサーフラインが正しく残る72年式最終ハコスカセダン。ワーナー5速への載せ替えとフルトラで快適仕様に蘇る!

テールランプの下で小さく、しかし誇らしく光る“5 SPEED”のエンブレム。これこそがC10型スカイラインの生産末期を示す目印である。オーナーの篠塚さんは過去に2台のハコスカを乗り継ぎ、10年のブランクを経てこの4ドアセダンで戻ってきた。聞けばこのセダン、前オーナーのもとで納屋に10年以上眠っていたクルマのため程度は驚くほど良い。ハコスカ200GT4ドアセダンの最終型だという貴重な1台をじっくり観察させてもらった。

美しいサーフィンラインが残る1972年式スカイライン2000GTの4ドアセダン

集まったのは、ノーマルフェンダーを維持したスカイラインだけである。スカイラインノーマルフェンダー保存会と名づけられたこのミーティングには、R仕様に仕立てていない2000GTや2000GT-XといったL型エンジン搭載車に加え、本物のGT-Rも多数エントリーしていた。ずらりと並んだ列のなかで目に留まったのが、サーフィンライン(ボディサイドを流れる曲線状のプレスライン)の美しい4ドアセダンである。

リアへ回ると、テールランプの下に“5 SPEED”の文字が入ったエンブレムが見えた。この小さな飾りが付くのは、C10型でも最終モデルのGT-Xモデルだけに限られる。取材を申し込むと、オーナーの篠塚さんが素性を教えてくれた。

「このクルマは1972年式なので、C10型としては最後期の4ドアセダンです。ハコスカには過去にも2台乗っていて、両方とも2ドアハードトップでした。10年ほどのブランクがありましたけど、2年前にこのあまりいじられていない4ドアセダンに出会って、久しぶりにハコスカ乗りへカムバックすることになりました」

納屋で10年以上眠った個体を5速マニュアルとフルトラで快適仕様にアップデート

C10型はスカイラインの3代目に当たる。1968年8月に4気筒エンジン搭載車が登場し、その2カ月後にGTシリーズが加わった。ホイールベースとフロントノーズを延長し、直列6気筒でシングルキャブレター仕様のL20型エンジンを積んだモデルが2000GTである。

1969年にはS20型エンジンを搭載する2000GT-Rが登場し、1970年10月には2ドアハードトップが追加された。さらに1971年9月、SUツインキャブレターで130psを発生する豪華仕様の2000GT-Xがハードトップに設定され、1972年3月にはセダンにもGT-Xは広がっていく。そしてハコスカでは、GT-RとこのGT-Xモデルだけに5速マニュアルが与えられた。本来、テールランプ下の“5 SPEED”エンブレムは、4ドアセダンモデルで言うならば1972年3月以降に製造されたGT-X車両のみに与えられたとされるエンブレムだ。

これほど程度の良い理由は、前オーナーの保管方法にある。納屋に10年以上収められ、ほとんど走っていなかったため、ボディもサーフィンラインも当時の張りを保っていた。足元にはワタナベのアルミホイールを履き、ステアリングはMOMOの「PROTOTIPO」へ交換して、外観に軽いアクセントを添えている。

シングルキャブレターのエンジンはオリジナルのままである。手を入れたのはトランスミッションで、当時のGT用4速マニュアルから、のちの世代のワーナーシンクロ(FS5C71B型 通称2分割ミッションと呼ばれ、変速時の回転差を合わせる機構の一方式)を採用した5速マニュアルへ載せ替えた。見た目は純正のたたずまいを崩さず、シフトフィールだけを現代の感覚に近づけている。さらにラジエーターは3層へコア増し(放熱部を増やして容量を上げること)して冷却能力を高め、燃料ポンプは機械式から電磁式へ変更した。

点火系もフルトラ(フルトランジスタ点火。接点を使わない点火方式)へ改めている。手を加えた場所はいずれも視界に入らない部分で、篠塚さんはこの会場まで快適にドライブしてきたそうだ。なおミーティングの舞台となったのは、栃木県の千本松牧場の駐車場である。

オリジナルの空気を残しながら、走りに関わる部分だけを静かに整える。篠塚さんの選択は、旧車を飾り物にせず日常の相棒として付き合うための現実的な答えである。10年のブランクを経て再び握ったステアリングの先には、50年以上前の設計とは思えない軽やかな時間が広がっている。

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