トランプ政権から知識を守れ、科学者は徹夜でデータの引っ越し急ぐ

Jason Gale

  • 大統領令に逆らえず、疾病対策センターなどで重要データ削除される
  • 「知識は保存しておけば将来に復元できる」-UCSDのモシリ教授

カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)でコンピューターサイエンスを教えるニーマ・モシリ教授は先週、自宅でテレビを見ていたところ、カナダのウイルス学者から電話がかかってきた。パニック気味の声で伝えられたのは、今すぐ米疾病対策センター(CDC)のウェブサイトをバックアップしろという警告だった。

  近く修正や編集が加えられる、あるいは削除される可能性があるデータを集めては保存する作業を、モシリ氏はほぼ夜通しで続けた。翌朝になると、心配していたことは現実となった。重要な調査結果やデータはCDCのウェブサイトから消えていた。他の重要データベースにも削除の危機が迫っていると考えた同氏は、米食品医薬品局(FDA)のスナップショットを撮って保存した。今は農務省のデータをアーカイブに収める作業に取りかかっている。

  トランプ米大統領が出した大統領令は、ジェンダーに関する表現から科学研究の発表に至るまで、あらゆる分野に影響を及ぼす。各政府機関がこれへの対応を余儀なくされている一方で、米政府のデータを「インターネットアーカイブ」など非営利のオンラインプラットフォームでアーカイブ化する動きが喫緊の課題として浮上した。科学者やアーキビストは過去の記録を保存することで、削除や修正から守る決意だ。

Once again, my deepest gratitude to @charles_gaba, @niemasd, and the whole team.

Please note that it's incomplete while we continue adding links. These are big websites and we're a small group and we have day jobs.

  モシリ教授は「このようなデータベースに基づいた研究が、学者である私の仕事だ」とインタビューで説明。「データが存在するのなら、その存在を確実にして、研究が続けられるようにしたい」と語った。

  CDCのウェブサイトはいったんアクセス不能となっていた表のページが復旧したものの、消えたデータは戻っていない。「ウェイバックマシン」のような既存のデジタルツールを使えば、ユーザーは修正や削除前のウェブサイトを閲覧でき、オンラインコンテンツの履歴は保存される。

  それでも万全と呼ぶには程遠い。ウェブページがかつてどんな内容だったかを正確に把握していない限り、何が修正されたのか、何が削除されたのかを判断できないからだ。

  「本当に元通りなのか判断するのは難しい。だからスナップショットを撮っておけば、復旧したときに検証が可能になる」とモシリ教授は述べた。

  データ消滅のリスクは差し迫っている。モシリ氏はこの危機への対応としてだけでなく、アーカイブ化は未来に向けたセーフガードだと考えている。

  「知識は保存しておけば、いつでも将来に復元が可能だ。それこそが私が得たい安心感だ」と同氏は語った。

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