脳のない臓器だけの構造体が、医療と長寿の切り札になる

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トランプ政権が連邦政府全体で動物実験を段階的に廃止しつつあるなか、あるバイオテック系スタートアップがその代替として大胆なアイデアを打ち出している──意識や感覚をもたない「オーガン・サック(臓器袋)」だ。

サンフランシスコのベイエリアに拠点を置くR3 Bioは、実験に動物を用いることの倫理的問題を回避する代替手段として、このアイデアを投資家や業界誌に密かに売り込んできた。

その構造体は通常の臓器をすべて備えているが、脳をもたないため思考したり痛みを感じたりすることがない。共同創業者のアリス・ギルマンによれば、同社の長期的な目標は、この構造体のヒト版をつくり、移植を必要とする人々のための組織や臓器の供給源として利用することだという。

R3に出資しているシンガポールの長寿ビジネス専門ファンドImmortal Dragons(イモータル・ドラゴンズ)にとっても、代替という発想は人間の健康寿命戦略の核心だ。

「人体における病気の治療や老化の制御に関しては、修復よりも置換の方が有効である可能性が高いと考えています」とCEOのボーヤン・ワンは語る。「感覚をもたない、頭部のないヒト型ボディオイドをつくることができれば、優れた臓器供給源になるでしょう」

現時点でR3が目指しているのは、サルのオーガン・サックの開発だ。

「より倫理的で、純粋に臓器だけから成るモデルを使う利点は、実験をはるかに大規模に展開できる点です」とギルマンは言う(R3という社名は、1959年に英国の科学者ウィリアム・ラッセルとレックス・バーチが提唱した、人道的な動物実験を推進するための倫理指針である3つのR[Replacement=代替、Reduction=削減、Refinement=改善]に由来する)。

新薬は臨床試験で人間に投与される前にサルでテストされることが多い。新型コロナウイルス感染症のパンデミックの際にも、ワクチンや治療薬の検証においてサルの実験が重要な役割を果たした。だがサルは高価な研究資源でもあり、さらに2020年に中国が霊長類の輸出を禁止して以降、米国ではその数が減少している。

また、動物愛護活動家たちは長年にわたりサルを使った研究の廃止を求めてきた。こうした圧力の高まりを受け、連邦政府の資金援助を受けて米国内で運営される霊長類研究施設7つのうちのひとつは閉鎖および保護施設への転換を検討している

米国疾病対策センター(CDC)もサルを使った研究を縮小しつつあり、政府全体で動物実験への依存を減らそうとする流れがある。

こうした状況の結果として、米国には新たなパンデミックの脅威が現れた場合に必要な研究を行なうためのサルが十分に残っていないとギルマンは言う。そこで登場するのがオーガン・サックだ。

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