「声がいる どうしても声がいる」ステージ4の食道がんを抱えた西成の女牧師 極道も権力も恐れないパワフル牧師が”声か命”の選択を突き付けられ…西成・メダデ教会が存続危機
「声がいる どうしても声がいる」ステージ4の食道がんを抱えた西成の女牧師 極道も権力も恐れないパワフル牧師が”声か命”の選択を突き付けられ…西成・メダデ教会が存続危機11月27日 20:02
大阪市西成区。 かつて日雇い労働者が集まる「ドヤ街」として知られたこの街は、今も5人に1人が生活保護の受給者という厳しい現実を抱えています。 ■誰にでも声をかける「おばちゃん牧師」 【西田好子牧師】「おい!生きてた? 死んだかと思った。酒は?」 【西成の住人】「やめた」 街を歩きながら、誰にでも声をかけるひとりの女性がいます。 「メダデ教会」の牧師・西田好子さんです。 【西田好子牧師】「今、あんたたちゴミですか。あんたたちは神様の栄光を表してる。ボロは着ていても、あんたたちの心は昔と違います」 中華料理店を改装した小さな教会に集まるのは、ホームレスや前科者など、ワケありのおっちゃん信徒たちです。 ■親の愛を知らない人たちの「親代わり」
ほとんどが家族とは絶縁状態の信徒たちは、同じマンションで支え合いながら暮らしています。 西田さんはそんな信徒たちの親代わりとして、元の生活に戻らないよう、毎日顔を合わせ、些細な変化を見逃さないようにしています。 信徒の永田勝則さんは、幼少期に親を亡くし、転々として西成にたどり着きました。 西田さんと出会い、酒漬けの生活が聖書三昧に変わりました。でも掃除は今も苦手です。 【西田好子牧師】「汚くても、片づけてくれる人間がいたら、まともに親に育ててもらってませんやん。うちの子たちは、みんな親の愛って知らない。家族の愛を知らないねん。少なくとも私は、家族の愛を知ってるねん。それをこの子たちにあげたいだけのことよ」 ■裏切られても手を差し伸べる 50歳で転身した西田牧師 西田さんが「メダデ教会」を作ったのは15年前。 野宿者との出会いをきっかけに、「生きる希望のない人を立ち上がらせたい」と、小学校教師の仕事を辞め、50歳で大学の神学部に入学し、牧師に転身しました。 何度も服役を重ね、「人生をやり直したい」と教会の門を叩く信徒も少なくありません。 しかし、改心する人もいれば、教会を飛び出し、再び犯罪に手を染めてしまう人もいるのが現実です。 それでも求められれば、何度でも手を差し伸べるのが西田さんです。 【ディレクター】「また裏切られるんじゃないかとは思わないんですか?」 【西田好子牧師】「それはあんまりないねん、私。親もせん、愛した女もせん。弁護士も誰もせん。一番裏切られた人がやる(受け入れる)んや。それが愛っていうのをあの子が気づけばいい」 ■「声がいる。どうしても声がいる」 ことしに入り喉に痛みを感じるようになりましたが、西田さんは自分のことを後回しにしていました。 ことし3月、ついに食事が喉を通らなくなり、離れて暮らす息子に付き添われ、病院で検査しました。 ステージ4の食道がんでした。 声帯のすぐ近くにあるがんは、リンパにも転移していました。 【医師】「一番厄介な所であってもしかしたら、声を取らなあかんかもしれへん」 【西田好子牧師】「声がなくなることは、やっぱり嫌ですやん。そやけども、放射線をしてまだ残っている。また(治療)っていうのは嫌やねん。全て取り除きたいと、そこは間違いない。 何回も何回も入退院を繰り返すことは信徒がしんどい。見なあかん。見なあかん。その子たちのためには私の存在がいるねん。よたってる私はいらんねん。だから声がいる。どうしても声がいる」 西田さんは涙ながらに医師に訴えました。 ■試練を迎えたメダデ教会 長男の幸平さんは、西田さんとは大学の神学部で、ともに学んだ同級生でした。 西田さんがメダデ教会を始め、幸平さんも独立し、それぞれの暮らしをするようになってからは、会うことは滅多にありませんでした。 西田さんが入院する前の最後の礼拝。西田さんは信徒たちに語りかけました。 【西田好子牧師】「いまは、一番の試練のときだと思ってます。『手を携えて、ともに歩こう』という、あの賛美のごとくですよ。メダデ教会が『私がいなくなったら潰れれるような教会』と言われんようにしてくださいね。いなくなっても守ったったんやと。今は前進せんでよろしいです。守ってください」 続いて挨拶に立った幸平さんは、涙をこらえきれませんでした。 【幸平さん】「僕、定年が56ぐらいなんで、そしたら10年ぐらい一緒にここ(教会)のことが、できるかなって思ったんですけど…。ちょっといろいろ調べたりしたら、あんまり良くなくて…。皆さんも不安だと思いますけど、母はそれ以上に不安だと思うので、集まって色々、家族としてやってもらったらいいかなと思います」 ■自立し始めた信徒たち 牧師であり、親代わりでもある西田さんの長い不在。 「メダデの家族」が崩壊しないよう、信徒たちは力を合わせます。 この日は、足の治療で入院している永田さんを、西田さんに代わって信徒たちが励ましにやってきました。 【永田勝則さん】「聖書はええわ。聖書は今、書いてないもん。先生(西田牧師)が入院してから書いてないもん」 【医師】「怒られるやん。「(西田牧師)おらへん時もしっかりやりなさいって言われてたやん」 【永田勝則さん】「怒られてなんぼやもん」 教会始まって以来の危機に直面し、少しずつ自立し始めた信徒たち。 でも、やっぱり、西田さんの怒り声が聞けないと寂しいようです。 西田さんのその後の闘病生活、そして実の息子とメダデの信徒たち、2つの家族との繋がりを描いた「ザ・ドキュメント『歌いたいんや~西成・メダデの家族とともに~』は、11月28日深夜1時15分から放送されます。 (関西テレビ「newsランナー」2025年11月27日放送)- この記事をシェアする