初の「円建てステーブルコイン」発行!?銀行の送金・決済システムを代替する“夢の通貨”となるか(ダイヤモンド・オンライン)
● フィンテック企業のJPYC 今後3年間で1兆円分発行!? フィンテック企業のJPYCが8月18日、銀行以外で送金(為替取引)サービスをする「資金移動業」の登録業者として認可され、今秋にも法定通貨に価値が連動する円建てステーブルコインの発行を国内で初めて実現する見通しだ。 今後3年間で1兆円分の発行を目標とすることなどが報じられている。 ステーブルコインがビットコインなどの仮想通貨(暗号資産)と違うのは、その価値が法定通貨と1:1で連動することだ。一定に保つための方法にはいくつかのものがあるが、JPYCの場合には、裏付け資産として預貯金や国債を保有することによって価値が保全されるとしている。 ビットコインなどの仮想通貨は価格が大きく変動するので、買い物や送金には向かない場合が多い。それに対してステーブルコインは、法定通貨に対する価値が安定しているため支払いや送金に問題なく使える。 すでに何種類かが発行されているが、それらの大半はドル建てで、テザーが発行するUSDTと、米サークル社が発行するUSDCが代表的なものだ。トランプ政権は、7月18日には、ドル建てステーブルコインの普及を目指すGENIUS法を成立させている。 ステーブルコインの強みは、利用手数料を低く設定することができることだ。サービスなどのマイクロペイメント(少額決済)など、多様な利用が見込まれる。 本格的に普及するとなれば、銀行の送金・決済システムにも大きな影響を与えるだろう。
● 発行のメカニズムでは暗号資産の一種 電子マネーと似るが銀行口座は不要 ステーブルコインは、発行のメカニズムから見れば、ビットコインと同じように暗号資産(仮想通貨)の一種だ。つまり、改ざんできない取引の記録をブロックチェーンという電子的な台帳に書き込み、そこに記録されている保有者が真正の保有者であるとする仕組みだ(以下、本稿ではこのような仕組みで発行される通貨を「デジタル通貨」と呼ぶことにする)。 「デジタル通貨」ということでは同じだが、ステーブルコインは法定通貨との価値を一定に保つため、法的にはビットコインなどの暗号資産と別の扱いにされた。そして、2023年6月施行の改正資金決済法で「通貨建て資産」として仮想通貨と切り離されて定義され、銀行や信託会社、資金移動業者が発行できるようになった。 利用者の立場から見ると、ステーブルコインは電子マネーと似ている。電子マネーとしては、日本ではPayPayなど、中国ではアリペイなどがよく知られている。 しかし、発行のメカニズムから見ると、ステーブルコインはこれらの電子マネーとは基本的に異なる。 電子マネーは、Suicaなどのプリペイド型のものを除けば、銀行連携で送金・支払いを行う。したがって銀行システムの存在を前提にしている。そして送金者も受取者も、銀行に口座を持っていなければならない。 また、海外への送金には基本的に使えない。さらに、電子マネーの利用には手数料がかかる。それは店舗(受取者)が負担する。 利用者の立場から見ると、ステーブルコインはPayPayなどの電子マネーと同じように使うことができるが、電子マネーより広範囲に使える。 したがって、ステーブルコインの利用が広がれば、PayPayなどの電子マネーは大きな影響を受けるだろう。 ● 利用手数料安く、少額決済が可能 サービスの電子商取引での利用も 例えば、ステーブルコインは、利用手数料を非常に低くすることができるので、潜在的には極めて多くの利用法が考えられる。 受け手としては、現実の店舗だけでなく、ウェブ上の店舗も利用することが考えられる。これによってウェブ上の店舗の利用が広がり、電子商取引が新たな可能性を獲得するだろう。 また、手数料が極めて低いために、マイクロペイメントが可能になる。これによってウェブ上のサービスを有料化することもできる。現在、ウェブ上の経済的な取引は、アマゾンのような実物財の取引が中心だが、それだけではなく、サービスの取引が可能になる。そうなれば、さまざまな専門的サービスをウェブで提供することができるようになるだろう。 しかも、国内の店舗だけではなく、海外の店舗も利用することができる。為替レートの変動による影響は免れ得ないが、それを除けば、送金額の価値が保存されるので、海外への少額の送金も可能だ。また、日本の店舗が海外からの送金を受け取ることもできる。 現時点では国際的な資金移動は、コストが高い手段に頼らざるを得ない。この状態が大きく変わることが期待される。 ただし当然のことながら、利用を広げるためには、営業努力が必要だ。